永濱利廣氏に聞く、“ウィズコロナ”時代の有望テーマと投資戦略

永濱利廣氏に聞く、“ウィズコロナ”時代の有望テーマと投資戦略

  • 公開日:2020.08.20

Editor's Eye

2020年の上半期は、新型コロナウイルス感染拡大と長期化で生活様式が劇的に変化した半年となった。感染収束の目途はいまだ見えず、実体経済が停滞する中で、マーケットはどう推移するのか。第一生命経済研究所の首席エコノミストである永濱利廣氏に、今後の相場環境とコロナ禍の中でも成長が期待できる領域、投資テーマなどを聞いた。

――新型コロナウイルスの感染拡大により、経済のみならず人々のライフスタイルも一変しました。足元の日本経済をどうみていますか。

経済活動の再開により、4月と5月を景気の底として、いったん底打ちしました。6月から回復局面に入っていると考えられますが、これは上向きか下向きかという方向感にすぎません。絶対的な水準は依然として低く、水面下にある状態です。感染拡大の防止と経済活動はトレードオフですから、当面は需要不足の状況が続くと考えるのが自然で、長ければ2、3年継続するとみています。

永濱 利廣 氏

――ければ年内にも治療薬やワクチンが実用化されるといった報道もありますが、それだけでは浮上できないということでしょうか。

治療薬やワクチンが普及すれば改善はしますが、一気にコロナ前の水準まで回復するのは難しいと思います。

リーマン・ショックとその後の日本経済を振り返ってみても、GDP成長率が危機前の水準を回復するのに6年を要しています。しかも、その回復で大きな成長を遂げたわけではなく、あくまで水面下での回復です。アベノミクスでようやく浮上できそうに思われましたが、2019年の消費増税でブレーキがかかり、新型コロナウイルスによって押し戻される格好となってしまいました。

当面は金利が上昇する要素も見当たらず、他の先進国でも低成長、低インフレ、低金利が続く「日本化」が心配されます。平成という「失われた30年」は主に需要不足によってもたらされたわけですが、コロナ禍でこれが「失われた40年、50年」に長期化する恐れすらあります。

ただ、アベノミクスの成果が全て帳消しになってしまったわけではありません。アベノミクス以前は海外の株式市場が回復しても日本株だけが取り残される「ジャパンパッシング」の状態が続いていましたが、近年の日本株は米国の株式市場に連動する傾向が強まりました。外国人投資家に日本株を持たざるリスクを意識させたことは大きな成果であり、日本の投資家は今も恩恵を受け続けていると言えます。

――なかなか厳しい見通しですが、一方で「コロナショック」後の株式市場は堅調です。

実体経済が大きく痛んでいる半面、株価は底堅い展開が続いているのは確かです。世界的な低金利を背景に、行き場を失ったマネーが株式市場に向かっていたところで、経済活動再開による期待が織り込まれているのでしょう。

しかし、7月からの感染再拡大で日本経済の回復は予想よりも遅れることが濃厚で、株式市場も秋にかけて調整局面入りすると予想しています。さすがに3月のような激しいショックにまではならないと思いますが、1割程度の下落は覚悟しておく必要があるかもしれません。

それでも、すでにお話しした通り、日本株は国内景気よりも米国株の影響を強く受けるようになっていますから、たとえ景気が悪くても、米国株次第で早期の反転もあり得ます。

――極端に言えば、米国頼みというわけですね。

米国は世界で最も大胆な金融財政政策を実施しているため、景気回復も早いと考えられるものの、2つのリスクがあります。1つは米中摩擦のさらなる激化で、もう1つは11月の大統領選です。

短期的にポジティブなのは、トランプ再選と上院・下院ともに共和党優勢のねじれのない議会でしょう。しかしそうなると、米中対立はいっそう激化する可能性も高まります。それに対して緊縮派のバイデン氏が当選しても、長期的には財政赤字を食い止めてプラスになる可能性もある。バイデン氏は環太平洋経済連携協定(TPP)への復帰も示唆していますから、そうなればマーケットにもポジティブです。

また、米国の景気が正常化すると、金融緩和の出口が議論されることになります。金利の先高観が意識されると株式市場にはリスクであり、当然ながら日本の株式市場も影響を受けるので警戒が必要です。

――行き不透明な状況は続くのでしょうが、ウィズコロナの投資テーマとして、有望な分野と警戒すべき分野を教えてください。

生活様式が大きく変わることは避けられないため、企業業績も新しいライフスタイルに沿っているかどうかで明暗が分かれることになるでしょう。

まず、接触や移動を伴うモノやサービスは厳しい状況です。政府のGoToトラベルキャンペーンは東京除外によって期待できる経済効果が腰折れしてしまったこともあり、観光や旅行、外食、鉄道・航空なども厳しい状況が続くでしょう。旅行や観光需要はコロナの脅威がなくなれば回復できるでしょうが、コロナ前に戻れない領域も多くあります。例えば、リモートワークやオンライン会議が浸透すればオフィス需要や出張もコロナ前の水準に戻るのは難しく、終息後も不動産やオフィスREIT、航空、運輸などは楽観視できません。

しかし、接触や移動を伴っても、付加価値の高いものはむしろ需要が増える可能性もあります。コロナ前から「万人受け」を狙ったものが減速する一方で、特定の層に強烈に刺さるアプローチが成功する傾向は見られていましたが、この動きは加速すると考えられます。

一方で、新しい生活様式にフィットするウィズコロナの領域は、成長が期待できるでしょう。これらは大きく4つの柱に分けられると考えています。

第1に、コロナウイルスに直接対応する領域です。治療薬やワクチンのほか、検査キット、衛生などの分野が中心となります。

第2が、新しい働き方とライフスタイルに関する領域です。在宅時間が増えることによる食品や生活関連の小売、冷凍食品やインスタント食品、ゲーム、調理家電、エクササイズ、ECとそれに伴う物流や倉庫、テイクアウトが増えることによる食品トレーやパックなどの分野があります。

第3がオンライン化です。テレワーク、オンライン教育、オンライン診療、パソコンと周辺機器、動画配信などが有望です。

最後はオンライン化を支えるデジタルインフラです。ICT、クラウド、光ファイバー、データセンター、5G、サイバーセキュリティーなどに加え、これらの技術を支える半導体も期待できます。

――最後に今後の投資戦略を考える上で、注意点などがあれば伺えますか。

需要や企業業績は二極化していく可能性が高い上、市場全体で見ればコロナ禍で縮小する産業のウエートが小さくないため、投資対象を厳しく選別する必要が高まるでしょう。先ほどの成長が期待できる領域の企業の多くは、業績が安定して伸びていくと考えられるものの、足元の株価はやや買われ過ぎている感もあるので、投資タイミングは慎重に見極めたいところです。その意味では、市場全体に投資するインデックスファンドよりも、ファンドマネジャーが投資先を厳選するアクティブファンドが注目されるのではないでしょうか。

家計も厳しい状況が続くかもしれません。短期的には給付金の恩恵もあるでしょうが、賃金にマイナス影響が表れるのは来年度の春闘後なので、最悪期は1年先ということになります。また、たとえ経済が回復しても、拙速な増税案が浮上して台無しになる可能性も否定できません。

ただ、それでも日本に1000兆円もの現預金が眠っている事実に変わりはありません。マネーのグローバル化が進み、モノ言う株主の登場もあって日本企業は配当などの株主還元の強化を迫られています。その一方で賃金は伸びず、経済成長の恩恵は労働収入だけでは得られにくくなっている。株などのリスク資産を保有しないと豊かになるのが難しい時代が来ていることは、改めて強調してよいと思っています。

著者

Finasee編集部
金融事情・現場に精通するスタッフ陣が、目に見えない「金融」を見える化し、わかりやすく伝える記事を発信します。
この記事は役に立ちましたか?
  • よく分かった (6)
  • 難しかった (0)

このページをシェアする

  • Lineにシェア
  • はてなブックマークにシェア

あわせて読みたいRecommend

参考サイト
もっと情報をキャッチ!

読者アンケートでAmazonギフト券500円分プレゼント