コロナショックで再検証する「つみたて投資」の効用 1

株価が下がるとうれしい? 今こそ知っておくべき、つみたて投資の底力

  • 公開日:2020.05.13

Editor's Eye

●コロナショックで資産がマイナスになった人も、つみたて投資なら心配する必要なし
●理想は「下がった局面で投資」ではあるものの、底値を予見できる投資家はほとんどいない
●実際の取引履歴から、つみたて投資の効用を見てみると……

少々古い文体の文章の引用ですが、まずはご一読ください。

「好景気、楽観時代は思い切った勤倹貯蓄」(すなわち金〈かね〉を重しとする)、「不景気、悲観時代には思い切った投資」(すなわち物を重しとする)といった鉄則を樹てて直進することを人にもすすめている。要するに利殖の根本をなすものは「物と金」の適時交替の繰り返しであって(中略)……。

これは林学者で日比谷公園や明治神宮の建立に尽力した本多静六翁が、戦後の昭和25年(1950年)に著した『私の財産告白』(実業之日本社)からの一節です。要約すると、「景気が良い時は現金を貯め、景気が悪い時には投資をせよ。投資は結局、現金と資産(物)の交換をすること」ということなのです。

コロナショックの今、この一節がまさに的を射ていると思うのは筆者だけではないでしょう。好景気で物価は上がり、不景気では物価が下がる。資産価格もおしなべてそのように動くものがほとんどです。

コロナショックからほんの2カ月くらいしか経過していませんが、一気に不況に陥りました。東京オリンピックの延期が発表され、それまで好調であった不動産業も主要各社の株価はピークからはほぼ半値となり、東証REIT指数も同様です。まさしく、本多翁が指摘するように、悲観で資産価格は下落するということなのです。国や地方自治体の緊急事態宣言は、これに拍車をかけます。

この間、日経平均株価は直近の最高値から最安値まで約31%下落し、ニューヨーク・ダウ平均株価も同様に約37%下落しました。読者の中にも気が気でない方もいらっしゃるでしょう。つみたて投資を続けていながら評価損が出ている方も、たくさんいらっしゃると思います。

でも心配には及びません。筆者も多少の損失を出していますが、後述の通り評価損額はわずかであり、むしろ投資対象をしばらく割安に買えることを、ほくそ笑んでいるくらいです。このメカニズムと実際の取引履歴は、後段ご紹介させていただきます。

さて、本多翁の指摘通り、常に現金を多めに保有し、株価や資産価格が低下した局面で投資するのは、確かに理想です。しかしながら、そのタイミングに備え現金を貯めておくのは、そう簡単ではありません。さらに、投資してリターンを最大にするためには投資対象資産の収益率もさることながら、投資金額の多寡が収益額の大きなファクターであることは忘れられがちです。

例えば、暴落後に購入したA社株式が10%上昇したとしましょう。投資家Bさんは100万円をA社に投資し、めでたく10%のリターンを得ることができました。別の大口投資家Cさんは同じくA社に10億円投資し、こちらもめでたく10%のリターンを得ることができました。

ところが、収益率は同じでも、Aさんが得られた収益額は10万円、Cさんは1億円となります。10万円では家族旅行も難しいですが、1億円あれば家族で世界一周旅行をしても十分お釣りがきて、余った資金を再投資することも可能です。保有している資産額によって不公平感が大きく感じられる事例ですが、投資にはこうした側面があるのです。

それでは、一般消費者である私達はどうすればいいのでしょう。“大勝負”できる資金を貯めて、相場下落のタイミングを待つべきでしょうか。

筆者はこう考えます。投資タイミングを決めることができ、数千万円の資金を一気に投下できるメンタリティを持っている方は思い切って勝負してもいいと思います。でも、ほとんどの方は投資金額の多寡というよりも、そこまでの投資マインド(=気合)が醸成されていませんから、まずこうした投資はできません。

ですので、着実にかつ無理をする必要のない読者のみなさんは、本多翁のアドバイスである「物と金の適時交替の繰り返し」をつみたて投資で実践すればいいのです。

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著者

太田 創 日本つみたて投資協会 代表理事
太田 創
関西学院大学卒。1985年、三菱銀行(現・三菱UFJ銀行)入行。1988年より約10年間、英国およびブラジルで資金為替・デリバティブ等の運用、投資信託の管理業務に携わる。その後、2000年から2019年までシティグループ(米)、UBS(スイス)、フィデリティ(米)等で投資信託のマーケティング・商品企画を統括。近著に『毎月3万円で3000万円の「プライベート年金」をつくる 米国つみたて投資』(かんき出版)がある。
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