高島屋が投資信託の販売を開始! いま金融事業に乗り出す理由とは?

高島屋が投資信託の販売を開始! いま金融事業に乗り出す理由とは?

  • 公開日:2020.08.31

Editor's Eye

今年6月、大手百貨店の髙島屋が投資信託の販売などを含むファイナンシャルサービス事業に乗り出したことは、さまざまなメディアでも取り上げられました。その狙いはどこにあり、今後のビジネスの在り方をどう考えているのでしょう。同社の金融事業推進プロジェクトリーダーである平野泰範氏にインタビューしました。

高島屋がスタートさせたファイナンシャルサービス事業は連結子会社の高島屋ファイナンシャル・パートナーズが主に担い、投資信託の販売についてはSBI証券と提携し、金融商品仲介の仕組みで行う形となる。日本橋高島屋S.C.本館8階にオープンした「タカシマヤ ファイナンシャル カウンター」では顧客の資産形成や資産の承継などの相談を受け、アドバイスやソリューションを提供。また、Web上で証券口座の開設や取引を行うこともできる。

「ここ数年、準備を進めてきたことが実を結んだ格好です」と話すのは、高島屋の金融事業推進プロジェクトリーダーである平野泰範氏。「高島屋の店舗には大型店を中心にストアコンシェルジュというお買物の相談係を配置していますが、金融においても同じような総合相談窓口をつくりたい。それが高島屋の金融事業らしさにつながるはずだというのが最初の発想でした」。

平野 泰範 氏

高島屋で金融事業の強化が議論され始めたのは3年ほど前のこと。当初は検討チームという位置付けで、それが正式に金融事業推進プロジェクトとなったのが2019年9月。平野氏がそのリーダーを務めることになった。

平野氏はもともと金融機関の出身だが、このプロジェクトのために参画したわけではなく、入社は金融事業の議論がスタートした時期から、さらに2年ほど前にまで遡るという。「最近の金融業界では『顧客本位』がうたい文句になっていますが、あえて言うまでもなく、高島屋にはそうした意識が最初から根付いている点に入社当時は感銘しました。百貨店は当然のように年末年始や土日祝日も営業していますが、自分たちがお客さまの生活を支えているという使命感を持って皆が取り組んでいる。だからお客さまも信頼してくれるわけで、今回のスタートに当たっても、『高島屋さんがやるなら……』とお越しいただいた方が多く、本当にありがたい限りです」。

そうした信頼がベースにあるからこそ、「他の金融機関がどうとかではなく、分かりにくい金融について『ちょっと相談してみようか』と立ち寄っていただけるような場所をつくりたかった」と平野氏は続ける。その言葉通り、ファイナンシャルカウンターは2つの相談ブースが並ぶ開放的な雰囲気(写真参照)。もう少し落ち着いて相談したいという人のために、個室も用意されているという。相談は基本的には予約制で、同社のホームぺージから「ライフプランニングのご予約」ボタンを押して相談内容や日時などを選択する。相談員が空いていれば、その場で相談することもできる。

「最初にあったのは、高島屋が金融事業をやる意味は何なのかという議論でした。長年『貯蓄から投資へ』が叫ばれてきたものの、なかなか動いていない状況がありましたから、私たちのような新たなプレーヤーが参入し、投資へのハードルを下げられれば、これまで動かなかった層にも浸透するのではないか。だからこそ、相談業務を中心にすべきだという結論に至ったのです。そもそも普通の生活者がどうして投資をしないのか。する必要がないのか、興味がないのか、あるいは分かりにくいからなのか。そこをきちんと読み解いていくことも、私たちの仕事だと思っています」(平野氏)。

この相談から始まる業務プロセスにおいて、最も重要になるのは「お客さまが解決したい課題は何なのか、お話を伺いながら一緒に考えること」だと平野氏は話す。「百貨店目線のライフプランニングのプロセスを構築することが、1つの目標と言えるでしょうか」。

原則として面談の初日に商品を提案することはせず、顧客の課題をチームで共有、ディスカッションした上で、具体的なソリューションを決定するという。いわばチームプレーで、それが属人的なエラーを防ぎ、サービスの標準化にもつながるわけだ。

一方で、チームの一員となる人材に求められるものも、従来の金融機関とは大きく異なってくる。「金融機関で優秀な営業成績をあげてきた方が、必ずしもふさわしいというわけではありません。営業成績が高い方ほど、『商品を売る』という姿勢が強かったりする。必要なのはスタープレーヤーではなく、チームの一員です。そのため、むしろ百貨店の職員を積極的に登用し、育成していくというのが現在の基本方針になっています」(平野氏)。

もともと百貨店の社員にはチームプレーが根付いている上、顧客の悩みを丁寧に聞くトレーニングも受けてきた。現在の相談員は8名で、そのうち4名は高島屋グループ内からの登用だという。

ただし、この人材育成の在り方にしても、相談業務を軸にした提案スタイルにしても、決して効率が良いとは言えないのも事実。しかし平野氏は、「目先の効率性を追い求めるよりも、お客さまに満足していただき、長くお付き合いすることが非常に大切」だと強調する。「経営陣ともそうした考え方は共有していますし、金融事業もあくまで百貨店の1つの機能、売り場だと捉えているからこそできることでしょう」。

百貨店を訪れる顧客の多くは、金融商品だけを求めているわけでは当然ない。百貨店の使命は顧客と長期の信頼関係を築きつつ、生活に必要なあらゆるサービスを提供すること。金融も、その1つという位置付けなのだろう。

この7月からは、タカシマヤカードを利用することで投信の購入代金がカード引き落としとなる「カード積立」もスタート。積立投資に適したファンドとして、「SBI・バンガード・S&P500インデックス・ファンド」「eMAXIS Slim 国内株式(日経平均)」「セゾン資産形成の達人ファンド」「農林中金<パートナーズ>長期厳選投資 おおぶね」などインデックスとアクティブをバランスよく組み合わせた8本の「タカシマヤセレクション」も用意した。

ファイナンシャルサービス事業のスタートから1カ月強。実績を問うのはまだ早過ぎるかもしれないが、相談の予約は連日入り、特に土日はほぼ予約で埋まっている状況だという。顧客の年齢層は、やはり50代以上が中心で、今後は売り場やオンラインストアが一体となった集客策なども考えながら、その層をさらに広げていきたいと平野氏は意気込む。「そのためには、社内での認知をさらに高め、私たちをうまく利用するという感覚を持ってもらうことも重要かもしれません」。

高島屋と言えば、多くの富裕層を抱える外商のイメージも強いが、ファイナンシャルカウンターの相談員が外商に同行するケースなどもすでに出てきているそう。前述の通り人材育成が課題ではあるものの、日本橋以外の店舗にもファイナンシャルカウンターを設ける計画も進行中だ。優良な顧客を数多く抱えているだけに、同社のファイナンシャルサービス事業が資産運用業界にもたらすインパクトも大きいはずで、今後も同社の取り組みに注目していきたい。

著者

Finasee編集部
金融事情・現場に精通するスタッフ陣が、目に見えない「金融」を見える化し、わかりやすく伝える記事を発信します。
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