計約4000万の投資信託、年金生活の始まる65歳までの取り崩し方
みんなの資産運用相談

約4000万円の投資信託、年金生活の始まる65歳までにどう取り崩す?

  • 公開日:2020.09.02

Editor's Eye

読者の方から寄せられた、資産運用にまつわるお悩みをお金のプロが解決する「みんなの資産運用相談」企画。今回のお悩みはあと5年でやってくる本格的な年金生活に備え、現在所有する6本の投資信託をどう取り崩していけばいいか分からない……とお悩みの女性(60歳)が登場。金融機関との“付き合い”で購入したという、手数料もリスクも高めの投資信託。どんな考えのもと、どう手放せばいいのでしょう? 自身の相談室、メディアを通して多くの人の相談に寄り添ってきた、ファイナンシャルプランナーの氏家祥美さんが解説します。

【平井貴美子(仮名)さんプロフィール】
60歳女性、未婚。都内で1人暮らし。
夫とは死別し、子供は成人し独立。パート勤めをしている。約15年前、近くの金融機関の担当者から勧められた投資信託を購入して以来、現在まで懇意にしている複数の金融機関から6本の投資信託を購入している。趣味は温泉巡り。

【寄せられたお悩み】
「複数の銀行担当者から勧められた投資信託を購入しており、現在6本、時価評価額にして約4000万円所有しています。
担当者が変わるたびに商品を追加で購入しており、管理するのも大変です。資産が増えているものもあれば、鳴かず飛ばずのものも。ピーク時と比べると新型コロナウイルスの影響で一時期30%近く資産が減ってしまいましたが、最近ようやく元に戻りつつあります。こんな大幅な乱高下を見て、この先持ち続けるにはリスクが大きすぎるのではないか? と心配になりました。
この先、65歳まで働けたとして、その先年金をベースに金融資産を取り崩していなかければならず、どうすればよいのか迷っています」

【今回の相談ポイント】
①勧められるがまま保有し始めた、計6本の投資信託をこのまま持っていてよいのか。

②本格的な老後を迎えるにあたって、取り崩しなどどのようにしたらいいかアドバイスがほしい。

【資産状況】

<総資産>約5000万円
内訳:
・預金:1000万円
・投資信託:4000万円
(バランス型ファンド2種、米国債券型、オセアニア債券型、米国REIT型、テーマ型(AI)ファンドの計6種。すべてアクティブ型ファンドである)

【収支】
<収入>
・毎月の手取り金額:12万円(手取り年収は180万円)

<支出>
・毎月の出費:約9万円(詳細以下)

※ここにある支出のほかに、3か月に1回程度、国内旅行(費用は3万円程度)に出かけている。

※1……「築20年の持ち家、昨年メンテナンス済です」

※2……「週末に友人とお茶をするのが楽しみです」

***

このたびはご相談をいただきありがとうございます。今回は、現在保有している6本の投資信託の今後の取り扱いについてのご相談ですね。お子さんも無事に独立されて、お友達との旅行も定期的に楽しんでいらっしゃるとのこと。そんな平井さんの暮らしにあった金融資産の運用と取り崩しについて一緒に考えていきましょう。

現在、預貯金1000万円、投資信託約4000万円、合計約5000万円のご資産をお持ちです。このご資産をこれからどんな配分で使用していくか、まずはざっくりと見通しを立てましょう。実際は運用して増やしながら、取り崩していくことになりますが、とりあえず運用部分を考えずに単純計算で見立てをしていきましょう。

まずは老後の一時的な費用から考えていきましょう。病気の療養費とお葬式代への備えとして500万円、介護施設への入居費用として1000万円を取り分けておくこととします。ご自宅もお持ちなので、もしも介護費用が不足した時には、自宅を売却した費用なども充てることができます。

続いて、老後の生活費です。令和元年の厚生労働省「簡易生命表」によると、60歳女性の平均余命は29.17年。平均で89歳まで生きることになります。平均以上長生きすることを想定して95歳までの生活費を想定すると、60歳から95歳まで35年間の生活費が必要です。

5000万円のご資産のうち、1500万円を一時的な費用として取り分けたので、残りは3500万円。これを35年間で使うとすると、1年当たり100万円が使えることになります。

毎年の年金額と1年当たり100万円の資産の取り崩しで、生活が成り立つようであれば、あまり積極的な運用をしなくても老後資金は足りると考えられます。

現在の家計を拝見すると、月々の生活費は8万9000円。それに、3ヶ月に1度の旅行3万円(1ヶ月あたり1万円)を加えても、ひと月10万円で生活できていることになります。

実際の暮らしには、毎月の決まった生活費以外にもさまざまな支出があります。1年の中では固定資産税の支払いもあれば、家具家電の買い替えや、冠婚葬祭費用などもあるでしょう。さらに、体調を崩して通院することもあるかもしれません。こうした費用として年間60万円(ひと月5万円)を上乗せしたとしても、ひと月15万円の生活費で足りると考えられます。

年間の生活費を計算してみると……
15万円×12ヶ月=180万円

ちょうど現在のパート代を含めた年収と同じになります。仮に投資信託を100万円ずつ取り崩した場合、年金が80万円受給できれば、現在の生活が成り立つと考えられます。

老齢基礎年金額は満額で年間約78万円。さらに、ご主人の遺族厚生年金か、平井さん自身の老齢厚生年金かのどちらか金額が多い方が上乗せで支給されると考えられます。現在の生活ペースを維持するためには、投資信託の取り崩しは年間100万円で足りると考えていいでしょう。

基本的には、投資を続けながら取り崩していくことになります。ただし、ここまでに見てきたように、平井さんの生活はリスクをとって大きなリターンを狙わなくても、安心して長生きができると考えられます。

今回のコロナで「一時的に資産が30%近く減った」とありました。最近ようやく元に戻ったということですが、もっと高齢になった時には、こうした価格変動が大きなストレスになると考えられます。リスクを抑えた運用に少しずつシフトしていきましょう。

現在保有中の投資信託は……

・バランス型(国際分散投資)
・バランス型(国内資産の分散投資)
・米国債券型
・オセアニア債券型
・米国REIT型
・テーマ型(海外のAI関連株)

の6種類とのことでしたね。全体的に債券型やバランス型ファンドが中心となっています。ただ、リスクを抑えた投資先のわりに、手数料が高めのファンドが多い点が気になります。例えば、2番目のバランス型のファンドは投資対象が国内資産で、しかも7割が国内債券への投資となっていますが、同タイプのファンドに比べると手数料が高く(信託報酬が約0.9%)、近頃は運用成績もよくないようです。コストがかからず、元本保証の個人向け国債などにシフトしてもいいでしょう。

6番目のテーマ型ファンドは、世界のAI関連株に投資しています。コロナショック後でも好調な投資先も含まれており、運用は好調のようですが、60歳以降長期で持つにはリスクが高い投資先となっています。もうしばらく保有しつつ、タイミングを見て売却することも考えましょう。

現在保有している投資信託は、銀行でお勧めされたものを購入しているとのこと。「購入した時に流行っていたファンド」を、「担当者が変わるたびに追加で購入している」とおっしゃっているのが気になりました。

保有しているファンドを拝見すると、販売時手数料が2%前後かかるものが多いようです。仮に1000万円の2%というと、それだけで20万円ですから、コスト負担としては見逃せません。増やすことを考える前に、大きなコストを払わないことにも気をつけましょう。

すでに「管理するのが大変になっている」と感じているようなので、保有数をまずは現在の6本から4本程度まで減らしていき、納得できるものだけを保有するようにしましょう。

このアドバイスが、より充実した老後生活の参考になれば幸いです。

著者

氏家 祥美 ファイナンシャルプランナー
氏家 祥美
ハートマネー代表。お茶の水女子大学大学院修了。2005年に女性4名でFP会社を設立して実績を積んだのち、2010年よりFP事務所ハートマネー代表となる。「幸福度の高い家計づくり」をモットーに、子育て世帯、共働き夫婦の家計相談に豊富な実績を持つ。
この記事は役に立ちましたか?
  • よく分かった (8)
  • 難しかった (3)

このページをシェアする

  • Lineにシェア
  • はてなブックマークにシェア

あわせて読みたいRecommend

関連コラムRelated

参考サイト
もっと情報をキャッチ!

読者アンケートでAmazonギフト券500円分プレゼント