地方には地方の戦略を 徳島で信頼を積み上げるIFA、HACO【後編】

地方には地方の戦略を 徳島で信頼を積み上げるIFA、HACO【後編】

  • 公開日:2020.06.08

Editor's Eye

中立的な立場から金融商品の提案・アドバイスを行う存在として注目が高まるIFA(Independent Financial Advisor:独立系ファイナンシャルアドバイザー)。数名単位と小規模で運営する法人がほとんどを占め、その多くが都市部に拠点を置く中、徳島県で実績を上げているIFA法人がHACOだ。高校中退、市役所勤務といった異色の経歴を中心に語ってもらった前編に続き、IFAとしての具体的なアドバイス方針や今後について、代表を務める尾山道郎(みちお)氏に聞いた。

IFA事業を開始したことで保険以外のアドバイスができるようになったHACOは、女性、子育て世代、退職者、住宅ローンといった多様な切り口のセミナー開催にも注力。2019年には集客数が年間800名にも上るほど回数をこなしたが、狙いは集客以外にもあるという。「地方ではとにかく信頼が第一。信頼構築には、『FPの先生』として露出を高めるのが効果的なのです」。

実際、セミナー講師と併せてラジオ番組へのレギュラー出演や図書館のネーミングライツの取得といった活動にも励むことで、県内では、金融セミナーといえばHACOと言われるまでに成長した。「競合の金融機関がセミナーの開催を諦めるほどのシェアを取る、という一つの目標は達成しつつあります」と自信をのぞかせる。

ラジオではマネー相談コーナーの回答者を担当する

保険・住宅ローン等をフックに資産運用の預り資産を積み上げるビジネスモデルを確立したHACOだが、IFA事業の開始は2019年の12月末とその歴はまだ半年ほど。はじめはマンパワー的に時期尚早と捉えていたが、FP事務所として運営を続けるうちに、VLの他にも、解約や投資期間・金額の変更が気軽に行え、また一括・積立の設定も自在な投資信託を扱うことで、投資期間の短い退職層や高齢者にも提案の幅が広がるのではと思い至るようになった。これが、IFA事業スタートの大きな理由だったという。

主力となるVLと投信には重なる部分も多いが、すみ分けは「持続可能性」を基準に考えているという。例えば、投資に回せる資金月5万円のうち、変額保険には3万円を、投信に2万円を充て、状況の変化に応じて投信部分を増減するといったやり方だ。

投信の具体的な商品については、全世界分散、セクター分散、20年以上のトラックレコード、アクティブファンドであることの4つの選定基準を設けている。

「分散は基本として、リーマン・ショック前後も含めた実績も参考にしたいという点、目利きの価値を提供すべきという考え方の体現」だと尾山氏は補足し、これらを満たしたファンドの1つとして、キャピタル世界株式ファンドを挙げる。投資先戦略の47年という運用実績や、運用期間の後期の利益が実際よりも大きく見えがちな指数表ではなく、対数表を説明資料のグラフに採用している点なども評価しているという。

「これは一例ですが、ロジックを磨いて正確なデータを取っていれば、どんな局面でもブレずに良いファンドを目利きできるはずです。一説には3分の1しかないとも言われる『インデックス投信に勝てるアクティブ投信』を見つけることもIFAの提供し得る価値の1つ。今後はそうした、ネットでは得られないアドバイスこそが対価をいただく対象となるのでは」と尾山氏は力説する。

それを象徴するように、証券口座の種別には、多くの商品で販売手数料が無料となるインターネットコースを採用している。投信に限らず保険についても販売手数料の値下げは不可避の流れにある中、ゆくゆくはコンサルティングフィーで稼ぐ意識で、販売手数料に頼らない収益構造を目指す。すでに相談の一部を有料とし、月5000円の顧問契約も用意するなど、その実現に向けた準備も進めているという。

IFA事業開始からわずか3カ月でコロナショックを迎えたHACOだが、預り資産は順調に積み上がっているという。好調の要因は主に既存顧客の下げ局面での買い増しニーズによるもので、いわゆる二番底、三番底に備え、10カ月前後にわたる期間限定での積立投資も提案しているため、今後も流入が続く見込みだ。

さらに、もともと保険の既契約者向けフォローを年1回実施し、「遅かれ早かれ、リーマン・ショック級の下げが来る。長期で捉え、下がっても慌てずに、場合によっては買い増しを」といった基本的な考え方を伝えていたことも功を奏しているようだ。「新規のお客さまの獲得には確かに多少の影響は出ていますが、今はまさに、こうした取り組みの真価が発揮されているのかもしれません」と、どっしり構える尾山氏。

ただ、地方での展開という切り口で見ると、コロナ禍が今後に及ぼす影響は未知数だ。「Webセミナーやリモートの個別相談が浸透することで、『地元のFPさん』という安心感、親近感が武器でなくなってしまう可能性はあります」と、尾山氏は現在の状況変化を冷静に捉えながらも、今後も地域に根差した金融アドバイザーとして活躍の場を広げていく構えだ。

地銀や証券会社が強いと言われる地方でも、一定の目的を持って銀行や証券会社に向かう顧客と、不安を抱えて相談に来るHACOの顧客は実はさほど重ならない。加えて、広報戦略をはじめ、工夫次第で成長できる伸びしろがある分、「地方にはメリットがあるとすら感じている」という。IFA事業の展開により金融商品のアドバイスも可能になったことで、証券会社などから大きな金額の移管に成功する事例も出てきた。

「これほど顧客に深く関わり、人生すらも変え得る職業は、希少と言っていいでしょう。ネットが普及しても、自力で有益な情報にたどり着ける人はひと握りで、正しいアドバイスのニーズは忙しい現役層や、都市部から離れた地方にこそあるはず。顧客からのご支持を集め、IFAの知名度を地方から高めていければと思います」と尾山氏は意気込む。

足元のコロナショックは、図らずも長期的なアドバイスを特徴に掲げるIFAチャネルの実力を試す機会にもなっているようだ。目先のリターンにとらわれないぶれないアドバイスを続けるIFAが全国各地で活躍するようになれば、浸透に弾みもつくだろう。IFAが「顧客の伴走者」の代名詞となれるかは、地方発のIFAの台頭にかかっているのかもしれない。

IFAキャリアサービス外部サイトに遷移します

著者

Finasee編集部
金融事情・現場に精通するスタッフ陣が、目に見えない「金融」を見える化し、わかりやすく伝える記事を発信します。
この記事は役に立ちましたか?
  • よく分かった (2)
  • 難しかった (1)

このページをシェアする

  • Lineにシェア
  • はてなブックマークにシェア

あわせて読みたいRecommend

関連コラムRelated

参考サイト
もっと情報をキャッチ!

読者アンケートでAmazonギフト券500円分プレゼント