ロボアドの仕組みや主要サービス、賢い活用術
今、静かなブームを起こしているロボアドの魅力 後編

ロボアドの手数料は高いのか? 運用実績から賢い付き合い方を提案

  • 公開日:2020.08.27

Editor's Eye

登場以来ロボットアドバイザーをウォッチし、書籍も執筆する松岡賢治氏に前編では、そもそも「ロボットアドバイザーとは?」から解説してもらった。後編では、私たち個人投資家は「どうロボットアドバイザーと付き合えばいいか」をテーマに、主要ブランドのパフォーマンスから、手数料にまつわる見解まで語ってもらった。

後編では、オススメのロボアドバイザー(以下、ロボアド)や、サービスの上手な活用法について解説をしていこう。また、なにかと批判されやすい自動運用型の手数料について、これまでの運用実績などを踏まえて、「ロボアドの手数料は高いのか、安いのか?」について見解を述べてみたい。

現在、国内の自動運用型のロボアドは10に満たないが、その内、預かり資産が比較的大きく、継続して運用実績を公表しているサービスは4つある。「WealthNavi(ウェルスナビ)」、「THEO(テオ)」、「ON COMPASS(オン コンパス)」、「楽ラップ」だ。以下、サイト上に記載されている直近の運用実績と手数料を挙げてみる。

  • ※運用実績は、各社の期待リターン及び想定リスクがもっとも高いポートフォリオの実績値。運用期間中の円建ての騰落率であり、信託報酬などのコストを控除したもの。また、運用期間の開始日は各社のサービス開始日と同じ。但し、THEOのみ運用実績は月次リターンから算出した推計値で、運用期間の開始日はサービス開始日の翌月。手数料は税抜き。

注意して欲しいのは、運用実績はあくまで目安だということ。運用期間はバラバラで、そもそも各サービスの開示方法は異なっているからだ。特に、運用期間は1日違っただけでも数パーセントの違いが出る。したがって、単純比較は難しい。ただし、共通している開示基準はあり、ここで挙げた実績値は、いずれも「円建て」で、サービスの手数料と信託報酬、取引コストといったユーザーが実質的に負担するコストを控除したものになっている。また、各サービスとも、もっとも積極的に運用される(=想定リスクおよび期待リターンが最も高い)コースの数字を採用している。

そうした前提を考慮しつつ、あらためてチェックしてみると、ウェルスナビと楽ラップの運用実績が高めに出ている。だが、これだけだと本当に好調かどうかの判断はできない。そこで、同じ期間のバランス型ファンドの運用実績をみてみよう。比較するのは、ポートフォリオの中身が近い「eMAXIS バランス(8資産均等型)」だ。

ここで注意してもらいたいことは、「eMAXIS バランス(8資産均等型)」の想定リスクは、ロボアドの各サービスのコースよりも低いため、当然、リターンも低くなる、ということ。したがって、この運用実績だけで「ロボアドの方が優秀である」と判断することはできないが、「eMAXIS バランス(8資産均等型)」の信託報酬である0.5%に対して、各ロボアドの手数料が運用実績の重荷になっているとは言い難い(「eMAXIS」の運用実績も信託報酬は控除されている)。少なくともこの期間に限っては、ロボアドの運用は順調だったといえるだろう。

とはいうものの、今後、運用期間が長くなればなるほど、ロボアドの手数料がボディブローのように効いてきて、運用実績の足を引っ張るという可能性は残る。さらに、ロボアドの手数料については、もっと基本的な批判がある。それは、ユーザー自身がインデックス型ファンドを組み合わせてポートフォリオを構築すれば、余計な手数料を支払うことはない、ということだ。

ここ数年、インデックスファンドの信託報酬は低下傾向にあり、よりコストの低いETF(上場投資信託)のラインナップも豊富になってきた。その結果、個人投資家が自分で効率的なポートフォリオを組みやすい環境が整いつつある。そうした中、あえて1%という高額な手数料を支払ってロボアドで運用する理由はない、という意見だ。これは、まさしく正論だろう。

しかし、資産運用に限らず、どんな分野でもそうだが、正論についていけないという人は存在する。特に、資産運用の場合、ポートフォリオや分散投資といった専門用語が出てきて、細かいパーセントの数字が出てきた瞬間、拒否反応を示す人は少なくない。全体的には、むしろそうした層が世間の多数派だと思われる。
よく、「資産運用の基本を理解するのは簡単で、わずかな時間で大丈夫」という声も聞かれるが、一般の人にとっては、到底“簡単”だとは思えないのが実状だ。勉強してから始めるという建前を守っていては、いつまで経っても資産運用に踏み出せない。「入金さえすれば後はお任せ」というロボアドのシンプルさは、そんな「資産運用に興味はあるけど踏み出せなかった」という人の背中を押したことは間違いない。

ちなみに、業界最大手のウェルスナビのユーザーの内、約70%は投資経験があるという。投資経験がある人でも、やはり自分でポートフォリオを構築したり、リバランスをしたりというのは面倒なのだ。その対価として手数料1%は高くない、と判断していると思われる。たしかに、資産運用においてロボアドはベストの選択肢ではないが、資産運用のハードルを下げるという存在意義は十分にあるのではないか。

ロボアドを開始して、資産運用に慣れてきたら、ロボアドのポートフォリオをコピーして、自分で運用するという手がある。先の“正論”を実行するわけだ。ウェルスナビやテオなどは海外のETFに投資しているため、そっくりにコピーすることは難しいが、近いものなら作れるだろう。楽ラップは、国内のインデックスファンドだけなので“完コピ”も可能だ。リバランスのタイミングもやり方も、ロボアドが教えてくれるので、その通りに実行すればよい。これで、手数料を払わなくて済むはずだ。

ここまでは、おもに自動運用型について述べてきたが、アドバイス型にもオススメできるものがある。松井証券の「投信工房」とみずほ銀行の「SMART FOLIO(スマートフォリオ)」だ。いずれも提示されるインデックファンドは、コストが低いものが中心となっている。

自動運用型とは違って、リバランスは全自動というわけにはいかないが、タイミングがきたらメールなどで通知してくれるので、その都度、口座にログインをして実行すればリバランスを行ってくれる。自動運用型よりひと手間かかるものの、アドバイス型なので手数料は無料というメリットがある。

しかも、投信工房とスマートフォリオは提案する投資信託がいずれもNISAの対象となっているので、松井証券および、みずほ銀行のNISA口座で運用をすることができる。もちろん、積立投資も可能だ。

ここ数年、ロボアドを導入する金融機関は増えているが、前編で述べたような販売促進ツールとなっているアドバイス型がほとんどだ。そうした中、注目すべきサービスとして、「LINEスマート投資」内の「ワンコイン投資」が挙げられる。

LINEスマート投資とは、LINE Financialと株式会社FOLIOが2018年10月から開始したサービス。ワンコイン投資は、最低投資金額500円で自動運用型が利用できるというもの。資産運用のハードルを引き下げるという、ロボアドの最大のメリットをさらに推し進めたサービスといえそうだ。

なお、FOLIO社は、2020年1月から「FOLIO ROBO PRO」というサービスもリリースしている。これは従来のロボアドとは違い、短期的な金融市場のトレンドを追って、収益を追求するという。本格的にAIを資産運用に活用したロボアドバイザーとなる可能性を持っている。今後に注目だろう。

著者

松岡 賢治 マネーライター・ファイナンシャルプランナー
松岡 賢治
シンクタンク、証券会社のリサーチ部門に在籍し、国内マクロ経済と債券市場のマーケットアナリストとして従事。1996年に独立し、1997年ファイナンシャルプランナー資格を取得。以後、ファイナンシャルプランナーとして活動する傍ら、ビジネス誌や経済誌を中心に日本経済、資産運用、投資をテーマにした記事の執筆を開始。著書に『ロボアドバイザー投資1年目の教科書』『豊富な図解でよくわかる! キャッシュレス決済で絶対得する本 』。
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