コロナショックの教訓から学ぶ、相場急落で損しない投資家になる方法

コロナショックの教訓から学ぶ、相場急落で損しない投資家になる方法

  • 公開日:2020.08.18

Editor's Eye

コロナショックで株式市場は世界的に急落したものの、その後の回復も早かったのが今回の危機の特徴でした。現在も上昇は続いているため、「あのとき投資しておけば……」あるいは「損切りなどしなければよかった」と後悔している人は多いかもしれません。相場の下落時こそ投資のチャンスと理屈では分かっていても、なかなか行動に移せない。そんな投資家の心理を、行動ファイナンスに詳しいAB未来総研の後藤順一郎所長が分析します。

2020年3月の新型コロナウイルスの感染拡大をきっかけとした株式市場の大暴落を目の当たりにし、多くの投資家は恐怖からポジションを解消、つまり損切りをしてしまいました。特に米国や欧州では、リスク許容度の低い投資家の多くがインカム狙いで投資していた社債ファンドを、雪崩を打って売却したため、3月は過去最大級の大きな資金流出が発生しました。

一方、この機を絶好の機会と捉えて投資を始めた人や追加投資をした人もいました。日本でも債券ファンドには資金流出が見られましたが、株式ファンドには大きな資金流入があり、投資信託市場全体では資金流入となりましたから、投資機会と捉えた投資家が多かったのかもしれません。

今回の世界株式の下落は、1965年以降の暴落の中で過去最速でしたが、その後の回復も極めて早かったため、結果としては下がったときに歯を食いしばって投資し続けた投資家や追加投資をした投資家が報われました。逆に損切りをした投資家や追加投資できなかった投資家には、地団駄を踏む思いの方も多かったのではないでしょうか。

それにしても不可解ではありませんか? 過去の多くの危機では踏ん張って投資し続けている人や追加投資をした人が今回と同様に報われており、そのような結果は様々なメディアで公表されています。にもかかわらず、「今回は過去の危機とは違う。もっとひどくなるかもしれない」と考え、損切りしてしまったり、追加投資ができなかったりした人がやはり多かったのです。

つまり、過去の分析から合理的に判断することができず、目先の不安や恐怖にとらわれてしまい、感情的に非合理的な投資行動をしてしまったのだと思われます。このような非合理的な投資行動は、投資経験によらず多くの投資家に見られる特徴であるため、経験豊富な投資家からも「今回はもっと下がると思って早めに売ってしまった」「なかなか追加投資に踏み切れなかった」との声があがっているようです。

では、人間は、なぜそのような非合理的な投資行動をしてしまうのでしょうか? なぜなら人間には、合理的に考えるのを妨げるバイアスが存在しているからです。私は、特に以下の3つのバイアスが、不適切な投資行動を引き起こしていると考えています。

1つ目のバイアスは損失回避です。人間は同じ額の利益と損失があったときに、利益からくる喜びよりも損失からの苦しみのほうを2倍以上大きく感じると言われています(プロスペクト理論)。ですから、たとえこのまま投資し続ければ、利益があがると思っていたとしても、「市場がさらに下落して損失が拡大したらどうしよう」と考えてしまい、売却してしまうのです。投資家の合理的な一面は、「割安になったので追加投資をしよう」と思っているのですが、なかなか行動に結びつかないのはこのバイアスが影響していると思われます。

2つ目のバイアスは身近にある情報から判断してしまう特性(利用可能性ヒューリスティック)です。今回のパンデミックのような危機時には、ニュースのほとんどが「感染者数や死亡者数が激増している」「世界各国でロックダウンが進んでいる」などの悲観的なものになりがちです。当然、ニュースは人々の目にとまる必要がありますから、ショッキングかつネガティブなニュースを報じることが多くなります(回復者数などのポジティブなニュースはまれ)。結果として、身近に存在する情報のほとんどが悲観的なニュースになり、それにさらされた投資家は状況がもっと悪くなるかもしれないと考えるようになり、損切りしてしまったり、追加投資を躊躇したりしてしまうのです。

3つ目のバイアスはバンドワゴン効果と呼ばれるものです。これは周りの行動や意見を見聞きし、それが正しいと短絡的に判断し、同様の行動をとってしまうバイアスです。簡単に言えば、「友人Xも友人Yも損切りしたんだって。私もしなくては」という思考方法です。当たり前ですが、周り人たちもバイアスにより感情的に投資行動をしてしまっているため、その意見を参考にしたからといって合理的な投資行動がとれるわけではないのです。

暴落時の不適切な投資行動を説明できるバイアスは他にもあると思いますが、私はこの3つが大きな影響があると考えています。特に、SNSが普及した現代社会においては、利用可能性ヒューリスティックとバンドワゴン効果の影響が、以前よりも大きくなっているように思います。

ここまで投資家が危機時に不適切な投資行動をしてしまう背景について説明しました。経験豊富な投資家ならば、このようなバイアスに陥らないのではないか、と思うかもしれませんが、残念ながら経験豊富な投資家、もっと言えばプロのファンドマネジャーであっても人間である以上、少なからずバイアスの影響を受けてしまいます。では、どうしたらよいのでしょうか。

解決策はとても簡単で、投資に人間の判断を入れないことです。つまり、積立投資やリバランスなどの仕組みやルールにのっとって粛々と運用すればよいのです。「なんだ、簡単ではないか」と思うかもしれませんが、実はルールを導入することよりも守ることのほうが大変です。実際、今回の危機に際して、せっかく事前に定めていたリバランス・ルールを一時的に停止して、株式が下がったところで買い増ししなかった企業年金もあるようです。さらに下落をするのではないか、との恐怖にとらわれて買い増ししなかったのですが、その後、市場が急回復しましたから、おそらく説明に窮する事態に陥っていることでしょう。

このような状況に陥らないためにも、ルールを導入するだけでなく、それを守り切ることが何よりも大切なのです。自分自身を律することに自信がない人は、このルールを守るためにアドバイザーを活用するのも一案です。最近、徐々に存在感を高めているIFA(Independent Financial Advisor:独立系ファイナンシャルアドバイザー)などを活用してもよいでしょう。

ただし、市場のタイミングを見て投資を勧めてくるアドバイザーは、そのアドバイザー自身もバイアスのかかった判断をしている可能性があり、バイアスから逃れるという点では解決策になりません。上述のルールを愚直に守ることをサポートしてくれるアドバイザーを活用することが、バイアスへの解決策になると考えます。

著者

後藤 順一郎 アライアンス・バーンスタイン AB未来総研所長
後藤 順一郎
慶應義塾大学理工学部 非常勤講師、投資信託協会 客員研究員。1997年慶應義塾大学理工学部卒業。富士銀行(現みずほ銀行)に入社し、法人向け融資業務なに従事。2000年からはみずほ総合研究所で、主として企業年金向けの資産運用/年金制度設計コンサルティングに携わる。06年一橋大学大学院国際企業戦略研究科にてMBA取得。同年4月アライアンス・バーンスタインに入社。現在はマルチアセット戦略のプロダクト担当。また、DC・NISAビジネスの推進及びAB未来総研にて顧客向けソリューション/リサーチ業務も兼務している。共著書に『年金基金の資産運用-最新の手法と課題のガイドブック-』(東洋経済新報社)などがある。
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