「資産が1億円あっても、老後が不安」?! IFAはこう答えた【前編】
“お金のかかりつけ医” IFAのアドバイス事例

「資産が1億円あっても、老後が不安」?! IFAはこう答えた【前編】

  • 公開日:2020.04.20

Editor's Eye

銀行や証券会社等の金融機関と比べ、長期的な目線でさまざまな資産の相談に応じると言われているIFA(独立系ファイナンシャルアドバイザー)ですが、彼らは相談者に対し実際にどんなアドバイスをしているのでしょうか。印象深かった相談内容をIFAに振り返ってもらうシリーズ連載の第1回は、東京・新宿のIFA法人バリューアドバイザーズの執行役員を務める田中久登さんに語っていただきました。前編となる今回は、資産総額は不動産を含めて1億円以上とお金の悩みなどないように思える相談者が抱える課題を浮き彫りにしていきます。

今回は、当社の資産運用セミナー参加をきっかけに、相談にいらした山本純子さん(63、仮名)の例をご紹介しましょう。

相談者:
山本 純子さん(63) フリーランスのデザイナー

ご家族:
夫  真一さん(67) 年金生活者
長男 拓也さん(35) 会社員
長女 優美さん(33) 海外在住

(いずれも仮名)

山本さんは資産運用に興味をお持ちで、当社のようなIFAが講師を務める楽天証券協賛のセミナーに積極的に参加されていました。複数のIFAに出会う中で、20代から70代まで幅広い年代層のアドバイザーがそろう当社に興味を持たれ、長期的視野を持つ若手アドバイザーに相談に乗ってほしい、と希望されました。

山本さんご夫妻は、不動産も含めると1億円以上の金融資産をお持ちです。ただ、収入や資産の多い人は生活費など出ていくお金も多い傾向にあるので、金融資産が潤沢なら老後も安心、とは必ずしも言えません。山本さんも一見すると「老後2000万円問題」とは無縁の存在に見えますが、ご自身でも生活レベルが高めであることは自覚していて、「今の生活を続けていて大丈夫だろうか」と不安を抱えていました。

当社では、相談にいらしたお客さまには、最初に「問診票」の記入をお願いしています。相談でどんなことを聞きたいか、投資の経験、資産形成の目標、将来の夢、現在の生活費や積立額、収入と収入源、金融資産、家族構成などの項目があります。

ただ、相談の前にすべての項目を埋められる方はほとんどいません。いきなり「将来の夢」と言われても困ってしまう方がほとんどですし、資産形成の目標についても多くの方は具体的なプランなど持っていません。また、収入や金融資産といったプライベートな情報を最初からすべて明かすのは抵抗を感じる人もいるでしょう。

無理に埋める必要はなく、書きやすい情報だけ記入してもらい、お話をしながらお客さまが抱える課題や思い描く理想を掘り起こし、「見える化」していきます。IFAは資産運用のアドバイザーですが、単純にいつまでにいくら必要かを計算するというよりも、将来の夢――お客さまが「ありたい姿」は何なのかを明確にして、そのために必要な金額を目指して運用方針を決めていきます。

山本さんの希望は、「この先も今の豊かな生活を続けていきたい」ということでした。

相談に来る前から、もっと金融商品の割合を高めて資産を殖やす必要は感じており、すでに大手証券で社債を購入したり、IPO銘柄に投資したりしていましたが、保有資産規模の割にその額は少額です。証券会社の担当者は売りたい商品の情報を持ってくるだけで、それが自分に合った金融商品かどうかを判断できず、迷っていたのです。

そこで私は、まず資産運用の基本的な考え方をお伝えしました。

金融資産は、最低でも5年以上の長期でじっくり増やしていく「コア」運用と、高めのリスクをいとわず短期的な利益を狙う「サテライト」運用、そして現金の3種類に分けて考えることが重要です。

コア・サテライト・現金の配分に関する考え方

多くの人は、「投資」というとギャンブル的なものを想像しますが、これは「サテライト」的な投資であり、運用の柱とするべきものではありません。柱となる「コア」運用は、長期で世界経済の成長の恩恵を受ける投資です。投資対象を特定の企業に絞ってしまえば倒産のリスクもありますが、世界経済が倒産することはまず考えられないので、相場を予測したり、目先のマーケットの動きに一喜一憂する必要はないのです。

とはいえ、「これだけではつまらない」と感じる人は、一定の割合の中で、あくまで少額でサテライト運用にチャレンジしても問題はありません。

ただ、いずれの運用方法にしても、途中の段階では景気後退や金融危機などの影響を受けて資産がマイナスとなる局面はあるものです。損失が出ている時期に換金しなくて済むよう、当座必要なお金は現金で持っておくことが重要になります。

ベースとなるこうした考え方をお伝えしながら最適な資産運用方針を検討した結果、最終的に山本さんは6000万円ある預貯金のうち、まず1000万円は現金のままとし、2000万円は米国債を中心とした複数の債券を組み合わせて保有することにしました。

債券は単利運用ですが、定期的に決まった利子を受け取ることができるメリットがあります。山本さんは固定資産税や自動車税などの固定費負担が年間60万円ほどあり、これを負担に感じていたので、債券の利子でこの60万円をまかなえるよう逆算してポートフォリオを組みました。

60万円の固定費から逆算し、債券の購入額を算出した

山本さんは、毎年発生する固定費負担から、資産を活用して解放される方法があることに大変驚き、満足されていました。

6000万円のうち残りの3000万円は、10年後に4000万円に増やすことを目標に、複利でじっくりと元本を増やす運用にしました。

3000万円は、長期間かけて元本を増やすためにファンドラップに振りむけた

具体的には、国内外の株式やREIT(不動産投資信託)などを対象とする投資信託を組み合わせたファンドラップを活用することにしました。リスクが低いものから高いものまで10種類あるうち、山本さんは比較的リスクの高い8番目を選ばれました。人生100年と言われる中で、山本さんはまだ63歳。長期の資産運用は十分可能なので、思い切って成長期待の高い商品を選ぶことにしたそうです。

ただし、市場は常に変動するので、一括で投資してしまうと、そこが高値圏となる可能性もあります。こうしたリスクが気になる人には毎月一定額を投資する積み立てという選択肢があります。山本さんは3000万円のうち2000万円をラップファンドで一括投資し、残りの1000万円は月10万円ずつ、世界の株価指数に連動するインデックスファンドなどを積み立てることにしました。

積み立て投資は相場が下がると安く投資できることになるので、上がっても下がってもうれしい投資法です。足元のコロナショックによる世界同時株安のような局面では、保有資産の評価額は一時的に大きく下がってしまいますが、積み立てをしている人にとっては将来の利益を伸ばすチャンスです。山本さんはこのことをよく理解してスタートされたので、動揺することなく過ごしていらっしゃいました。ちなみに、積み立ての一部は、利益が非課税になるつみたてNISA(少額投資非課税制度)もフル活用しています。

こうした一連の提案に対し、山本さんが「そんなこと初めて聞いたわ」「目からウロコね」といった言葉を連発されていたのが印象的でした。もともと、証券会社のセールスに不満を持って当社にコンタクトしてくださった方ですが、やはり商品販売ありきの現場だけでは必要な情報を得にくいことを実感されたようでした。

資産運用の方針は固まりましたが、山本さんへのアドバイスは、これで終わりではありません。相談を通して、彼女がほかにもさまざまな課題を抱えていることがわかってきたのです。

それについては後編でお話しさせていただきます。

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著者

田中 久登 バリューアドバイザーズ 執行役員
田中 久登
大学卒業後、岡三証券に入社。富裕層向けの資産コンサルタントに従事。海外研修を経てIFAへの転身を決意し、現代表の五十嵐と株式会社バリューアドバイザーズ設立に参画。医師、地権者、士業、学生、保険募集人など専門分野向けの資産運用セミナーを得意とし、年間30回程の講演を毎年開催。青年会議所や相続診断士会などの役員に従事し、多方面の人脈形成によりバリューアドバイザーズとしてお客さまフォローを充実させることを理念に、日々活動の幅を広げている。

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