日本版TAMPを掲げる大原氏が描く「理想的な金融サービスのかたち」
資産運用ビジネスを変革する、新時代の先駆者たち 2【後編】

日本資産運用基盤の大原氏が描く、これからの金融機関の在るべき姿

  • 公開日:2020.08.12

Editor's Eye

前編では日本資産運用基盤グループの大原啓一氏に、同社を設立するに至った経緯や日本の金融機関特有の非効率性などを伺った。今回は銀行、中でも特に経営環境が厳しいと言われる地域銀行が再び輝きを取り戻すためにはどうあるべきか、どんなビジネスモデルを目指すべきなのか、結果として、その先にいる顧客にどんなベネフィットがもたらされるのか、などを同社のビジネスの将来像とともに語ってもらった。

超低金利による収益力の悪化や地方経済の低迷で、特に地域銀行の経営環境は厳しい状況が続いている。最近は「どこが生き残るのか」といったネガティブな報道をされる機会も多い。しかし大原氏は、地域銀行がその強みに集中さえすれば、必ず輝きを取り戻せると強調する。

この人に聞きました

大原 啓一

日本資産運用基盤グループ 代表取締役社長

2003年東京大学法学部卒。2010年ロンドンビジネススクール金融学修士課程修了。野村資本市場研究所を経て、2004年に興銀第一ライフ・アセットマネジメント(現アセットマネジメントOne)に入社。日本・英国で主に事業・商品開発業務に従事。同社退職後、マネックスグループ等から出資を受け、2015年8月にマネックス・セゾン・バンガード投資顧問を創業。2016年1月から2017年9月まで同社代表取締役社長。2018年5月に日本資産運用基盤を創業し、代表取締役社長に就任。


「地域銀行の皆さまは、地域に根ざしながら、長年にわたって地元のお客さまとの信頼関係を築いてきました。地域の個人・法人の継続的なサポートは、地域銀行にしかできない役割だとさえ言えるかもしれません。だからこそ、例えば個人のお客さまに投資信託を『売って終わり』ではなく、保有中は定期的にサポートし続ける。販売に対して手数料を取るのではなく、そうしたサポートそのものに対価をもらうビジネスモデルに変えるべきだと私は考えています」。

投資信託をはじめとする金融商品の販売で言えば、近年はゴールベース・アプローチと呼ばれる手法が注目されている。具体的には、顧客のライフイベントに基づいた目標を設定し、そこから逆算して資産運用のやり方を徐々に変えていく手法のこと。金融機関には、顧客のライフプランを随時確認しながら、資産形成の伴走者として寄り添う姿勢が求められる。

ただ、ゴールベース・アプローチも、あくまでもひとつの手法に過ぎないと大原氏は話す。「最近の金融業界では、顧客本位の姿勢のうたい文句として『商品売りからゴールベース・アプローチへ』と言われたりもします。もっともこれは、金融商品は売って終わりではなくそこからがスタートだということを別の表現に言い換えているだけ。お客さまからしても、ゴールベース・アプローチを行っていようがいまいが、自分の大切な資産を預けているという点に変わりはありません」。

とはいえ、従来の金融機関が「商品を売る」ことで完結していたのも否めない。なぜなら投資信託などの金融商品は、販売した時点で手数料が発生するからだ。それでも投資信託であれば、信託報酬という運用期間中の手数料もあるため継続的にお金が入ってくるのも事実だが、近年の低コスト競争を受けてその額は減少の一途をたどっている。そのため売買を繰り返さないと、金融機関としてもビジネスが成り立たない仕組みになってしまっていると言っても過言ではない。

近年は金融庁の主導で「顧客本位の業務運営」という言葉が掲げられ、金融機関に営業スタイルの変革を迫ってきた。しかし大原氏によれば、もっと顧客のためになるビジネスに変えていかないといけないという意識自体は、多くの地域銀行が以前から持っていた。それでも販売手数料を得る以外のビジネスモデルが見いだせなかった以上、そうした意識を実践できなくても仕方がなかった面もあるという。

「そこで私たちは、顧客と丁寧に接し、付加価値を提供することで、預かっている金額に応じてきちんと報酬を得られる仕組みを作りましょう、と提案しているわけです。その仕組みづくりのサポートを行うことこそが、私たちのビジネスなのです」。

もっとも、いくら仕組みをつくっても、報酬に見合うだけのサービス、付加価値を提供できなければ絵に描いた餅になってしまう。「顧客に良いサービスを提供するためには、担当者のレベルアップが不可欠ですが、一方でビジネスとしてきちんと収益が得られる構造へと変えていくことも重要です。そのためにも、自前主義にこだわることなく、自分たちの強みに集中することが大切になるわけです。」。

金融機関が不得手な部分、付加価値を生み出しにくい部分をアウトソースし、自らの強みに集中する。例えば銀行であれば、金融商品の購入後の手厚いアドバイスやフォローに磨きをかける。一方で、ネット証券などの非対面チャネルであれば、効率アップに注力することで、ユーザビリティの向上やさらなる手数料の引き下げも可能になるだろう。

各金融機関の強みがより鮮明になれば、個人投資家も自分が効率性や低コストを求めているのか、それとも手厚いサポートを求めているのか、自らの目的を明確にした上で、それに応じて金融機関を選びやすくなるのは間違いない。

このように金融機関がそれぞれの強みを最大限に発揮できるよう、事業基盤の構築をサポートするのが、日本資産運用基盤グループだというわけだ。

日本資産運用基盤グループの皆さん、前列左から2番目が大原氏

「自らサービスをつくって提供するのではなく、良いサービスを提供する金融機関を100社、1000社とサポートし、結び付けていく。そうすれば間接的ではあっても、各金融機関の先にいる数百万、数千万のお客さまに良いサービスを提供できるわけです。そのほうが影響は大きいですし、なによりやりがいがありますよね」。金融機関のビジネスモデルを変えていくことで、最終的にはその先の顧客を幸福にする。それが大原氏の設定するゴールと言えるのかもしれない。

著者

Finasee編集部
金融事情・現場に精通するスタッフ陣が、目に見えない「金融」を見える化し、わかりやすく伝える記事を発信します。
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