金融ビジネスの実態に迫る! なぜ「ノルマ営業」をやめられないのか

  • 公開日:2020.03.17

こうした自前主義の悪弊から脱却し、より効率的な事業モデルを構築することにより、利用者が負担する手数料等を軽減し、より手厚いサービスを提供しようとする取り組みも、少しずつではあるが広がっている。

その代表例が、IFA(独立系金融アドバイザー)という業態の金融事業者である。法律上は金融商品仲介業者と呼ばれ、独立した事業主体として、証券会社等の大手金融機関と業務委託契約を締結し、金融商品の提案や販売業務を担っている。

利用者の観点からは一見すると、大手金融機関の営業担当社員と同じような役割に見えるが、裏側にあるその事業モデルは自前主義をとらず、大手金融機関と比べてずっと軽い。取り扱う金融商品の仕入れや管理業務、業務システム等を全て提携先の金融機関に委ねることで、事業運営コストを大きく軽減するとともに、全てのリソースを顧客への提案やサポートに集中させることが可能なスキームとなっている。

もちろん、提携先の金融機関側には業務プロセスやシステムが引き続き存在するため、顧客に転嫁される事業コストが全てゼロになるわけではないが、こうした役割分担が進むことにより、全体の事業コストが低減されるとともに、より手厚いサービスが顧客に提供されることが期待される。

自前主義から脱却し、金融機関同士でその強みに応じて役割分担するというスキームは、IFA業態のみならず、伝統的な金融機関の間でも構築されつつある。

昨年8月、野村證券と山陰合同銀行グループは包括的業務提携を発表し、島根県・鳥取県での個人向け金融サービス提供については、野村證券が金融商品の管理やシステム提供を、山陰合同銀行グループが顧客への営業を担うという役割分担スキームへの移行を決定した。

同様の役割分担スキームの構築が広がることにより、金融機関の事業運営コストが低減し、結果的に顧客のコスト負担が軽減されるといったメリットが大きくなることが期待される。

金融商品・サービスの提供者である金融機関側でのこのような動きは画一的に進むのではなく、ある金融機関は手数料を一定程度徴収する代わりに、手厚いアドバイスやアフターフォローサービスを提供する。一方、別の金融機関はオンラインでのみ商品を提供することにより、手数料を可能な限り引き下げる等、それぞれの金融機関の強みがより明確になると予想される。

金融機関の利用者の側でも、上述のような金融業界全体で進む自前主義脱却の動きを踏まえ、低コストが良いのか、手厚いアドバイスが良いのか等、自分が希望する金融商品・サービスはどのようなものなのかを明確にしたうえで、能動的に金融機関を選択し、使い分けるという姿勢がより重要になってくるだろう。

また、役割分担スキームへの事業モデルの転換は顧客にとってもメリットが期待されるが、それが即ち金融機関の手数料稼ぎリスクをゼロにするものではないことは、念のために改めて付け加えておきたい。営利企業である以上、手数料稼ぎリスクを全くのゼロにすることは難しいという前提だけは留意しておくことが必要である。

 

 

 

1 2

この記事は役に立ちましたか?
  • よく分かった (5)
  • 難しかった (0)

このページをシェアする

  • Lineにシェア
  • はてなブックマークにシェア

あわせて読みたいRecommend

著者

大原 啓一 日本資産運用基盤グループ 代表取締役社長
大原 啓一
2003年東京大学法学部卒。2010年ロンドンビジネススクール金融学修士課程修了。野村資本市場研究所を経て、2004年に興銀第一ライフ・アセットマネジメント(現アセットマネジメントOne)に入社。日本・英国で主に事業・商品開発業務に従事。同社退職後、マネックスグループ等から出資を受け、2015年8月にマネックス・セゾン・バンガード投資顧問を創業。2016年1月から2017年9月まで同社代表取締役社長。2018年5月に日本資産運用基盤株式会社を創業し、代表取締役社長に就任。

関連コラムRelated

参考サイト
もっと情報をキャッチ!