投資や日常生活にも影響!ドル安、円高etc. 為替相場とは?を解説
ニュースで目にする金融用語の深層 4

投資や日常生活にも影響―ドル安、円高etc. 為替相場とは?を解説

  • 公開日:2020.09.03

Editor's Eye

投資信託を購入するとき投資対象が外国の資産であれば、「為替ヘッジ」のあり・なしが選べる商品もあり、資産運用をしている人にとって「為替」はよく見かける単語の1つだろう。実は為替相場は投資信託のパフォーマンスにも大きな影響があり、その影響を軽減するために為替ヘッジを行うと、手数料がかかったりもする。そこで、まずは為替の基本からおさらいしつつ、資産運用に当たって為替相場とどう向き合うべきかを、ファイナンシャルプランナーの吉田祐基氏に解説してもらった。

新型コロナウイルスの感染拡大によって、乱高下したのは株式相場だけではない。実は、「為替相場」も大荒れしたのはご存じだろうか。

アジアで感染拡大が広がり始めた2020年2月の下旬頃、投資マネーがアジアから米国へと退避した結果、円相場は一時1ドル=112円台にまで下落した。しかし3月に入り、感染拡大の範囲が欧米にまで広がると、コロナの影響をまるで避けるように今度は投資マネーが米国を逃避した。その結果、円相場が瞬間的に101円台へと高騰した。

わずか数週間で起きた、円相場の値幅が10円を超える事態。コロナショックによる株式相場の大暴落の陰で、このように為替相場も大荒れの展開となっていた。

コロナ禍の振り返りはここまでとして、為替相場と聞くと、FXトレーダーなど短期売買を行う人向けの話だと感じるかもしれない。長期で資産形成していこうと考える個人投資家にとっては、一見関係ないようにも思える。

しかし海外の株式や債券に投資するタイプの投資信託やETFなどは、為替相場と密接に関係している。さらに、ガソリン価格や小麦をはじめとした食品価格など、日常生活に近い部分でも影響はある。だからこそ、私たち一般の投資家も知っておきたい為替相場の知識を改めておさらいしておこう。

「為替」は英語で「exchange」と訳される。つまり、為替には「交換する」という意味があるわけだ。

これを踏まえたうえで、経済ニュースで取り扱われる為替とは、異なる国と国の間で「お金を交換すること」を指す。そしてお金を交換するとき、互いの通貨の価値が「為替相場」で決まる。為替相場によって、例えば日本の「円」がアメリカの「ドル」に対してどのくらいの価値があるのかが決まるわけだ。

海外旅行に行くと、普段所持している日本円を、そのまま現地で使用することはできない。必ず現地のお金に両替する必要があるはずだ。この両替時に、例えば1000円は何ドルに交換できるのかが為替相場によって決まる。

注意が必要なのは、為替相場の上がり下がりは通常のモノの値段とは逆だという点だ。例えば冒頭で、円相場が一時1ドル=112円台から瞬間的に101円台へと「高騰」という表現を使った。112円から101円へと金額が推移したら、モノの価値だと「値段が下がった」と言えるわけだが、為替相場においては「値段が上がった」となる。

1ドルを手に入れるために必要な日本円が112円から101円へと減る、つまりはより少ない円で1ドルと交換できるようになったわけだから、よくよく考えると円の価値が上がったわけだ。ただ、数字は112円から101円に減ったのに、為替相場では円の価値が上がった(円高)と考える点には多少の慣れが必要だろう。

なお外国為替相場(外為相場)も、ここまで紹介した為替相場と同じ意味だ。記事によって「外国」は略されるケースが多い。また為替相場と「為替市場」という言葉が混在するケースもあるが、本来は「市場」がお金を交換する場で、「相場」は市場でついた値段と言える。

ここまで、経済ニュースで登場する「為替」の意味について紹介してきたが、この言葉にはもう1つの意味があることも知っておきたい。

例えばクレジットカードを使って買い物をすると、直接現金の受け渡しは行わないものの、買った金額が翌月などに銀行から自動で引き落とされる。これも、為替の一種だ。クレジットカードで支払うと、その人の持つ銀行口座から、商品を販売している業者の口座へとお金が移動する。このように直接現金を送る・渡すことなく、銀行などを介してある口座から別の口座へお金が移動する仕組みも、為替と言われる。

とはいえ基本的に経済ニュースでよく耳にする為替相場の「為替」については、異なる国同士の通貨を交換する意味があると覚えておこう。

新型コロナウイルスの感染拡大を受け、マスクの値段が上がったことは記憶に新しい。これは多くの人がマスクを欲したのに対し、生産が追いつかなかったためだ。

こうした需要と供給の原理は、為替相場でも起きている。

例えば、よく例として出されるのが貿易だ。日本企業からアメリカへの輸出が増える際、通貨の需要と供給はどう変化するのか考えてみたい。

日本の輸出企業がアメリカで商品を販売するとき、代金として受け取るのは「ドル」だ。しかし最終的には、円で受け取らなければならない。なぜならドルを持っていても、日本国内での仕入れ代金や従業員への給料を支払うことはできないためだ。

輸出量が増えると、日本企業がドルを円に替える、つまり円を買う需要も自ずと増える。そのため日本の輸出が輸入を上回り、貿易黒字が増える場面では円の買いが増え、為替相場も円高に動きやすくなる。

逆に輸入量のほうが増えると、自然とアメリカの企業が日本円を売って、ドルに交換する機会も多くなる。すると円の需要が減り、ドルの価値が相対的に高くなるため、円安・ドル高方向に動きやすくなる。円安になると、エネルギー資源や食料の大部分を輸入に頼っている日本では、国内のガソリン価格や小麦を代表とする食品価格が上昇することもありえる(輸入品を買うにあたって、これまでよりもたくさんの円が必要となるため)。

ちなみに今回のコロナ禍では、日本からの輸出と輸入の両方が減少するとの見方が強いため、貿易による為替相場への影響は限定的だと言われている。

また、為替相場は資産運用とも関係している。

投資信託の中には、私たちから預かったお金を運用して増やすため、国境を越えて株式や債券を売買するものもある。このとき貿易で国境をまたいでモノが売り買いされる理屈と同じで、米国株を買うためのドルを手に入れるために円を売る。つまり投資家から預かった日本円をドルに交換して、株式を買うわけだ。逆に資産を売って得た売却益はドルで戻ってくるため、利益の一部を投資家に還元する場合にはドルを円に両替する必要がある。

仮に株式の購入時よりも、売却時に円高方向へと進行してしまうと、現在持っているドルよりも円の価値が高いことになる。つまり、運用成績にかかわらず、ドルを円に交換する過程で損失が発生してしまうケースもあるのだ。

例えば投資対象の資産が1%値上がりしたとしても、売却時にドルを円に交換する過程で2%の円高が進んでいれば、全体の運用益は−1%(=1%−2%)となってしまう。逆に1%値上がりして、なおかつ売却時に2%の円安に進んでいれば運用益は3%(=1%+2%)になる。

こうした為替の影響を軽減するために用いられるのが、「為替ヘッジ」という仕組みだ。為替ヘッジありの投資信託の場合、あらかじめ将来の通貨を交換するときの比率(為替レート)を約束するためこうした為替の変動リスクをヘッジ(回避)できる。そのため円高による為替変動のリスクを低減可能な反面、円安による差益は得られない。

逆に為替ヘッジなしの場合、為替の変動リスクをそのまま受けてしまう。

ただ、為替ヘッジありの場合、為替変動というリスクを軽減できる分、信託報酬とは別にコストもかかってしまう。為替変動のリスクを受ける受けないにかかわらず、いずれにせよ運用効率は下がってしまう可能性があるわけだ。余計な運用コストをかけずに運用益や円安による差益を得たい場合は、為替ヘッジなしの商品が候補に入ってくるだろう。ちなみに為替ヘッジのコストについては、各商品の月次レポートなどで確認できる。

今回紹介したように為替相場は、資産形成の手段である投資信託などの金融商品や、ガソリンや小麦といった輸入品価格にも影響を与えていることがわかる。何も一部の短期売買を行うトレーダー向けの話ではなく、為替相場は日常生活にも密接に関係していることは知っておきたい。

この記事は役に立ちましたか?
  • よく分かった (10)
  • 難しかった (0)

このページをシェアする

  • Lineにシェア
  • はてなブックマークにシェア

あわせて読みたいRecommend

著者

吉田 祐基 ライター・編集者
吉田 祐基
各種金融系情報誌の編集・執筆業務を行うペロンパワークス所属。AFP/2級FP技能士。大手不動産情報サイト編集記者を経て入社。株・投資信託、保険などの編集・執筆を担当。

関連コラムRelated

参考サイト
もっと情報をキャッチ!