老後資金の不安を払拭する方法――「積立」で期待できる効果とは?
- 公開日:2020.04.21
いくら必要か、いくらもらえるのかを調べよう
確かに、老後資金の目安額は「2000万円」だとも考えられますが、ここはいったん冷静に考える必要があります。なぜなら2000万円はあくまでも「平均額」であり、「誰にでも当てはまる金額ではない」ではないからです。
そうはいっても、老後資金に対する不安を拭い切れない方は多いと思います。このような漠然とした不安を解消するためには、自分自身の老後資金を計算してみることが解決策になることもあります。
そこで、老後資金の計算方法をご紹介したいと思います。
老後の期間を30年と仮定した場合に、65歳までに準備しておきたい目安額は、30年間の支出総額(1とします)から30年間の収入総額(2とします)を引いた額になります。
支出と収入、それぞれの主な項目は以下の通りとなります。
1 30年間の支出総額
・老後の年間生活費(退職前の年間生活費の約7割が目安)×30年間
・一時的支出
――住宅のメンテナンス費、車や家電の買い替え、旅行代、医療・介護費用
(ひとり500~600万円くらいが目安)
2 30年間の収入総額
・公的年金(日本年金機構の「ねんきんネット」で試算可能)
・私的年金
・企業年金
・退職金 など
これを基に、一般的な夫婦世帯のケースで試算してみます。
1 支出総額
生活費年間360万円(毎月30万円)×30年間=1億800万円・・・A
一時的支出 1200万円・・・B
A+B=1億2000万円
2 収入総額
公的年金年間240万円(毎月20万円)×30年間=7200万円・・・C
私的年金500万円・・・D
退職金1500万円・・・E
C+D+E=9200万円
65歳までに準備したい金額
1-2=2800万円
実際に計算してみると、老後資金が算出できるだけではなく、計算の過程では自分が将来受け取る公的年金や退職金の額を調べる必要性もあるため、それぞれの制度についての理解を深めることもできます。特に定年に近づく40代後半から50代の方には、ぜひこの式を使って老後資金を計算してもらいたいと思います。
また、定年がまだ先である年代の方は、具体的な老後資金が出せないまでも、自分が受け取る年金がどれくらいあるのか、勤務先の退職金制度はどのようなものなのかについて、関心を持つ良い機会になります。
老後資金の賢い貯め方
自分の老後資金が分かったら、すぐに行動に移すことが大切です。
老後資金を増やすためには「貯蓄を増やす」ことも大切ですが、同時に「老後の収入を増やす」ことにも目を向けましょう。
老後の収入を増やすための対策は、会社員と自営業者で異なります。
会社員は、勤務先が用意している退職金制度や年金制度を調べて、それらの制度を有効的に活用することが大切です。たとえば企業型の確定拠出年金が採用されている場合は、資金の大半を預貯金や保険などの元本確保型の商品に置くのではなく、資産を増やす部分として、株式型投資信託での運用もあわせて行うとよいでしょう。ほかにも、一般的な金融商品に比べると、節税の効果が期待できる個人型確定拠出年金(以下iDeCo)での運用も検討しましょう。
一方、厚生年金に加入できない自営業者の場合は、国民年金の保険料をきっちり納めることを基本とします。その上で、将来受け取る年金額を増やすために付加保険料を納めることや、国民年金基金への加入なども検討したいところです。あわせてiDeCoにも加入し、税制優遇を受けながら老後資金を増やすことに努めてもらいたいと思います。なお、iDeCoに加入している人は、国民年金基金と合わせて月額6万8000円が掛金の上限になることや、国民年金基金に加入すると付加保険料は納められないという点に注意してください。
他方、iDeCoや国民年金基金は、老後の資産形成を目的とした制度であるため、60歳や65歳など一定の年齢にならないとお金が受け取れません。
そこで、必要な時に自由にお金を引き出せる「つみたてNISA」での運用も検討しましょう。つみたてNISAとiDeCoを併用すれば、ダブルの節税効果も期待できます。
また、元本が保証されているものとして、財形貯蓄制度や銀行の積み立てサービスを利用した定期預金でお金を貯めるのもよいと思います。