オンラインでも変わらぬ顧客サポートを目指す、東京スター銀行の挑戦

オンラインでも変わらぬ顧客サポートを目指す、東京スター銀行の挑戦

  • 公開日:2020.09.08

Editor's Eye

東京を本拠とする第二地方銀行でありながら、ユニークなビジネスモデルで全国にサービスを展開している東京スター銀行。コロナ禍で顧客との面談が制限される中、同行がいち早く確立した「オンライン相談」の取り組みが話題となっている。個人金融部門チャネル統括本部のコミュニケーションセンターでセンター長を務める宮田隆弘氏へのインタビューを基に、その仕組みや狙いなどを明らかにしたい。

新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、銀行や証券会社などでは対面による顧客との面談を控えているところが少なくない。そうした中、いち早くリモートで顧客とコミュニケーションできる仕組みを構築したのが東京スター銀行であり、そのサービスが「オンライン相談」である。

もっとも、その仕組み自体は今回のコロナ禍を受けたものではなく、スタートしたのは昨年8月。「そもそもの始まりは、店舗とは異なる新たな営業チャネルを確立することでした」と切り出したのは、同行のコミュニケーションセンターでセンター長を務める宮田隆弘氏だ。このコミュニケーションセンターこそがオンライン相談の拠点であり、いわゆるコールセンターを統合した部署だと言えばイメージしやすいかもしれない。

宮田 隆弘 氏

東京スター銀行はリバースモーゲージやユニークな預金商品など特徴的な商品を強みとしてきたこともあり、全国に顧客を抱える特異な地方銀行としても知られる。一方で、限られた店舗網を補完すべく、コールセンターにも力を入れてきたわけだ。

金融商品の販売におけるコールセンターの活用というと、一般的には問い合わせを受けるインバウンドか、満期情報のお知らせといった限定的なアウトバウンドに限られる場合が多い。しかし、同行では外貨預金や投資信託の提案から成約までを電話で完結させる仕組みを確立し、これまでも実績をあげてきた。

その提案を担うのが、ウェルス・マネジメント・ダイレクトライン(以下、WMライン)。コミュニケーションセンターはローンや預金商品、テレホンバンキングなどのさまざまな専門ラインに分かれているが、WMラインは主に資産運用のコンサルティングを担当する、およそ20名からなる部署である。

「特に投資信託の取引は、WMラインとは別のオペレーターとお客さまへの説明事項の遵守を確認する担当者をペアにすることでチェック機能を働かせ、さらに音声の録音を聞いて精査する品質管理担当者が取引プロセスを保全しています」(宮田氏)。

WMラインはコンサルティングに特化でき、取引に関わる業務はコミュニケーションセンター内の別部署が行うという、いわゆる製販分離でミスを防ぐ仕組みになっているわけだ。このプロセスにオンラインの映像が加わることで、さらに提案の質が高まる。そうした発想からスタートしたのが、オンライン相談だった。

また、その前提として、昨年5月から同センターも自ら収益獲得を目指す組織体制へと変更になったこともあるという。「当行では店舗の営業担当者をリレーションシップマネジャー(RM)と呼んでいますが、コミュニケーションセンターの担当者は店舗を持たないエアー・リレーションシップマネジャー(AirRM)と呼び、店舗と同じ位置付けで提案活動をしていく体制になったのです」と宮田氏は説明する。

その結果、同センターは遠隔地の顧客や来店しにくい顧客を担当することとなり、従来の店舗とは異なる新たなチャネルとしての役割がより明確になった。だからこそ、コンサルティングの質を高め、付加価値をさらに向上させるために、オンライン相談をスタートさせたという側面もあるわけだ。

オンライン相談の特徴の1つは、電話と映像の回線を分ける仕組みになっている点。具体的には、まずAirRMが顧客に電話をかけ、パソコンやタブレット、スマホなどとの接続法を説明し、接続方法が不明な場合はサポートする。接続が完了すれば、顧客はAirRMの顔や資料を画面で見ながら話せるようになるが、顧客の顔は銀行側から見えないように設定している。しかも、「もし何らかのトラブルで映像の回線が切れたとしても、もともと電話が専門だった担当者が対応しているわけですから、電話さえつながっていればそのまま提案を続けられるメリットもある」と宮田氏は話す。

電話の専門部署だったことは、映像が加わると顧客にとってプラスにしかならないという利点もある。つまり、これまで対面で接していた担当者がオンラインにシフトすると、顧客にはこれまでよりもサービスが劣後してしまった印象を与えてしまいがちだが、電話からオンラインへのシフトであればプラスアルファの要素しかないということだ。

「さらに良かったと感じるのは、映像を通じてAirRMを身近に感じていただくことで、お客さまのこともより深く知ることができるようになった点。オンラインの導入後、成約の単価が上がっているのは、その効果と言えるかもしれません」(宮田氏)。

ここで、実際にAirRMとして顧客に対応している山崎恭佑氏に、パソコン上で普段の提案を再現してもらった。まずは画面上に大きく名刺が映し出され、山崎氏の自己紹介が始まる。リトルリーグの世界大会に出場した経験なども交え、自ずと親近感を感じさせてくる内容だ。

オンラインで顧客に対応する山崎恭佑氏

自己紹介が終了した後には、運用初心者には動画を見せるケースも多い。AirRMの映像をワイプさせる機能や顧客の側でも動画を停止、再生できる機能などさまざまな工夫が凝らされていて、顧客の緊張をほぐす効果もあるという。以降はシミュレーションツールを使ったり、さまざまな資料を画面上で共有したりしながら説明が続くが、画像や音声の質が高い上に反応スピードも速く、ほとんどストレスは感じない。対面とそん色がないレベルでコミュニケーションが取れると言っても過言ではない。

「声だけのコミュニケーションに不安を感じるお客さまもいて、顔を見ながら話せることに安心感を覚える方は少なくありません。オンラインではお客さまが目の前にいるような気持ちでカメラをしっかり見つめ、ゆっくりお話しするよう心掛けています。今は試行錯誤しつつも、オンライン相談という新しいツールをお客さまとともに楽しみながら活用しているという感覚です」(山崎氏)。

一通りの説明が終わった後には、顧客がその評価を入力できる機能も搭載されている。担当者にとっては厳しい面もあるだろうが、顧客の反応を即座に把握でき、次回の提案に活かせるメリットもある。「いずれはクチコミサイトのように評価をお客さまにも公開し、それに基づいてAirRMを選べるような仕組みづくりにもチャレンジしてみたい」と宮田氏は意気込む。

すでに述べた通り、このオンライン相談のシステムが導入されたのは昨年8月。今年1月からはキャンペーンを実施したこともあって相談件数が急速に増え、3月には200件を超えるまでになっていた。まさにその最中でコロナショックが起こり、勤務時間を短縮したこともあって4月、5月は横ばいとなったものの、6月に入ると300件、7月には400件を超えるなど増加のペースは加速している。顧客の在宅率が高まっていることも後押しとなっているようだが、コミュニケーションセンターの存在感は、コロナ禍でさらに高まることになったわけだ。

この6月からはWeb上の予約システムもスタートしたが、それがコンサルティングの質をさらに高めることにもつながっているという。「予約の際に相談内容を入力でき、その内容によって、例えば資産運用の担当者とローンの担当者が同席してワンストップで対応することもできる。これもオンラインならではのメリットでしょう。このWeb予約システムの活用により銀行への相談の敷居を低くすることで、私たちが目指す質の高いコンサルテーションを気軽に提供できるプラットフォームになるのではないかと期待しています」(宮田氏)。

まだプロモーションなどもほとんど行っていないにもかかわらず、このWeb予約システムの利用は着実に増加。オンライン相談は平日が9時から21時まで、土日祝は9時から17時まで実施しているが、特に休日は予約で埋まってしまうケースもあるという。コロナショックの際には、ネット証券で口座開設や取引件数が急増したことが話題となったが、一方で、オンラインであっても誰かに相談したいというニーズが確実にあるということだろう。

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著者

Finasee編集部
金融事情・現場に精通するスタッフ陣が、目に見えない「金融」を見える化し、わかりやすく伝える記事を発信します。
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