短期と長期の2つの視点から考える、金価格上昇の背景にあるもの
金融ジャーナリスト・鈴木雅光が読み解くニュースの本質 1

短期と長期の2つの視点から考える、金価格上昇の背景にあるもの

  • 公開日:2020.07.06

Editor's Eye

新型コロナウイルスの感染拡大や米中対立の深刻化を受けて、世界的に経済の先行き不透明感が高まる中、金価格の上昇が続いています。「有事の金」とも言われるだけに、投資家のリスク回避志向を反映しているとみられるものの、理由はそれだけでもないようです。金融関連のニュースをジャーナリストの鈴木雅光氏が読み解く新連載、第1回は金価格上昇の背景を探ります。

国内外の金価格が値上がりしています。

7月1日の国内金価格は、買取価格で1グラム=6734円でした。また6月30日のニューヨーク市場で取引された国際金価格の終値は、1トロイオンス=1800ドルの大台に乗せています。ちなみに今からちょうど10年前の金価格は、国内が1グラム=3665円、ニューヨークが1トロイオンス=1242.4ドルでした。

とはいえ、金価格が騰勢を強めたのはここ2年くらいです。

終値ベースで見ると、国際金価格は2011年8月23日に1トロイオンス=1891.9ドルの高値を付けた後、2015年12月18日に1049.6ドルまで下落。その後はしばらくボックス圏で推移しましたが、2018年8月20日の1184.2ドルを直近の底値として、そこから現時点まで上昇トレンドを続けてきました。

また、国内金価格は2011年8月から2018年8月まで1グラム=4060~5300円の間で長期にわたるボックス圏で推移していたのが、2018年8月16日に直近安値の4458円をつけた後、7月1日の6734円まで上昇してきました。過去10年間の国内外金価格の推移は、以下のグラフの通りです。

なぜ金価格が値上がりしているのかについては、短期的視点と長期的視点の両方から考える必要がありそうです。

短期的視点では、米中対立による国際緊張の高まりや、先進国を中心とした金利低下と量的金融緩和、あるいは新型コロナウイルスの世界的な蔓延も、金価格の押し上げ要因と考えられます。「有事の金買い」と言われるように、金は国際緊張の高まりを材料に買われる傾向がありますし、パンデミックによる世界経済の先行き不透明感も、「有事」のひとつと見なされます。

「有事」が金買いの材料になるのは、金が「安全資産」と考えられているからです。ただ、安全資産とは言っても、金には価格変動リスクがあります。

では、何を持って「安全」なのかと言うと、金は株式や債券のように価値を表象する「紙切れ」ではなく、金という物質自体に世界共通の価値が認められているため、発行体の信用リスクがないからです。地政学的、経済的な先行き不透明感が強まる中、少しでもリスクファクターを減らそうとする投資行動が機関投資家を中心に広がり、それが金買いにつながるのです。

また、先進諸国の金利がゼロ、あるいはマイナス水準になる中で債券を保有するメリットが後退し、その代替として金を保有する動きが強まっています。さらに量的金融緩和によって市中に現金が大量に供給されれば、行き場を失った現金の一部が金市場に流れ込み、金価格の上昇につながります。

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著者

鈴木 雅光 金融ジャーナリスト
鈴木 雅光
有限会社JOYnt代表。1989年、岡三証券に入社後、公社債新聞社の記者に転じ、投資信託業界を中心に取材。1992年に金融データシステムに入社。投資信託のデータベースを駆使し、マネー雑誌などで執筆活動を展開。2004年に独立。出版プロデュースを中心に、映像コンテンツや音声コンテンツの制作に関わる。

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