似ているようで異なる「SDGs」と「ESG」―両者の違いと関係
ニュースで目にする金融用語の深層 3

似ているようで異なる「SDGs」と「ESG」―両者の違いと関係

  • 公開日:2020.08.19

Editor's Eye

昨今ニュースや新聞だけではなく、企業のコーポレートサイトでも頻繁に見かける「SDGs」。この単語を冠した投資信託も続々登場している。ただ、「SDGs」を語るときにセットでよく目にする「持続可能な社会」「環境」等の言葉からも、「ESG」との違いがいまいち不明瞭な人も多いだろう。そこで、ファイナンシャルプランナーの吉田祐基氏に両者の違いと関係から、さらに私たち個人投資家がSDGsに貢献するために、どんなことができるかまでを解説してもらった。

2020年7月、ニューヨーク証券取引所にオンライン保険会社のレモネードが上場した。ソフトバンクグループの出資先として知られる同社だか、株式会社にもかかわらず株主のために利益を稼ぐことだけに目を向けないと目録見書内で宣言し、上場したことで現地の注目を浴びた。それでも初値は50.06ドルと公開価格(29ドル)を7割も上回り、株価はその後70ドル前後と好調に推移し、投資家から支持されていることが分かる。

実はレモネードは一般的な株式会社ではなく、株主利益だけでなく社会や環境に関連する「公共の利益」の実現も明示した「パブリック・ベネフィット・コーポレーション(PBC)」という特殊な会社形態だ。日本ではあまり馴染みのないPBCだが、アメリカでは一部の州で法的に認められている。レモネードでは加入者が負担する保険料から一定の手数料を取り、必要な保険金の支払いを行った上で、余ったお金は顧客が指定する慈善団体に寄付する。

こうした企業が受け入れられる背景には、前回紹介した「ESG」だけでなく、近年よく聞くようになった「SDGs(エスディージーズ)」の視点を盛り込む投資家意識の変化がある。

SDGsは2015年9月、国連で採択された「持続可能な開発目標」を指す。内容は貧困や雇用、気候変動など環境・社会問題を解決するための17の目標と、さらに各目標を具体的な行動に落とし込んだ169のターゲットで構成される。2017年には、タレントのピコ太郎が外務省からSDGs推進大使に任命され、SDGs版の「PPAP(ペンパイナッポーアッポーペン)」の動画を作成して話題にもなった。

SDGsは特定の人もしくは企業のみが達成すべき目標ではなく、対象を地球上に住む全ての人と定義している。

個人ができる取り組みとしては、例えば「エコバッグやマイボトルを持ち歩く」「節電や節水を心がける」などが思いつく。環境負荷の高いプラスチック製の買い物袋の利用を制限しようと、2020年7月1日から小売店で義務化されたレジ袋有料化も、SDGsに関連した取り組みの1つと言えるだろう。

企業でもSDGsへの意識は高まっており、2020年6月に帝国データバンクが行った調査によると、4社に1社がSDGsを意識した企業活動に取り組んでいるという。同調査では、SDGsの達成に向けて取り組みたいテーマとして「顧客・人財確保(33.8%)」や「適正な労働時間・環境・内容(30.0%)」など、人に配慮した活動が多い結果となっている。SDGsへの対応は、企業の社会的評価を向上させる手段としても必要になりそうだ。

さらに、SDGsの視点を企業評価に加える機関投資家も増えている。例えばオランダの公務員年金基金ABPは、2025年までに運用資産の2割をSDGsに貢献する企業に投資する目標を掲げている。また国内でも日本生命保険はSDGsに配慮した経営を行うだけでなく、ニッセイアセットマネジメントが運用するSDGs 社債ファンドへの投資などを通じて、持続可能な開発目標の達成を後押しする。

Environment(環境)・Society(社会的責任)・Governance(企業統治)に配慮した企業活動に注目するESGも、SDGsと同様に、人類の共通課題を解決するための存在である国連から生まれた言葉だ。親が一緒のため、根本の考え方は近い部分がある。

ただあえて両者の違いを表すとするならば、前述した通りSDGsは「目標」であり、ESGはその目標を達成するために企業が取り組む「手段」だと言える。例えば企業がプラスチック製のストローを廃止し、紙製のストローを導入するなどESGを重視した活動を行うことで、SDGsの13番目の目標「気候変動に具体的な対策を」の達成に貢献すると言える。

またSDGsが投資家に限らず広い人々を対象とするのに対して、ESGは投資対象の文脈で使われることが多い。そのためSDGs投資とは言わないが「ESG投資」とは呼ばれる。企業はESGに配慮した経営を行うことで、投資家に支持されやすくなる側面がある。そして投資家は、ESGの視点を持って経営を行う企業に投資することで、間接的にSDGsの達成にも貢献できると言える。

一般の個人投資家がSDGsへの貢献度が高い企業に投資を行う方法としては、関連する投資信託を購入する方法などが挙げられる。

例えば、SDGsをファンド名に冠した主な投資信託を挙げると、「グローバルSDGs株式ファンド」(三井住友DSアセットマネジメント)「世界SDGsハイインカム・ファンド」(同)「ニッセイ SDGsジャパンセレクト」(ニッセイアセットマネジメント)「ニッセイ SDGsグローバルセレクト」(同)などがある。その他、ESG関連のファンドも複数設定されているが、今年7月に設定された「グローバル ESGハイクオリティ成長株式ファンド」は、約3830億円という大きな金額を集めて運用が開始されたことが話題となった。

さらに投資信託以外にも、ソーシャルレンディングサービスの「クラウドクレジット」などを利用すれば、資産運用と社会貢献を紐付けることができる。例えば同サービスで提供している「社会インパクト重視型パッケージ」は、メキシコ女性企業支援ファンドやアフリカ未電化地域支援ファンドなど、社会貢献に関連した複数のファンドが1つのパッケージで提供されている。

今回紹介したSDGsは金融の世界だけに限った話ではなく、人類全体が解決すべき目標だと言える。その目標に少しでも個人が貢献するためには日頃の節電や節水、マイバック持参といった行動に限らず、投資という手段があることも知っておきたい。

著者

吉田 祐基 ライター・編集者
吉田 祐基
各種金融系情報誌の編集・執筆業務を行うペロンパワークス所属。AFP/2級FP技能士。大手不動産情報サイト編集記者を経て入社。株・投資信託、保険などの編集・執筆を担当。
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