ドラマ『半沢直樹』で注目を浴びる証券会社、その実態は?

『半沢直樹』で注目される証券会社と銀行の“人に言えない実態”とは?

  • 公開日:2020.08.24

Editor's Eye

7年前の前作と同様、毎週高視聴率を記録している話題のドラマ『半沢直樹』。ドラマの前半では、銀行から子会社の証券会社へ出向になった主人公・半沢がIT業界の買収劇に携わる中、親会社の銀行と全面対立する様子がスリリングに描かれています。劇中に登場する強引なマネーゲームや情報戦に「実際の証券会社ではどうなの?」と、その実態が気になった方も少なくないのではないでしょうか。そこで、主人公のように大手金融グループの一角をなす証券会社で、個人投資家へのコンサルティング業務を行っていたキャリアを持つ、IFA(独立系ファイナンシャルアドバイザー)法人アンバー・アセット・マネジメントの石原 駿さんに当時のことを振り返っていただきました。

 

この人に聞きました

石原駿

石原 駿(いしはら しゅん)

アンバー・アセット・マネジメント コンサルタント

大学卒業後に大手証券へ入社、富裕層向けの資産コンサルタントとして活躍。その後、お客さまのためのコンサルティング、という理念を実現するべく、欧米では当たり前となっている、独立金融アドバイザリー会社のアンバー・アセット・マネジメントに加わる。資産運用でお困りの個人投資家へ、独立・中立的な立場からアドバイザリーサービスを提供している。


皆様はじめまして。アンバー・アセット・マネジメントの石原です。私は前職で、某証券会社(以下、A証券)に勤務し、関東2店舗、四国1店舗の計3店舗を経験しました。特にそのうちの1店舗はグループ(以下、Bフィナンシャルグループ)が掲げている“銀証連携※1”のモデル店舗であったため、銀行員と連絡を密に取りながら富裕層のコンサルをしていました。
※1…銀行と証券会社による業務・サービスの連携のこと。

最近、ドラマ『半沢直樹』がヒットしています。主人公・半沢が東京中央銀行から東京セントラル証券へ出向したあとの物語です。そんな証券会社の実態はどうなっているのか。リテール分野ではありますが、私の経験をもとにお話ししたいと思います。

Bフィナンシャルグループが掲げている「銀証連携」とは、リテール部門においては資産運用に興味がある銀行のお客様をA証券に紹介し、運用商品の提案をA証券の担当者が行うというのが中心的でした。銀行のお客様にA証券の口座を開設していただき、Bフィナンシャルグループのお客様になっていただくことで、グループとして総合的な金融サービスを提供することを目的としています。銀行から証券へ紹介する際はお客様に情報共有同意書をご記入いただき、銀行と証券の担当者間でお客様情報を共有しながらコンサルティングをします。

ドラマ『半沢直樹』では銀行と証券は敵対していますが、個人営業部門であるリテールはむしろ連携し、ともに業務を進めています。

ここまでのお話だと健全な業務運営がなされているように思えるかもしれませんが、実態は“敵対”こそないものの、会社のことしか考えていない、顧客をないがしろにした営業をしていたと言わざるをえません。

例えば商品提案の仕方です。銀行から紹介されるお客様のほとんどは、銀行員からA証券の『個人向け国債キャンペーン』を提案されて、A証券の担当者の話を聞きに来ます。しかし、実際にA証券が提案するのは外国債券や仕組債、投資信託といった国債に比べるとリスクの高い商品です。

なぜ、銀行員と証券マンは元々の顧客意向に沿わない商品を結託して提案するのでしょうか。

それは、紹介客であげた手数料は銀行員と証券マン両方の成績になるからです。特に仕組債や新興国通貨建ての債券は手数料率が非常に高いのです。例えば、新興国債券ならば購入時手数料8%、1000万円新興国債券を購入してもらえると80万円程度手数料が計上されます。80万円の手数料とは、投信に置き換えて考えてみると、その投信の購入時手数料3.3%で計算した場合、2400万円程度の投信を買うときと同じ金額です。同じ1000万円の販売であれば、手数料率が高い商品を提案したい……というのが、販売側の本音です。そのため、ときには銀行員を面談時に同席させ、一緒に提案をしていました。そうすると、お客様は「銀行の担当者もいいと言うなら」と、半ば銀行に対する信用で買う方も多かったのです。

その後どうなったかと言いますと、ろくな説明もせず、担当者によっては元本保証とも捉えられるような曖昧な説明をしていたためクレームの嵐でした。また、リスクの高い商品を提案するためには口座開設時、リスク許容度についてうかがう質問項目に対し、安全性と収益性に配慮した「バランス重視」、「収益性重視」にチェックをしていただく必要があるのですが、「安定重視」の意向の方にもそれらにチェックを入れてもらうこともしばしばでした。なぜなら、「安定重視」だとリスクの高い商品を提案できないためです。

私自身、A証券もグループ会社の銀行もお客様のためではなく、会社のことしか考えていない実態に対し、非常に疑問やジレンマを感じていました。

先述の新興国債券や仕組債関連のクレームに関しては、お客様がどんなにひどい損を被っていても「必要事項は説明しています」の一点張りでクレームに応じません。私自身は、銀行・証券からそういった商品を提案されなければ大損することもなかったのにと申し訳ない気持ちでいっぱいでしたが、損失補填ができるわけでもありませんし、「すいません、申し訳ございません」しか言えません。お客様それぞれ運用で叶えたい夢や人生があるのに金融機関の都合でそれをぶち壊す、それが果たして正しいだろうかと思うようになりました。

そんな日々の中、インターネットの記事でIFAの存在を知りました。欧米ではすでに普及しており、独立して公平中立な立場からアドバイスできるというのは、今の日本に必要だと強く思い、転職活動をしました。今では「家族や友人に紹介できるサービスのみを提供する」をモットーに、日々、運用にお悩みをお持ちの方のお手伝いをしています。証券会社時代は、商品を買っていただいたあとに後ろめたい気持ちが残ることが多かったですが、今では全くありません。ドラマ『半沢直樹』で主人公が言っていた、「仕事は客のためにするもの。ひいては世の中のためにするもの※2」という言葉のように、お客様と正々堂々向き合えているからです。
※2…ドラマの第四話に登場したセリフ。

***

今回ご紹介した事例は、あくまで私が勤務していた当時の話です。今はどうなっているかはわかりませんが、今後、皆さんが納得感のある資産運用をしていただくうえでの参考になれば幸いです。

著者

Finasee編集部
金融事情・現場に精通するスタッフ陣が、目に見えない「金融」を見える化し、わかりやすく伝える記事を発信します。
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