私たちの年金、本当にもらえますか?―公的年金の真実

私たちの年金、本当にもらえますか?―公的年金の真実

  • 公開日:2020.08.14

Editor's Eye

7月初旬、「2019年度のGPIFによる年金運用、8兆円超のマイナス」という見出しがニュースで踊りました。大手証券会社で25年間にわたって個人の資産運用業務に従事し、現在は経済コラムニストとして、多くのメディアや講演を通して“公的年金の本質”を伝える大江英樹氏に、今回のニュースをどう読み解けばいいのか? から、「年金は貯蓄ではなく、保険」という立ち返るべき大原則まで解説していただきました。


公的年金については、どうも何かと印象が良くありません。この理由は今まで散々、マスコミや金融機関や野党が「年金制度はあてにならない」という間違ったインフォメーションを流し続けてきたせいなのですが、どうやら最近は少し様子が変わってきたようです。

事実、マスコミの論調は少し変わってきています。例えば7月初めにGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)が2019年度の第4四半期の運用結果を発表しました。第4四半期というのは今年の1~3月ですが、この期間の運用損は17.7兆円、そして昨年度のマイナスは8.3兆円超という結果が出ています。

でもこれは当たり前です。なぜなら日米共に株価は2月から3月にかけて、コロナショックとも言うべき大幅な下落となったからです。実際に米国のNYダウや日本の日経平均株価の下落率を見てみると20~23%となっていますから、その期間だけを取ってみれば大きくマイナスになるのは当たり前で、これはリーマンショック時にも同じようなことが起きました。ところが長期的に見ると、この18年間の間にGPIFが運用する年金積立金は50兆円以上も利益をあげて増加しているのです。

以前なら短期間での損失が出ると、マスコミが大きく報道し、「我々の年金は一体どうなるのだ!」と言って大いに不安を煽ったものですが、今回は事実だけの報道で、それほど不安を煽るものではありませんでした。

また野党もかつては年金を題材にして政府を攻撃すれば支持を得ることができるという成功体験に基づき、年金であれば何でも反対としていたものが、この5月29日に成立した「年金改革法」では共産党を除く全ての与野党が一致して賛成に回ったのです。やはり一般の人の年金に対する理解が以前に比べて進みつつあるということなのでしょう。

問題は金融機関です。いや、問題は金融機関自体がネガティブなのではなく、金融機関の営業マンが公的年金についてあまりにも知識がなさ過ぎるために、「年金なんかあてにならないから投信や保険を買いましょう」と勧めていることです。

そもそも公的年金と金融商品を一緒に並べたり比較したりすることが、根本的な間違いと言えるでしょう。なぜなら公的年金の本質は「貯蓄」ではなく「保険」だからです。「貯蓄」というのは将来の楽しみのために自分で蓄えるもの、これに対して「保険」は将来起こりうる不幸に対してみんなで備えるものだからです。ところが多くの人がこれを間違えています。確かに投資や貯蓄であれば、投下したお金がどれぐらい増えるか? が最も大切なことです。ところが保険は将来の不幸に備えるものですから、損得ではなく、どんな事態になっても安心でいられるか? ということが一番大事なのです。

公的年金は一定期間保険料を払い込んでおけば、給付は終身。すなわち死ぬまで年金をもらうことができます。したがって、早く死んでしまったら損ですが、長生きすればするほど得をします。得をするという言い方はちょっと語弊がありますが、要は想定外に長生きしても生活をまかなうための保障は死ぬまで受けられる、これが年金の本質であり、年金が安心できる最も大切なポイントなのです。

「年金はあてにならない」とか「破綻する」という人たちの根拠として、①少子高齢化が進むので制度が支えきれない、そして②年金の積立金はいずれ枯渇するという意見があります。

※オフィス・リベルタスが作成(参照元データは末尾に記載)

ところが図を見ていただくとお分かりのように、1人の就労者が何人の非就労者を養っているか? を細かくデータで調べてみると1970年から現在、そして高齢化が最も進むとされている2040年に至るまでほとんど数字は変わっていないのです。これは働く高齢者と女性が増加してきているのが最大の原因です。

また、②の年金の積立金はいずれ枯渇する、と言いますが、年金は破綻するというのは20年も30年も前から言い続けられてきたことです。ところが、枯渇するどころか30年前から比べても年金積立金は50兆円以上増加しているのです。

要は印象論でエビデンスを伴わずに不安を煽る人たちがいかに多いかということです。特に金融機関にとっては、年金が不安であればあるほど自分たちの金融商品が販売しやすくなりますから、そういう傾向になるのは当然です。でもこれは彼らが悪いのではなく、私たちが事実をきちんと調べず、自分で考えることもせず、安易に煽りに乗ってしまうことが問題なのです。

***

もちろん公的年金だけで自分のやりたいことができる、何の心配もない老後を送れるということはありませんから、自分なりに資産形成を考えておくことは大切ですが、順序としてはまず一番土台に来る「公的年金」を正しく理解しておくことは極めて重要です。その上でサラリーマンであれば自社の企業年金や退職金等の「退職給付制度」があるかどうか、もしあるならどんな制度になっているかをしっかりと理解し、その上で、自分で資産形成を図るべきです。順番を間違えてはいけません。

上記図の元になったデータはこちらからご覧になれます。

●就業者数は、総務省統計局 労働力調査より

●人口は、国立社会保障・人口問題研究所より

●2040年の就業者数予測は、労働政策研究・研修機構『労働力需給の推計―労働力需給モデル(2018年度版)による将来推計』より

●2040年の人口予測は、国立社会保障・人口問題研究所『日本の将来推計人口 (平成 29 年推計)』より

著者

大江 英樹 経済コラムニスト
大江 英樹
1級ファイナンシャルプラニング技能士、CFP®、日本証券アナリスト協会検定会員、行動経済学会会員、日本FP学会会員、上級生涯生活設計コンサルタント。大手証券会社において25年間、個人の資産運用相談に携わり、2001年10月より確定拠出年金における投資教育業務に従事した後、2012年に独立。資産運用やライフプラニング、行動経済学に関する講演・研修・執筆活動を行っている。
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