クラウドファンディング型空き家ファンドによる老後資金の利活用

クラウドファンディング型空き家ファンドによる老後資金の利活用

  • 公開日:2020.05.25

Editor's Eye

●空き家率の上昇とマイホームニーズ
●ファンド化による低コスト運営
●毎月家賃を受け取る年金代替機能による老後不安の軽減

『Finasee』では、FP事務所や銀行、証券会社など所属先を問わずFPとして活動する人を対象に、お金にまつわる課題をテーマに「FPからのメッセージ」コンクールを開催しました。寄せられたさまざまな作品の中から、独立系FP部門で最優秀作品賞を受賞したFP事務所 寿ファンドコンサルティングの代表取締役、高橋成壽さんの作品を掲載します。

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日本銀行のマイナス金利政策導入により、老後資金の安定的な運用先がなくなって久しい。しかし、外貨建て保険、変額保険、投資信託等への投資では不確定要素が大きい。今回提案するのは、空き家の利活用を老後資金でファンド化し、空き家を実質無償で借り上げ、空き家率を下げるとともに収益化することで、空き家という社会課題を解決するモデルである。

神奈川県横須賀市の横須賀市空家等対策計画(平成31年3月)によると、横須賀市の空き家戸数は総住戸数19万6300戸に対し、2万8830戸。空き家率は14.7%となり、全国平均の13.5%を上回る数字となっている。

東京都から1時間圏内の横須賀市における空き家の現況は、我が国の今後の空き家率が今後も高まっていくことを示していると考えられる。空き家の問題は、所有者、所有権割合、メンテナンスコストなどいろいろな問題が複合的に絡まっているケースが多いが、今回はひとくくりに空き家という表現に統一して話を進めていく。

総務省の地域力アドバイザーである近藤威志氏が横須賀市内の空き家を借りて現地に住み込んだところ、空き家3件、空き地2つをもらい受けてほしいという依頼があったという。空き家には空き家なりの理由があり、売ることすら叶わない住戸がある。しかし、空き家になるしかない家を活用するための仕組みを構築することは可能だ。

人生100年時代、マイホームという拠点を持ちたいというニーズがある。カーディフ生命の発表した「世代別の生活価値観・住まいに関する意識調査」によると、平成世代の8割が持ち家志向であるという。一方で、8割強が老後資金を不安視し、住宅ローンの返済不安をも抱えている。

空き家を低賃料で借りることができれば、一生涯の住居費用を削減することが可能だ。例えば、固定資産税相当額程度の空き家を借り上げることができれば、運営側は実質無償で家を確保できる。住宅費が下がることで、将来の老後資金の原資を貯めることも可能となる。

マイホームのニーズの1つに、一生涯の住宅費を下げるという目的がある。

この目的は、賃料が圧倒的に安くなれば、マイホームでなくともよいと考える層が一定数いることを示唆するものである。実際に、筆者がFPとしての相談会や講演会で、1円で売られている家がなお売れない事実、100万円払ってでも家をもらってほしい人がいるという事例を話すと、興味を持つ人がいるのだ。

超低賃料での賃貸ニーズを作り出せば、老後不安も解消されるという構図である。

住宅を購入するには、住宅ローン審査を経て承認される必要がある。銀行では年収400万円が1つのハードルといわれていたが、住宅金融支援機構のフラット35では年収ごとに返済比率が分かれており、年収が低くても家を買うことはできる。

しかし、買い手のつかない古い戸建てのような空き家はフラット35の適合証明書を取得することが叶わぬケースも多く、安いからフラット35で買えばいい、という乱暴な理屈では住宅取得に至らない。

だが、もし超低賃料で空き家を貸し出せば、手元に資金が残るだろう。自己資金が貯まれば、将来的に超低賃料で借りている家を現金で買うという選択ができる。住宅ローンに必要な審査を通らない人たち、あるいは適合証明書の取得できない家を現金で買う流れを作ることができれば、空き家は減少する。

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Finasee編集部
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