長生き時代、誰でも「おひとりさま」になり得る女性の老後のお金
FPがいま改めて深掘りする「老後2000万円問題」

長生き時代、誰でも「おひとりさま」になり得る女性の老後のお金

  • 公開日:2020.04.16

Editor's Eye

2019年6月、金融庁の金融審議会「市場ワーキング・グループ」が公表した報告書が発端となり、今や誰もが知るフレーズとなった「老後2000万円問題」。当時は麻生金融担当相が報告書の受け取りを拒否するほどの事態にまで発展した問題だが、結果として、これまでにないほど多くの人が資産形成への第一歩を踏み出す契機にもなった。未曽有の規模の感染症拡大によりさまざまな常識が覆されていく中でも、人生に深く関わり、数十年単位で向き合わなければならない「老後2000万円問題」をどう捉えるべきか。人々のお金の悩みに日々向き合うFPに意見を求めてみた。

2019年6月、「老後2000万円問題」が一時期、世間を賑わせました。中でも女性は、長生きということもあり、老後不安が強く、筆者の講演や個人マネー相談にも多くの女性が訪れています。そこで、女性に焦点を当てて、女性の老後のお金とその対策について考えてみたいと思います。

昨年6月に金融庁が報告書を出しましたが、その報告書によると、私たちの老後の生活費は、公的年金だけでは賄えず、「2000万円足りない」とのこと。この2000万円という数字に衝撃を受けた方が多く、一時期はSNS上などで炎上してしまうほどでした。個人的には、問題の本質よりも「2000万円」という数字ばかりに注目が集まり、数字が一人歩きしてしまっているように感じますが、「2000万円」という数字がなぜ出てきたのか、その中身を知らないという方は少なくないのではないでしょうか。実際、講演などでも参加者の方に、2000万円の数字の根拠について訊ねると、ほとんどの方が知らない様子です

では、そもそもなぜ、金融庁が2000万円という数字を出したのかというと、「2000万円」という不足額の根拠となったのは、総務省が出している家計調査報告(2017年)です。

このデータによると、現在60歳以上の夫婦(夫65歳以上、妻60歳以上)の高齢無職世帯では、1カ月の平均収入は年金を中心に約20万9000円、支出は約26万4000円。ですから、公的年金だけでは、毎月5万5000円の赤字となります。最近の統計から日本人の4人に1人は95歳まで生きるとのこと。年金支給開始年齢である65歳から30年生きると仮定すると、5万5000円×12カ月×30年=約2000万円足りなくなります。この2000万円という数字は、衣食住の基本生活を送る上で必要なお金で、かつ、持ち家を前提としています。

老後に旅行に行ったり、高級レストランで食事をしたりといった「ゆとりある老後」を送るためには、夫婦2人で35万円程度が必要とのこと。公的年金だけでは毎月15万円程度も足りなくなるわけです。つまり、ゆとりある老後を送るためには、2000万円どころか、5400万円も足りないということです。

前述の数字は、夫婦2人で老後を暮らす場合のデータで、総務省 家計調査報告(2017年)によると、現在60歳以上のシングルの高齢無職世帯では、1カ月の平均収入は年金を中心に約11万4000円、支出は約15万5000円。ですから、シングルの場合は毎月4万1000円の赤字となり、4万1000円×12カ月×30年=約1470万円の不足です。こちらのデータも衣食住の基本生活かつ、持ち家を前提としたデータになっていますので、一生賃貸で暮らしたり、ゆとりある老後を送ったりしたい場合には、さらにお金がかかることになります。

また、最近は、フリーランスや個人事業主というスタイルで働く人も増えています。フリーランスの方は、将来もらえる年金は会社員の方よりも少なく、40年間国民年金に加入した場合で、満額で年額約78万円。月額にすると約6万5000円です。さらに、高齢になると、病気や介護状態になる可能性も高くなります。医療費、介護費用として1人あたり500万円程度を準備しておきたいところです。

つまり、老後のお金の準備といっても、ライフスタイルなどによって、人それぞれ違います。まずは、数字に踊らされることなく、自分の場合はいくらくらい必要なのかをきちんと考えることが必要になります。

この数字が漠然としていると、ただ不安ばかりが募ってしまい、思考停止になってしまいます。今回のデータなどを参考に、自分の場合はいくら準備をしたらよいのかをまず、「見える化」することが大切です。

前述した通り、老後不足する金額を計算するにあたり、95歳まで生きると仮定して計算されていますが、実際、90歳を超えて長生きする可能性が高いのは、男性よりも女性です。というのも、厚生労働省が2019年7月に公表した簡易生命表によると、2018年の日本人の平均寿命は、男性81.25歳、女性は87.32歳と過去最高を更新。平均寿命は、今後もさらに伸びると予想されており、内閣府発表の高齢社会白書によると、2060年には、男性84.19歳、女性90.93歳になるようです。このデータから女性は男性に比べて長生きということはもちろん、たとえ結婚している場合でも、女性の方が最期を1人で過ごす可能性が高いということがわかります。

最近、都内の老人ホームを見学する機会が増えているのですが、どこの施設を見学しても男性に比べて女性の入居者が多いと感じます。厚生労働省の介護サービス施設・事業所調査の概況を見ても、どの老人ホームも男性と女性の割合は、3:7程度になっているようです。また、最近は、女性の意識の変化が進んでおり、自分らしい自由なライフスタイルを求める女性が増えてきているように感じます。そのため、離婚や事実婚なども増え、一旦結婚しても、パートナーと別れて1人で生きる道を選択する可能性も少なくありません。

総務省統計局・国勢調査を見ても、未婚、離婚、死別などすべてのシングル女性を合わせると、「おひとりさま」率は実に半数近くにも上ります。ですから、おひとりさまライフを考えておくべきは、現在シングルだという女性だけではありません。女性は、「最期にはおひとりさまになる」可能性があることを視野に入れ、老後のお金を準備していくことが大切といえるでしょう。

女性が老後まで自分らしい人生を送るためには、仕事を長期的に続けることに加え、早い時期から計画的に老後に向けてお金を貯めていくことが大切でしょう。

そこで、老後のお金をどう準備していくかが問題になるわけですが、老後の自分年金づくりの主な手段としては、「iDeCo(個人型確定拠出年金)」と「つみたてNISA」が挙げられます。どちらも運用益が非課税となり、一般の方が節税しながら安定的に資産を増やしていける可能性がある有効な手段です。ここでは、詳細な制度の説明は割愛しますが、iDeCoとつみたてNISAの特徴を見ていきたいと思います。

iDeCo(個人型確定拠出年金)は私的年金の一種で、ザックリいうと公的年金の上乗せ制度で、2017年から現役世代のほぼ全員が加入できるようになっています。

iDeCoは、他の制度よりもずば抜けて「税制優遇」があり、「掛金の拠出時」「運用中」「受け取り時」の3つの場面で税制優遇があります。中でも、他の制度にない税制優遇のポイントが、掛け金が全額所得控除できるところです。それにより、その年に支払う所得税や翌年の住民税を安くすることができます。

例えば、課税所得が300万円程度(所得税率10%)の企業年金がない会社員の方がiDeCoに加入し、毎月20000円を拠出した場合、年間の掛け金の合計金額は24万円になります。掛け金を全額所得控除できることにより、所得税は約2万4000円節税になりますし、住民税(一律10%)と合わせると4万8000円も節税になります。

iDeCoは、このように税制優遇のメリットを享受しながら自分年金を準備できる優れた制度なのですが、不便な点もあります。それは、iDeCoで積み立てたお金は基本的に60歳まで引き出すことができないところです。

長い人生の間には途中でお金を引き出したいと思う場面もあるかもしれません。そこで、iDeCoと併用して活用したいのが、2018年1月からスタートした「つみたてNISA」です。

つみたてNISAは、NISAと同じく、投資で得られた利益に対する税金を非課税にできる制度です。毎年の非課税投資枠は40万円、非課税期間は最長20年間です。つみたてNISAで買える金融商品は、金融庁が定めた一定の基準を満たした投資信託・ETFです。もちろん、基準を満たした金融商品がすべて値上がりするとは限りません。しかし、明らかに初心者に不向きなものや積み立て投資に適さないものは除かれるので、投資先を選びやすくなります。

iDeCoは、掛け金の属性により掛け金の上限金額が違いますが、仮に企業年金のない会社員の方の場合、iDeCoの年間投資上限額は27万6000円です。また、つみたてNISAの年間投資上限額は、誰でも一律40万円ですから、iDeCo、つみたてNISA合わせて最大で67万6000円(月額約5万6300円)になります。iDeCoは、所得控除による節税メリットがありますので、投資上限額まで利用し、その上で、月々投資に回せる金額の残りをつみたてNISAで投資するとよいでしょう。

iDeCoもつみたてNISAも、基本的に投資信託を毎月コツコツ積み立てて資産を増やして行くのが基本です。金融庁のデータによると、国内・先進国・新興国の株、債券に分散投資をした場合の年平均利回りは、4%程度とのこと。仮に毎月5万円を20年間普通預金に積立をした場合、1200万円ですが、毎月5万円を20年間4%の利回りで運用することができれば、約1830万円になります。

iDeCoやつみたてNISAを活用すれば、運用益は非課税なので、この金額をそのまま老後資金に使うことができますし、iDeCoの場合には、所得控除による節税のメリットもありますので、その分を加味すると、実質準備できるお金はもっと増えています。iDeCoやつみたてNISAを早い時期から始めることで老後の基本的なお金は準備することができるでしょう。

さらに、全ての女性にすすめるわけではありませんが、iDeCo、つみたてNISAに加えて、長生きの女性の自分年金づくりの方法として「不動産投資」を検討してみても良いでしょう。というのも、これまで多くの女性の方のご相談に乗ってきましたが、たくさんの貯金があったとしても、老後にわずかな年金収入だけだった場合を憂慮して気前よくお金を使うことができない、老後の生活が不安でたまらないという例をいくつも見てきたからです。

不動産投資というと、なんだか敷居が高そうな気がしますが、実は投資手法としては手堅い分野です。老後の年金の不足分を補うと考えると、安定した収入が必要になります。株やFXは大きく儲かる可能性も秘めていますが、大きく値下がりする可能性もあり、老後の年金を補う商品として考えるには適切ではありません。一方で不動産投資は、入居者が決まってしまえば、毎月一定の家賃収入が入ってきて、収入が安定します。そして、購入後は管理会社に任せてしまえば、ほとんど手間もかからないので、値動きを気にして生活を送る必要はありません。

ただし、基本的に不動産投資をするときには、ローンを組んで物件を購入するので、誰でも不動投資にトライしてよいかというと、そうではありません。不動産投資で成功する秘訣は、物件選びや業者選び、管理会社選びなどに加えて、好条件で融資が下りるかどうかもとても重要です。ですから、好条件で融資が下りやすい会社員、公務員の方などは検討してみても良いでしょう。

不動産投資は慎重に行う必要がありますが、良い物件や業者に出会うことができれば、人生の終盤には、物件を売却してお金を得ることで、老人ホームの入居一時金に充てたり、毎月の賃料の足しにしたりすることができます。長生きの女性が老後も楽しく暮らすことができるようにするためには、長生きということを踏まえ、各金融商品の特徴を理解して上手に活用していくことが大切です。

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著者

高山 一恵 ファイナンシャルプランナー
高山 一恵
1級ファイナンシャル・プランニング技能士。Money&You取締役。慶應義塾大学文学部卒業。2005年に女性向けFPオフィス、エフピーウーマンを創業。10年間取締役を務めた後、現職。女性向けWEBメディア『FP Cafe®』や『Mocha』を運営。また、『Money&You TV』や『マネラジ。』などでも情報を発信している。全国での講演活動、執筆、マネー相談を通じて、女性の人生に不可欠なお金の知識を伝えている。明るく、親しみやすい講演には定評がある。主な著書に「はじめての資産運用」(宝島社)、「はじめてのNISA &iDeCo」(成美堂出版)、「税制優遇のおいしいいただき方」(きんざい)などがある。

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