老後の生活費の悩みにIFAが送った「楽しみを諦めない」アドバイス
“お金のかかりつけ医” IFAのアドバイス事例

老後の生活費の悩みにIFAが送った「楽しみを諦めない」アドバイス

  • 公開日:2020.08.21

Editor's Eye

銀行や証券会社等の金融機関と比べ、長期的な目線でさまざまな資産の相談に応じると言われているIFA(独立系ファイナンシャルアドバイザー)ですが、彼らは相談者に対し実際にどんなアドバイスをしているのでしょうか。印象深かった相談内容をIFAに振り返って語ってもらうシリーズ連載第5回では、資産運用の定石である「長期・分散」に疑問を投げかけ、独自の投資理論でアドバイスを行うIFA法人、マネーブレインの代表を務める白石定之さんにお聞きしました。

今回は老後の生活費と運用について相談に来られた福島和雄さん(仮名、61)の例をご紹介します。

福島さんは59歳と定年間近だった2年前、フリーペーパーに掲載されていた当社の「50代から70代のための資産運用セミナー」の広告を見て、セミナーに参加されました。定年を翌年に控え退職金の運用や老後の生活費についてお悩みがあるとのことで、個別相談を希望されたのを機にお付き合いが始まりました。

相談者:
福島 和雄さん(仮名、61)会社員

勤務先は上場企業で、年収は手取りで1000万円と高いのですが、月の生活費が55万円かかっていました。60歳で定年した後も、希望すれば継続雇用で働き続けることができますが、収入は350万円と3分の1になってしまうそうで、働き続けても毎月30万円の赤字が出てしまう計算です。

 

自身で積極的に資産運用をした経験はありませんでしたが、勤務先の退職金として企業型確定拠出年金(企業型DC)で、国際分散投資のできる投資信託で長年積み立て投資を続けており、残高が3500万円にまで積み上がっていました。定年時に現金化して受け取ってもいいし、そのまま運用を続けることもできるので、これをどうしたらよいかについても、アドバイスを求められました。

一般的なファイナンシャルプランナーや金融機関の営業担当者であれば、「定年後に備えて家計をスリム化しましょう」だとか、「多額の資産を預貯金に眠らせておくのはもったいない」といったアドバイスをするかもしれません。しかし私は、支出が多いことが必ずしも悪いと思いませんし、一律で投資を推奨する姿勢にも否定的です。

資産が少ない人であれば、一刻も早く支出を減らして収支を改善する必要がありますが、資産を持つ人が第二の人生を謳歌しようというときに節約を強いるのはナンセンスです。お子さんに十分な財産を残したいという希望があるなら別ですが、そうでなければリタイア後の人生を充実させるほうがずっと価値あるお金の使い方ではないでしょうか。

ただ、老後は現役時代ほどの労働収入が期待できませんから、今あるお金を守ることは大切です。こうしたニーズがある人にとって、「減らない」という預貯金のメリットは大きく、決して消極的な選択肢ではありません。リスクを取って増やすことも重要ですが、あくまである程度安心できる金額を預貯金に確保したうえで挑戦するべきだと考えています。

福島さんは高収入の割に預貯金額は1000万円と少な目ですが、代わりに企業型確定拠出年金や自宅という形で資産を形成しています。自宅は時価評価が1億円と高額で、広さも100平方メートル超と立派ですが、同居している一人息子であるご長男はいずれ独立する可能性もあります。当面は退職金の一部を運用して利益を積み上げながら預貯金を取り崩し、不足しそうなら自宅を売却してコンパクトな家に住み替えることで差額を現金化できます。

福島さんに自宅を売却する可能性についてお話したところ、受け入れられるということだったので、生活費を切り詰める必要はないと判断しました。

もうこれまでと同じ生活はできないのか、自分の預貯金額は少なすぎるのか、と不安に思っていた福島さんでしたが、第二の人生もこれまでと同じように楽しめると分かると安心したご様子でした。

3500万円に達していた企業型DCについては、現金化して一括で受け取ることを提案しました。相談を受けた2018年末ごろは世界的に景気が良く、株価にも過熱感があったので売り時と判断したのです。受け取った額の約半分は預貯金に回し、残りを運用の待機資金としました。

一般的に、資産運用は「長期・分散」が王道と言われており、福島さんの企業型DCもこのスタイルで利益をあげてきました。しかし、これはリスクを取れる若い人にはよくても、50代以上の方にとっては最適とは言えないというのが私の考えです。

というのも、こうしたオーソドックスな投資では、数年に1度はやってくる暴落局面で資産が大きく減ってしまいます。「我慢して長期保有すれば、いずれ戻ります」とアドバイスするのは簡単ですが、この年代では耐えられない人も多いのです。かといって、大きく減らないようリスクを抑えればリターンが犠牲になります。老後の生活にゆとりを生むための運用なのに、リターンを抑えてしまっては意味がありません。

そこで私が提案するのは、「非・分散×非・長期」の投資手法です。日経平均株価に連動する2本のETF(上場投資信託)を使って、マーケットの予測ではなく現状分析に基づいて投資比率を変えていく方法です。投資判断は業績から見た「割安・割高」と、投資家心理から見た「悲観・楽観」の2つの独自の指標から決めています。

売買ルールは、「割安・割高」「悲観・楽観」の組み合わせによって決めています。具体的には「割安」「悲観」になればなるほど買いポジション(日経平均株価が上昇すると利益になるETF)を増やし、「割高」「楽観」になればなるほど売りポジション(日経平均株価が下落すると利益になるETF)を増やします。詳細は企業秘密なのですが、トレンドが加速すればポジションを段階的に増やしていき、反転して利益確定のシグナルが出たら売却していきます。

短期的に大きな利益をあげられるものではなく、含み損を抱える時期もありますが、小さな確定利益をコツコツと積み上げられる投資法で、当社独自のアルゴリズムに基づいて機械的に投資判断をします。

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著者

白石 定之 マネーブレイン 代表取締役
白石 定之
中学3年から証券投資を始める。慶應義塾大学理工学部卒業後、日立製作所を経て、野村證券で富裕層中心に資産運用アドバイスを行う。IFA(独立系ファイナンシャルアドバイザー)として2012年に独立。“一喜一憂”をキーワードに「心と運用スタンスの両立が成功の鍵」と呼びかけ、共感を得ている。今後の資産運用・資産形成に役立つセミナーを随時開催中。

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