老後資金の不安を払拭する方法――「積立」で期待できる効果とは?
FPがいま改めて深掘りする「老後2000万円問題」

老後資金の不安を払拭する方法――「積立」で期待できる効果とは?

  • 公開日:2020.04.21

Editor's Eye

2019年6月、金融庁の金融審議会「市場ワーキング・グループ」が公表した報告書が発端となり、今や誰もが知るフレーズとなった「老後2000万円問題」。当時は麻生金融担当相が報告書の受け取りを拒否するほどの事態にまで発展した問題だが、結果として、これまでにないほど多くの人が資産形成への第一歩を踏み出す契機にもなった。未曽有の規模の感染症拡大によりさまざまな常識が覆されていく中でも、人生に深く関わり、数十年単位で向き合わなければならない「老後2000万円問題」をどう捉えるべきか。人々のお金の悩みに日々向き合うFPに意見を求めてみた。

2019年6月に突如沸き起こった「老後資金2000万円問題」。その金額の大きさに困惑した人は多かったはずです。私たちはいったい老後までにいくら準備したらよいのでしょうか。安心して老後を迎えるための老後資金の考え方と貯め方について分析していきます。

金融審議会が公表した市場ワーキンググループ報告書(以下、報告書)を発端とし、「老後資金2000万円問題」が議論されるようになりました。

報告書には、「(高齢夫婦無職世帯の家計収支では)毎月の不足額の平均は約5万円あり、まだ20~30年の人生があるとすれば、不足額の総額は単純計算で1300万円~2000万円になる」と書かれています。

数字の根拠を探ってみると、総務省が公表している「高齢無職世帯の家計収支(2017年度)」を使って計算されていることが分かります。具体的には、高齢者世帯における月の平均的な支出は約26.4万円で、対する収入は約20.9万円となっています。支出と収入の差額である5.5万円は毎月の不足額を意味し、仮に老後が20年から30年あるとすれば、その不足額に老後の年数を掛けた数字が「老後までに準備する金額」だとみなされます。

もっとも、2000万円あれば「老後は安泰」とも言い切れず、実際には介護費用や住宅のリフォーム費用、自動車の買い替え費用などが別途必要となってくる点を忘れてはなりません。

確かに、老後資金の目安額は「2000万円」だとも考えられますが、ここはいったん冷静に考える必要があります。なぜなら2000万円はあくまでも「平均額」であり、「誰にでも当てはまる金額ではない」ではないからです。

そうはいっても、老後資金に対する不安を拭い切れない方は多いと思います。このような漠然とした不安を解消するためには、自分自身の老後資金を計算してみることが解決策になることもあります。

そこで、老後資金の計算方法をご紹介したいと思います。

老後の期間を30年と仮定した場合に、65歳までに準備しておきたい目安額は、30年間の支出総額(1とします)から30年間の収入総額(2とします)を引いた額になります。

支出と収入、それぞれの主な項目は以下の通りとなります。

・老後の年間生活費(退職前の年間生活費の約7割が目安)×30年間
・一時的支出
 ――住宅のメンテナンス費、車や家電の買い替え、旅行代、医療・介護費用
 (ひとり500~600万円くらいが目安)

・公的年金(日本年金機構の「ねんきんネット」で試算可能)
・私的年金
・企業年金
・退職金 など

これを基に、一般的な夫婦世帯のケースで試算してみます。

1 支出総額

  生活費年間360万円(毎月30万円)×30年間=1億800万円・・・A
  一時的支出 1200万円・・・B

  A+B=1億2000万円

2 収入総額

  公的年金年間240万円(毎月20万円)×30年間=7200万円・・・C
  私的年金500万円・・・D
  退職金1500万円・・・E

  C+D+E=9200万円

65歳までに準備したい金額

  1-2=2800万円

実際に計算してみると、老後資金が算出できるだけではなく、計算の過程では自分が将来受け取る公的年金や退職金の額を調べる必要性もあるため、それぞれの制度についての理解を深めることもできます。特に定年に近づく40代後半から50代の方には、ぜひこの式を使って老後資金を計算してもらいたいと思います。

また、定年がまだ先である年代の方は、具体的な老後資金が出せないまでも、自分が受け取る年金がどれくらいあるのか、勤務先の退職金制度はどのようなものなのかについて、関心を持つ良い機会になります。

自分の老後資金が分かったら、すぐに行動に移すことが大切です。

老後資金を増やすためには「貯蓄を増やす」ことも大切ですが、同時に「老後の収入を増やす」ことにも目を向けましょう。

老後の収入を増やすための対策は、会社員と自営業者で異なります。

会社員は、勤務先が用意している退職金制度や年金制度を調べて、それらの制度を有効的に活用することが大切です。たとえば企業型の確定拠出年金が採用されている場合は、資金の大半を預貯金や保険などの元本確保型の商品に置くのではなく、資産を増やす部分として、株式型投資信託での運用もあわせて行うとよいでしょう。ほかにも、一般的な金融商品に比べると、節税の効果が期待できる個人型確定拠出年金(以下iDeCo)での運用も検討しましょう。

一方、厚生年金に加入できない自営業者の場合は、国民年金の保険料をきっちり納めることを基本とします。その上で、将来受け取る年金額を増やすために付加保険料を納めることや、国民年金基金への加入なども検討したいところです。あわせてiDeCoにも加入し、税制優遇を受けながら老後資金を増やすことに努めてもらいたいと思います。なお、iDeCoに加入している人は、国民年金基金と合わせて月額6万8000円が掛金の上限になることや、国民年金基金に加入すると付加保険料は納められないという点に注意してください。

他方、iDeCoや国民年金基金は、老後の資産形成を目的とした制度であるため、60歳や65歳など一定の年齢にならないとお金が受け取れません。

そこで、必要な時に自由にお金を引き出せる「つみたてNISA」での運用も検討しましょう。つみたてNISAとiDeCoを併用すれば、ダブルの節税効果も期待できます。

また、元本が保証されているものとして、財形貯蓄制度や銀行の積み立てサービスを利用した定期預金でお金を貯めるのもよいと思います。

筆者は、現役世代の資産形成には「積み立て型の商品が向いている」と考えます。なぜなら、現役時代は、仕事や家族と過ごす時間、趣味や自分のスキルアップの時間などが生活の主となり、このような忙しさの中、資産形成のために多くの時間を使うことはほぼ不可能だからです。そこで有効なのが「積み立て型」の制度や商品を利用した資産形成。一度仕組みさえ作ってしまえば、後は自動的に積み立ててくれるからです。

また、積み立て型は、投資理論上からするとドルコスト平均法でリスクの分散効果も期待できます。また、情報過多な時代において、積み立て型は、余計な情報に惑わされることなく着実に貯められることも大きなメリットです。

当初「老後資金2000万円問題」には、マイナスのイメージがつきまとっていたことは否定できません。しかし、この問題をきっかけに老後の資産形成を始めた人も多く、結果的には世の中に良い影響をもたらしたと言っても過言ではありません。

とはいえ、今後も形を変えて、老後資金の不安をあおるような話題が出ることも考えられます。そこで再び不安に陥らないためにも、自分なりの運用方針を立てることが重要です。そして、「積み立て型」商品で、自分だけの揺るぎない土台を作ってもらいたいと思います。

 

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著者

小沢 美奈子 ファイナンシャルプランナー
小沢 美奈子
K&Bプランニング代表。大学卒業後、損害保険会社にて社員教育、研修講師などを経験。約12年間勤務後、外資系損害保険会社で営業に従事。ファイナンシャルプランナーとして活動開始後はWebや書籍などで記事執筆、セミナー講師、家計相談などを行う。シニアや生活困窮者のライフプランにも力を入れる。フォトライターとしても活動。趣味はカメラ。

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