アフターコロナで投資の常識に! ESG投資が最注目のワケ
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アフターコロナで投資の常識に! ESG投資が最注目のワケ

  • 公開日:2020.07.28

Editor's Eye

昨今、メディアなどでしばしば目にする「ESG投資」。ただ、ESGという言葉自体は決して新しいものではなく、2006年に国連のアナン事務総長(当時)が機関投資家に対し、ESGを投資プロセスに組み入れる「責任投資原則(PRI)」を提唱したことがきっかけで、知られるようになったと言われている。ではなぜESG要素を考慮する投資=ESG投資が“今”注目を集めているのか?ファイナンシャルプランナーの吉田祐基氏に、その背景や個人投資家へのメリットを解説してもらった。

新型コロナウイルスの感染拡大をきっかけに乱高下する相場を見て、不安感を抱いた投資家も多いかもしれない。しかし一方で、環境問題や社会問題などに対応する企業に投資を行う「ESG投資」が、注目を浴びているのはご存じだろうか。事実、ESG関連の上場投資信託(ETF)への資金流入は、2020年1~4月のコロナ禍の渦中で一気に増え、すでに2019年の1年間を50%ほど上回っているという。

米国の運用会社においては、ESG関連のETFの本数を倍増させる動きがある他、国内でもESG関連の投資信託の設定が相次いでいる。環境問題などに積極的に取り組む企業は中長期的な業績成長が期待できるとの見方もあり、すでにESG投資が浸透しつつある機関投資家はもちろん、個人投資家の間でもこれからESG投資が本格化する可能性がありそうだ。

そもそもESG投資とは、Environment(環境)・Society(社会的責任)・Governance(企業統治)への取り組みを重視した投資を指す。従来のように投資先の選定において、主に企業の売上や利益などの業績・財務情報などを参考にするだけではなく、環境や社会に配慮した経営を行っているかどうかも判断基準となる。

もともとESG投資が広まった背景としては、投資家意識の変化が挙げられる。世界各地で環境破壊や人権に関する問題が取り沙汰される中、それらの問題解決に積極的な企業への投資を増やし、そうではない企業には投資しないというスタンスに賛同する人が増えたため、機関投資家を中心に拡大していったと言われる。2008年のリーマン・ショックを経て、企業が短期的な利益を過剰に追求する姿勢への批判が高まったのも、ESG投資を後押しした。

すでに10年以上も前からESG投資という言葉は登場していたわけだが、なぜ今、注目されているのだろうか。

今回の新型コロナウイルスの発生原因ははっきり分かっていないものの、環境破壊によってもたらされた可能性も指摘されている。だからこそ、ESGの「E(環境)」に配慮した経営を行う企業に、投資家から注目されると考えられているわけだ。

さらに新型コロナウイルスの発生は、健康面の危機にもつながった。業種によって対応が難しい場合もあるが、従業員の感染リスクに配慮してリモートワークや時差出勤をすぐさま導入した企業などは、「S(社会的責任)」の要素でもある労働環境の改善に取り組む経営を行ったと言える。

アフターコロナの世界では、企業が「E」や「S」などの視点を持って経営を行っているかどうかが、投資の判断材料としてさらに定着することになりそうだ。

地球温暖化や人権問題などは、当然のことながら今日、明日で解決できる問題ではなく、長期的な対策が必要となる。問題解決に取り組む企業においても、いかに長期的に持続可能かが問われるわけだ。そのため現時点でESG投資を実践するのは、主に年金基金や保険会社など10年、20年といったスパンでの安定的な運用を前提とする機関投資家が多い。

またESGを重視した経営を行う企業は、社会的な価値が高くなることで収益も上がりやすいと言われる。個人投資家にとっても、長期保有でリターンを得られる可能性は高いと考えられる。

例えば最近だと、スターバックスが国内店舗においてプラスチック製のストローを廃止し、紙製のストロー導入を始めた。もともと同社は発展途上国でつくられたコーヒー豆を適正価格で取引するフェアトレードも実施しており、環境や社会に配慮した取り組みを積極的に行っていたが、その取り組みに賛同する人が増えればスターバックス店舗の利用者も増加し、結果的に企業の利益も向上する。そして利益の増加によって、その一部が投資家に還元されるという流れだ。

このように、個人投資家にとっても長期保有で恩恵を享受しやすいと考えられるESG投資。老後資金の確保など、長期での積立投資が前提となる資産形成とも相性が良いと言えそうだ。

では、ESG投資を個人が手軽に実践する方法はあるのだろうか? ここでは、国内における代表的なESG関連のETFを紹介したい。

厚生年金や国民年金の財源となる資金の管理・運用を行うGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)では、国内のESG指数への投資をすでに行っていることで知られている。そんなGPIFが採用する指数とは、次の3つだ。

・FTSE Blossom Japan Index

・MSCI ジャパン ESG セレクト・リーダーズ指数

・MSCI 日本株女性活躍指数(愛称は WIN)

この3つの指数への連動を目指すETFは東京証券取引所に上場しており、個人投資家でも購入できるため、ESG投資を手軽に実践できる。ETFの購入を通じてESGに配慮した経営を行う企業に投資すれば、間接的に社会貢献にもつながると言える。前述の通り、ESG関連の投資信託の設定も増えていることから、日本以外にも投資したいという人であれば、そちらを活用するのもいいだろう。

コロナ禍で、さらに注目を集めるESG投資。今後は機関投資家のみならず個人投資家の間でも、資産形成の手段として主流になっていくかもしれない。

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著者

吉田 祐基 ライター・編集者
吉田 祐基
各種金融系情報誌の編集・執筆業務を行うペロンパワークス所属。AFP/2級FP技能士。大手不動産情報サイト編集記者を経て入社。株・投資信託、保険などの編集・執筆を担当。

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