「人生100年時代」、老後2000万円不足――?その意味と対策とは
FPがいま改めて深掘りする「老後2000万円問題」

「人生100年時代」、老後2000万円不足――?その意味と対策とは

  • 公開日:2020.04.08

Editor's Eye

2019年6月、金融庁の金融審議会「市場ワーキング・グループ」が公表した報告書が発端となり、今や誰もが知るフレーズとなった「老後2000万円問題」。当時は麻生金融担当相が報告書の受け取りを拒否するほどの事態にまで発展した問題だが、結果として、これまでにないほど多くの人が資産形成への第一歩を踏み出す契機にもなった。未曽有の規模の感染症拡大によりさまざまな常識が覆されていく中でも、人生に深く関わり、数十年単位で向き合わなければならない「老後2000万円問題」をどう捉えるべきか。人々のお金の悩みに日々向き合うFPに意見を求めてみた。

「人生100年時代」と言われる昨今ですが、金融庁が出した「老後に2000万円お金が足りなくなる」というショッキングな内容の報告書が話題となりました。2000万円という数字はどこから出てきたのか、本当に不足するとしたらどう対策すればよいかを考えてみたいと思います。

問題となった「2000万円」ですが、出所を辿っていくと2017年の総務省「家計調査」に行き着きます。この調査結果によると夫65歳以上、妻60歳以上の夫婦二人の無職世帯で、1ヶ月当たりの平均収入額は209,198円、これに対して平均支出額は263,718円となっています。1ヶ月あたりの赤字額は54,520円ですね。

報告書には60歳の人の25%は95歳まで生きるという調査結果も掲載されており、65歳以降95歳までの30年間を老後期間とすると、54,520円×12ヶ月×30年=1,962万7,200円≒2000万円が赤字になる、となります。

では、「2000万円あれば大丈夫」「2000万円なければダメ」なのでしょうか。この数字は平均からざっくりとした計算で導かれていますが、私たちの生活はひとりひとり千差万別。平均にピッタリ当てはまる人ばかりではありません。重要なのは「ウチではどうなの?」ということになってきます。

「ウチではどうなの?」を確かめるためには、老後を迎えた段階でそれぞれのご家庭での収入と支出がどうなっているかをシミュレーションしてみるのがよいでしょう。

まず、収入です。老後の収入の柱といえば、なんと言っても公的年金。まとまった金額が終身受け取れ、インフレになったとしてもある程度対応できる仕組みも備えています。

とはいえ、ご自身、あるいは夫婦が将来公的年金をいくらくらい受け取れるのかを知らない人も意外と多いものです。まずは公的年金の受給額をざっくりとでいいので掴んでおきましょう。

公的年金の金額は以下のような方法で調べることができます。

    • ねんきん定期便

毎年誕生月に送られてくるはがき又は封書で、将来の年金見込み額が記載されています。特に50歳以上の人には、60歳まで現在の状態のまま年金を払い込んだ場合の金額が記載されているので、より現実に近い数字が掴めると思います。

  • ねんきんネット

登録をすれば、インターネットで年金見込み額を調べることができます。将来のシミュレーションもできるので、うまく活用しましょう。

  • 年金事務所に試算を依頼

年金事務所に依頼すれば、50歳以上の人なら将来の年金見込み額を試算してもらえます。複数通りのシミュレーションも細かく可能です。

  1.  

企業年金、個人年金のように公的年金以外にほぼ確実に得られると見込まれる収入がある人は、もちろんその金額も加えておきます。現在保有する金融資産を取り崩せる場合は、これも収入に加えます。30年で割って毎月の取り崩し可能額も出しておきましょう。

次は支出です。老後の支出は想像しにくいかもしれませんが、子供がいる方は教育費や子供にかかっている分の生活費を除いてざっくりと出してみましょう。住宅ローンがいつまであるのかもポイントですね。ここではあくまで叩き台を作るのが目的ですから、それほど細かくこだわらなくてOKですが、ある程度医療費の増加や介護費用なども盛り込んでおいたほうがよいでしょう。

収入と支出が分かったところで、毎月の「(収入+金融資産取り崩し額)―支出」を計算してみましょう。

ここでマイナスにならなかった人は、現状のままで生活していけるということになります。リフォーム費用や大きな病気をしたときなど、特別な支出に対応できるようにしておけばひとまずは安心ですね。

マイナスになった場合、これが毎月の赤字額となりますから、これをどうにかして減らしていかないといけません。赤字額を減らすためには収入を増やすか支出を減らすか、あるいはその両方をしていくことになります。

  1. 勤労収入を得る
    収入を増やす方法としては、まずは働いて勤労収入を得ることが考えられます。毎月たとえ少額でも、働いて収入を得ることができれば家計はぐっと楽になります。
  2. 年金の繰下げ受給を検討する
    65歳以降の年金を65歳で受け取らず、受給開始を遅らせて年金額を増やす「繰下げ受給」という制度があります。年金の受給開始は遅くなりますが、保険料負担なしに年金を増額させることができます。比較的若いうちはなるべく働いて年金を繰下げし、退職してから増額された年金を受け取るというのも有力な選択肢の一つです。
  3. 金融資産を準備
    上記のような検討を加えてなお不足しそうな分を金融資産で賄うことになります。報告書ではこれが「2000万円必要」となっていたわけですが、収入を増やす工夫をしていけば、もっと少なくて済む可能性もあります。つみたてNISAやiDeCo等を活用して早いうちからコツコツと積み立てをしていけば、リスクを抑えつつある程度まとまった資産を確保することも可能ですので、なるべく早めに着手しましょう。

やはり固定費を見直すのが有効です。老後の家族構成を思い浮かべると生命保険や住居費など、今ほど必要なくなるケースもあります。生命保険の見直しや、思い切って住み替えなども検討してみるのもよいでしょう。インターネットや携帯電話などの通信費も見直しの余地があることもあります。シミュレーションの上だけではなく、支出の削減に早めに取り組むことができれば、その分を資産形成に回すこともでき、一石二鳥といえます。

気を付けたいのは、極端な緊縮財政にして、シミュレーションが現実離れしてしまうこと。食費や娯楽費などは健康の維持や生活の楽しみのため必要となるので、ある程度のゆとりを見込んでおきたいところです。

 

大切なのは「2000万円」ではなく、ハッピーな老後を送ることです。そのために今できることは今のうちにしておきましょう。

その入り口となる老後資金のシミュレーションは重要です。特に公的年金がいくらもらえるのかわからない人はこれを調べるところから始めてみるとよいでしょう。

また、今後ライフステージが変わったり、制度改正や社会の変化によって必要な生活費や得られる収入も変わっていきますので、節目節目でシミュレーションを見直し、少しでもゆとりある老後を迎えられるようにしておきたいところですね。

 

「老後2000万円問題」で将来の不安を感じたあなたに、外部メディアの関連記事をご紹介!

あしたをちょっと幸せにするサイト「くらしのお金二アエル」にて
『「老後2000万円不足」のウソ、ホント』について解説しています。

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著者

綱川 揚佐 特定社会保険労務士
綱川 揚佐
金融機関在籍中に1級ファイナンシャル・プランニング技能士資格を取得、その後建設会社等の勤務を経て、社会保険労務士資格を取得。現在は社会保険労務士事務所を経営し、個人向けに年金に関するセミナーや年金相談を行うかたわら、法人向けの労務管理や労働・社会保険に関する手続き、相談業務も行っている。

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