篠田尚子のファンド愛 3

分散していたのになぜ下がる? 実は奥が深いバランス型ファンドの世界

  • 公開日:2020.05.11

●コロナショックがもたらした、セオリーが通用しない投資環境とは?
●「卵を1つのカゴに盛るな」の格言が与える誤った印象
●バランス型ファンドと上手に付き合うにはコツがある

去る4月21日、楽天証券で投信保有者向けのオンラインセミナーを開催した。

今回のセミナーの主旨は、多くの投資家が初めて直面しているのであろう足元の波乱相場で感じた不安や疑問を質問として事前に寄せてもらい、筆者を含むファンドアナリストがそれらを解消していくというもの。寄せられた質問にはいくつかの傾向があったのだが、今回はその中でも特に印象深かった、バランス型ファンドの分散効果にまつわる内容を掘り下げていきたい。

実際に寄せられた質問の内容は、「『8資産均等』のバランス型ファンドが、資産分散しているはずなのに、株式だけに投資する投資信託並みに下落してしまっている。本当に債券やリートに分散投資する意味はあるのか」というものだった。筆者がこの質問を「印象深い」と思ったのは、リーマン・ショックの直後にも、バランス型ファンドの分散効果を疑問視する風潮が高まったことを思い出したからだ。

質問にあった「8資産均等」型のバランスファンドとは、国内株式、先進国株式、新興国株式、国内債券、先進国債券、新興国債券、国内リート、先進国リートという、計8種類の資産を、12.5%ずつ組み入れた投資信託のことである。インデックスファンドを8本束ねていると考えると分かりやすいかもしれない。

均等配分で資産を組み入れるバランス型の中には、「4資産」や「6資産」などもある。前述のリーマン・ショックの頃は、3~4種類の資産で構成されているものが多かったのだが、リートや新興国株式などのアセットクラスが市民権を得た近年は、「8資産」がバランス型ファンドの主流になりつつある。信託報酬が低く抑えられており、つみたてNISA適格の商品が多いことも人気に拍車をかけたとみられる。

話を質問の内容に戻そう。

そもそもなぜ「分散投資しているはずなのに」大幅な基準価額の下落に見舞われたのか。この質問に対する回答のカギは、資産分散における相関の概念への理解にある。

「相関」とは統計学の概念で、2つの物が密接に関わり合っていること、すなわち、類似性の度合いを意味する。「Aの売り上げが伸びたら、Bの売り上げも伸びる」という場合、AとBは「相関が高い」、または「正の相関がある」という。反対に、「Aの売り上げが伸びたら、Bの売り上げは落ち込む」という場合、AとBには「負の相関がある」という。Aの売り上げがBの売り上げにさほど影響しない場合は、「相関がない」「相関が低い」などということもある。

つまり、2つの物ごとや事象が、同じ方向を向いているか、それとも反対の方向を向いているかによって、相関の有無と高低が表される。

理論上、株式と債券は逆相関の関係にあるとされる。株式市場が急落し、組入株式の価値が下落しても、債券がクッション効果を発揮し、保有資産全体としては大きな傷を負うことを防げる……というのが一般的に知られているバランス型の大義名分である。

しかし今回は、株式も債券も同じ方向に動き、短期間で下落してしまった。さらに追い打ちをかけたのが、リートと新興国株式である。両者はともに個人投資家の人気が高い資産だが、先進国の株式や債券と比べて流動性が極めて低く、下がる時は文字通り「急落」することがある。リートに至っては、リーマン・ショック時以上の下落に見舞われることとなった。

もうお分かりいただけただろうか。

もし読者の中に、バランス型ファンドについて「より多くの資産を組み入れたほうがリスクを抑えられる」と考えている人がいたら、今一度自身のリスクとの向き合い方を見直してほしい。残念ながら、多くの資産に分散しているからといって、投資信託そのもののリスク(標準偏差)が一律に低くなるというわけではなく、投資効率が良くなるというわけでもない。

現に今回も、また、遡ること10年以上も前のリーマン・ショックのときも、均等配分のバランス型ファンドは基準価額の下落に見舞われているのだ。

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著者

篠田 尚子 楽天証券経済研究所 ファンドアナリスト
篠田 尚子
慶應義塾大学卒業後、国内銀行を経て2006年ロイター・ジャパン入社。傘下の投資信託評価機関リッパーにて、投信業界の分析レポート執筆、評価分析などの業務に従事。2013年、楽天証券経済研究所入所。日本には数少ないファンドアナリストとして、評価分析業務の他、資産形成セミナーの講師も務めるなど投資教育にも積極的に取り組む。近著に『【最新版】本当にお金が増える投資信託は、この10本です。』(SBクリエイティブ)。
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