幅広いお金の課題の相談窓口として、存在感を増す新時代の保険代理店

幅広いお金の課題の相談窓口として、存在感を増す新時代の保険代理店

  • 公開日:2020.07.29

Editor's Eye

資産運用に関するアドバイスの担い手として、認知されつつあるIFA(Independent Financial Advisor:独立系ファイナンシャルアドバイザー)。最近は保険代理店がIFAを兼務するケースも増えてきている。投資家にとっても、資産運用と保険を総合的に相談できるなどメリットの多い「保険代理店兼IFA」だが、その普及に当たっては課題も少なくない。長らく保険業界に身を置き、IFAの動向にも詳しいナレッジバンクの岡田武士氏に、今後を展望してもらった。

長期、分散、積立投資。どんな入門書にも必ず書かれている投資の基本であり、こんな当たり前で簡単な投資スタイルが、ようやく本格的に普及するかもしれない。

カギは、保険代理店が握っている。

従来、顧客志向の保険代理店は家族の将来に対する要望を的確に把握し、ライフプランニングに基づく保険提案を行ってきた。このソリューションとして死亡保障商品とともに積立型保険や年金保険を販売してきたわけだが、この積立型保険の代わりに投資信託を取り扱う保険代理店が増えてきている。

新しい投資信託販売の時代が来るのかどうか? 今年が大きな分岐点になると言えるかもしれない。

保険代理店が金融商品仲介業、いわゆるIFAを兼営する例が顕著になってきた。金融商品仲介業としての登録数は全国で個人法人合わせて883(2020年5月31日現在)にのぼるが、この中で保険代理店を兼ねているのはおよそ3割と言われる。しかもこれは氷山の一角で、IFAという事業に興味を持ち、さまざまなIFAビジネスセミナーに出席している保険代理店も増加しているようだ。

なぜ彼らは、金融商品仲介業に関心を抱くのか? いくつかの保険代理店にヒアリングすると、顧客に総合的なコンサルティングを行うには保険だけでは解決できないため、投資性商品をラインナップに加えたいという意見や、保険だけでは見込み客獲得が困難であるため新規マーケット拡大のために取り扱いたいという意見が多い。特に生保での見込み客の開拓は想像以上に困難であり、投資信託という商品からのアプローチは宝の山に見える。

昨年の老後資金2000万円不足問題により、自助努力による資産形成の重要性が改めてフォーカスされたほか、今回の新型コロナウイルスによる影響でマーケットが大きく変動した一方、新規口座数も積立設定金額も大幅な増加になるなど、投資信託は顧客に対して最も情報提供しやすい商品の1つになってきた。いわば「旬」の商品であり、資産を増やしていくというアプローチは顧客にとっても素直に受け入れやすく、面談のテーブルについてくれやすいのだ。

もっとも同じ金融商品とは言え、全ての保険代理店がIFAで成功するとは限らない。実際、IFAと提携するいくつかの証券会社からは、予想外に保険代理店では売れない、あるいは売らないという話も耳にする。

理由は主に3つある。

まず1点目は、保険と投資信託の手数料の問題。商品によっては初年度手数料がおよそ10倍も違うため、保険代理店の募集人が投資信託ではなく保険の提案を優先してしまうのだ。もちろん、中長期で見れば投資信託の信託報酬も魅力的なのだが、ビジネスの性質上、どうしても短期的成果に目を奪われてしまう。

2点目が商品の難しさである。保険のような確定利回り商品と違い、投資信託は変動性でしかも最低保証がない。その上、商品内容の複雑さに加えて耳慣れない用語が羅列されていることに、募集人も拒否反応が出てしまう。保険の専門家としてプレゼンテーションしてきたのに、投資信託を提案したことによって結果的に顧客の信頼を失いかねない怖さがあるのだ。

3点目がコンプライアンスである。保険業界もここ数年、体制整備が整いコンプライアンス意識も高まってきているが、証券業界のルールとは異なっているところも多い。このあたりのわずらわしさ、怖さが、投資信託の提案に二の足を踏ませてしまうわけだ。

逆に言えば、「中長期的な目線でビジネスを考える経営スタイル」「保険と同様、プロを育成する教育研修体制」「顧客本位の業務運営原則に則った代理店意識の向上と管理体制の充実」を実践、整備することが可能な保険代理店であれば、IFAの兼営に成功する可能性が高いと思われる。

IFAとして営業活動を行うためには、個人として証券外務員資格を取得することはもちろん、金融商品仲介業者として当局への申請登録が必要である。保険代理店の場合は保険会社への登録で業務が始められるが、金融商品仲介業者の申請登録には、現在6カ月程度の期間が必要とされていることも大きなハードルとなっている。

そればかりか、最近よく話題になるのは証券会社も保険代理店との提携に慎重な姿勢を見せているということ。登録には多大な労力が必要であり、コンプライアンス面でも不安が残るところが、どうやら懸念材料となっているようだ。

こうしたところから、有望なマーケットを保有し、コンプライアンス面においても不安の少ない保険代理店しか登録できない可能性があるため、募集人の中には証券外務員の資格に限っては、すでに金融商品仲介業者の資格を持つ別の保険代理店で登録しているという話もあるようだ。

一方で顧客の立場から考えると、全ての金融商品をワンストップで相談できるということは、非常にメリットが大きい。保険は保険代理店に、資産形成はIFAに、住宅ローンは銀行にと、それぞれの専門家に相談することはもちろん間違っていないが、ともすると、部分最適な提案になっている可能性も否定できないからだ。

「金融サービス仲介業」の創設も進められている中、最近、生命保険代理店、損害保険代理店、銀行代理業、金融商品仲介業の資格を全て持ちながら、顧客に対してワンストップで最適なソリューション提案を行う代理店が現れていることにも注目したい。

保険代理店? IFA? FP? といった業態の呼び名はともあれ、本来、最も大切なのは顧客に対してトータルな視点からライフプラニング、コンサルティングを行い、最終的な提案商品として、保険、投資信託、あるいはローンなど最適な選択肢を顧客に提供していくことである。顧客が求めているのは、投資信託や保険といった最初から決まった商品ではなく、自分自身の問題解決とそれを叶えてくれる商品なのだ。

その上で、顧客のそばに常に寄り添い、いかなる環境変化においても最適なアドバイスを永続的に行う。ここまでやり切れるIFAだけが本物のIFAであり、保険代理店の新たなモデルになる可能性を秘めている。

最後に、私自身が長年、保険業界、銀行という金融機関に在籍していた立場から、愚直に「ライフプランニングに基づくコンサルティングセールス」を行っていく保険代理店こそが、投資信託販売の時代を変える最短距離にいると、大きな期待と確信を抱いている。

著者

岡田 武士 ナレッジバンク 代表取締役社長
岡田 武士
関西大学卒業。アド・エンジニアーズ・オブ・トーキョーにてコピーライターを務め、銀行、保険会社、出版社などの広告を多数担当。1994年ソニー生命入社。代理店営業、本社企画、教育、営業支援部門の統括部長などを経て、2010年には子会社の来店型ショップ「リプラ」の代表取締役に就任する。その後は出資先保険代理店の執行役員、ソニー銀行のタイアップマーケティング部長などを歴任し、ソニー銀行ではコンサルティングプラザ(銀座)、IFAプロジェクトなどの責任者も務めた。2020年ナレッジバンクを創業。
この記事は役に立ちましたか?
  • よく分かった (22)
  • 難しかった (2)

このページをシェアする

  • Lineにシェア
  • はてなブックマークにシェア

参考サイト
もっと情報をキャッチ!