収益物件に6800万円の借入………IFAへの資産相談で解消した「いびつさ」とは
“お金のかかりつけ医” IFAのアドバイス事例

老後に向けた不動産投資 6800万円のローンは「リスク高すぎ」?

  • 公開日:2020.06.26

Editor's Eye

銀行や証券会社等の金融機関と比べ、長期的な目線でさまざまな資産の相談に応じると言われているIFA(独立系ファイナンシャルアドバイザー)ですが、彼らは相談者に対し実際にどんなアドバイスをしているのでしょうか。印象深かった相談内容をIFAに振り返ってもらうシリーズ連載第3回で取り上げるのは、東京・有楽町と大阪・梅田に相談拠点を構えるIFA法人、ファイナンシャルスタンダードのアドバイザー、石川裕次郎さんのケース。「投資用不動産、3軒も保有するのはやり過ぎでしょうか……?」と相談に訪れた40代女性の事例をご紹介します。

相談者:
内田 美保さん(46) 会社員

(仮名)

当社の投資セミナーへの来場をきっかけに個別相談を希望された内田さんは、生涯シングルで過ごすことも視野に、老後に備えるべくすでに行動を起こしていました。

2年ほど前、40歳を過ぎて老後に年金以外の収入が欲しいと考えるようになった彼女は、あるFPのセミナーに参加しました。セミナーを主催していたのは不動産業者で、彼らに勧めるがままに足掛け2年で都内に計3件もの投資用マンションを購入しました。6800万円と年収に対して金額の大きいローンを抱えているものの、まとまった金額の家賃収入を得られていることにひとまず満足しているといいます。

 

「それでも、何か不安をお持ちだからこうして相談にいらしているのですよね?」と尋ねると、彼女はこう答えました。

「ちょっとやり過ぎのような気もしていて……。本当にこれでいいのか、今ひとつ自信が持てないんです。セカンドオピニオンとして、今の私の資産運用について客観的な評価を聞かせてもらえませんか」。

確かに、3件もの不動産に投資しているのですから「やり過ぎかも?」と感じるのは無理もありません。毎月の家賃収入からローン返済を差し引いてもそれなりの額は残る、と言うのですが、固定資産税を差し引くと、月当たりの利益は1000円程度という計算結果になりました。

当社では、初回の面談でその方の資産運用の目標(ゴール)を明確化するようにしています。具体的な目標が最初から決まっている方はほとんどおらず、ヒアリングを通してその方の課題や理想とする暮らしを引き出し、目標を「見える化」して提示します。

初回の面談を通して、彼女のゴールは「定年の65歳まで働いて、それ以降はお金の心配なく暮らすこと」だと分かりました。そこで、まずは保有物件とローンの状況を詳しく聞いた上で、老後までの長期キャッシュフローを計算することにしました。当社の不動産鑑定士や提携している不動産業者と連携して、詳細な収支をシミュレーションしました。

シミュレーションの結果には、正直驚きました。家賃収入からローン返済や固定資産税を引くと、どの物件も収入がほとんど手元に残らない状態が25年前後続くことが分かったのです。黒字化するころには、彼女は70歳を超えています。

65歳以降、退職してもお金の心配なく暮らすのが彼女のゴールなのに、今のままでは定年を過ぎてもローン返済に追われることになります。しかも、不動産という資産があっても、希望する時期、希望通りの価格ですぐに換金できるわけではありません。何より、これから20年近くある定年までの期間は、老後資産を形成する大切な時期。ローン返済に追われて不動産以外の資産を残せないのは危険だと言わざるを得ません。

加えて、毎月の修繕積立金が相場よりかなり安く見積もられていることが気になりました。通常、マンションの修繕積立金は築年数とともに段階的に値上がりし、さらに築10、15年といった節目の年に、大規模修繕に向けてまとまった額が追加で設定されることもあります。しかし、不動産投資の現場では、投資家に利回りを高く見せるため、そうした慣例を度外視した想定で収支計画を立てている例が少なくありません。

内田さんの場合も、現状想定されている修繕積立金は明らかに安過ぎて、将来の値上げや、大規模修繕時の追加支払いが避けられそうにありません。そうなればわずかな黒字となっている毎月のキャッシュフローも、一気に赤字に転換するおそれがありました。

この結果に内田さんはショックを受けていましたが、「早い段階で課題に気付けたのですから前向きに対策を考えましょう」というこちらの提案に納得し、気持ちを切り替えてくれました。

当社では、提案の内容を担当アドバイザー1人で決定することはなく、必ず複数のアドバイザーでベストな提案を検証します。意見が分かれることも多いのですが、内田さんの場合は、投資用不動産は全部売却し、まずは過大な負債を解消。キャッシュフローを改善した上で、投資信託への積立投資を柱とする資産運用へ移行する事が最善であると全員の意見が一致しました。

ただ、彼女は「全部売ってしまうのは不動産業者の営業の人に申し訳ない。また、友達と一緒に購入したので、自分だけ全部売るのも気が引ける」と、全売却はしたくない様子でした。私たちの考えるベストな選択肢とは異なりますが、一番大切なのはご本人の意志。一部を売却するだけでも事態は十分好転するので、3件のうち2件を売却することにしました。当初300万円ほどの損失を想定していましたが、彼女にあっせんした不動産業者が金融機関の高い担保設定を理由に良い価格で買い戻してくれたことで、実質的な損失額は100万円を切りました。

ローン負担を大幅に軽減できたところで、投資信託への積立を中心とした資産運用に移行しました。iDeCo(個人型確定拠出年金)に2万3000円、つみたてNISAに約3万3000円と、税制優遇が受けられる枠を上限まで活用し、さらに特定口座で1万5000円も追加して、月々7.1万円の積立投資をスタートしました。また、シングル世帯にはオーバースペックとなっていた生命保険を解約し、ここで浮いた分も積立投資に回しました。

これだけ積み立てできれば、定年時には2000万円以上の資産になっていることが期待できます。商品は全世界の株式に投資できるインデックスファンドの中から、コストの低い「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」を選びました。

一方、預貯金がわりに持っていたという養老保険は、予定利率がそれほど高くなかったので解約し、返戻金の500万円はファンドラップに投じることにしました。まとまった金額の一括投資は、市場の変動にダイレクトにさらすわけにはいきません。当社のファンドラップは、オルタナティブ戦略を中心とした、市場インデックスと相関性の異なるファンドを組み合わせて価格変動幅を抑えることに力点を置いています。コストを抑えることも重要ですが、それ以上に安心して継続保有できる「仕組み」を採用してみてはどうかとアドバイスしました。

今は世界的な低金利で債券の利回りは低い上、債券も株と一緒に暴落することも多く、単に株と債券を組み合わせるだけでは、十分な分散効果が期待できません。金融ショックや暴落は今後も何度となく来るでしょうし、動揺することなく長く続けてもらうために、下落幅を抑える戦略の活用が必要だと判断しました。

相談後の資産構成

こうして一連の手続きをすべて終えると、彼女は晴れやかな表情でこう言いました。「老後の備えというと、不動産しか見えていなくて無理をしてしまったけれど、備える手段はいろいろあるんですね。自分に合ったやり方が分かってスッキリしました」。

内田さんのおっしゃる通り、老後の資産づくりとひと口に言っても、その人に合った手段やアプローチはさまざまです。「この商品で解決」ではなく、「解決のためにこんな手段や方法がある」といった選択肢をご提示しながら、ご自身に合った資産運用をお手伝いできるのが私たちIFAのメリットと言えると思います。また、内田さんとは、2020年2月に初回の面談をして以来、6回ほど面談を重ねていますが、まさに「コロナ禍」のただ中だったため、多くはオンライン会議システムを活用しました。こういった点も含め、さまざまな面で柔軟に、お客さまの「最適」を目指して活動していきたいと思います。

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著者

石川 裕次郎 ファイナンシャルスタンダード ファイナンシャルアドバイザー
石川 裕次郎
2007年、日興コーディアル証券(現:SMBC日興証券)入社。当初より、転勤のない地域密着型FAとして個人の資産運用アドバイスに従事。その後、保険・不動産など“証券”以外も含めた包括的な資産コンサルティングを行うべく2014年にファイナンシャルスタンダードへ入社。モットーは、“継続は力なり”。1児の父。日本証券アナリスト協会認定 プライマリー・プライベートバンカー。

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