「手数料の低さ」だけで選んでは、本当に優れた投資信託に出合えない
篠田尚子のファンド愛 1

「手数料の低さ」だけで選んでは、本当に優れた投資信託に出合えない

  • 公開日:2020.03.23

Editor's Eye

●実は透明性が高いのに、風当たりが強い投資信託の手数料
●信託報酬の水準には意味がある
●「コストありき」で優良な投資信託は選べないことを知っておくべき

2019年12月、ネット証券各社が投資信託の販売手数料を相次いで全面無料(ノーロード)化した。この一連の動きは、年末年始に数々のマスメディアで取り上げられ、良くも悪くも注目を集めたが、さまざまな角度から日本の投信マーケットを見てきた筆者の立場からすると、非対面チャネルでの販売手数料全面ノーロード化は、時間の問題だったと思っている。

ネット金融の世界では、すでに何年も前からノーロード化の動きが始まっていた。また、そもそも販売時にマンパワーを使って商品の提案や説明を行っていないのだから、販売の対価としての手数料を徴収すること自体、妥当ではなかったとの見方もできる。

ともあれ、一度ゼロにしたものを再び引き上げることは現実的ではなく、今後、非対面チャネルについては、ファンドの種類を問わずノーロードが標準になることは間違いない。

意外に思われるかもしれないが、実は投資信託という金融商品は、手数料開示の透明性が非常に高い。正確には、時代の流れとともに透明性が高まっていったと言ったほうが良い。

購入時、保有時、解約時にそれぞれ投資家が負担するコストが、概算も含め、あらかじめ目論見書で確認できるのはもちろんのこと、実際にかかった額も運用報告書の形で事後的に開示される。さらに、つみたてNISAにいたっては、顧客一人ひとりに対して、その顧客が過去1年間に負担した信託報酬の概算金額が通知されることとなっている。

しかし、残念ながら、投資信託の各種の手数料というのはどこまでも風当たりが強く、何かとやり玉に挙げられやすい。投資信託以外の個人向けの金融商品で、ブラックボックス化した複雑な手数料体系を取っているものは多々存在するにもかかわらずだ。

この背景には、知識も情報量も乏しい個人投資家に対し、手数料の厚い投資信託を繰り返し販売してきたという、投信業界の過去の反省がある。また、手数料水準の妥当性を説明できるほど投資信託に精通した専門家も少ないため、知識のカモフラージュとして手数料批評が利用されている感も否めない。

確かに販売手数料と信託報酬をはじめとする一連の手数料は、投資家にとってコストであり、リターンを押し下げる。販売手数料のかかる投資信託を購入すれば、手数料+消費税相当分だけマイナスからのスタートとなる。日々間接的に差し引かれる信託報酬も、保有期間が長期になればなるほどリターンを圧迫する。これは紛れもない事実だ。

だからと言って、「安さこそが正義」とばかりに、コストの安いインデックス型の投資信託ばかりを崇める昨今の風潮には危機感を覚える。コストには相応の意味があり、そして、物事には必ず「適正な水準」というものがあるからだ。

とはいえ、投信手数料の適正水準を一律に示すことは、現実には難しい。

冒頭でも述べた通り、販売手数料については、購入時の商品説明を含む一連のアドバイスを必要としなければ、ノーロード一択で問題ない。

では、アドバイスを必要とする場合はどうか。数千万円、1億円単位の大口取引で手数料が優遇される一部のファンドを除き、販売手数料は、購入金額に対して一律の料率が適用されるのが一般的だ。購入金額が1万円でも1000万円でも、商品自体の説明にそれほど大きな差はないはずで、投資家からするとありがたいが、販売側の立場からすると、つみたてNISAのような小口の取引は全く割に合わないということになる。

今後は非対面と対面それぞれのチャネルでサービスの差別化が進む可能性は高く、特に小口の取引については、ネットチャネルへの誘導が加速するだろう。

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著者

篠田 尚子 楽天証券経済研究所 ファンドアナリスト
篠田 尚子
慶應義塾大学卒業後、国内銀行を経て2006年ロイター・ジャパン入社。傘下の投資信託評価機関リッパーにて、投信業界の分析レポート執筆、評価分析などの業務に従事。2013年、楽天証券経済研究所入所。日本には数少ないファンドアナリストとして、評価分析業務の他、資産形成セミナーの講師も務めるなど投資教育にも積極的に取り組む。近著に『【最新版】本当にお金が増える投資信託は、この10本です。』(SBクリエイティブ)。
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