
映画で“お金”について考えませんか? FPおすすめの作品5選
- 公開日:2020.09.09
Editor's Eye
朝晩は過ごしやすくなって、秋のムードが高まってきました。そんな秋の夜長に、映画鑑賞はいかがでしょうか。個人投資家の皆さんにおすすめの“ためになって面白い”マネーを題材にした映画を、脚本家でファイナンシャルプランナーの岡田禎子さんにセレクトしていただきました。日頃コツコツ資産形成をしている皆さんだからこそ、きっと心に響くものがあるはずです。
「人生に必要なもの。それは勇気と想像力、そして少しのお金だ」
チャップリンの名言にあるように、私たちの人生にお金は切り離せません。そこで、株式投資や投資理論、ビットコイン、プロジェクトファイナンスなど「お金」に関するテーマに人生を賭けた主人公の映画を集めてみました。お金とは何か? を深く見つめ、また同時に金融も学べる、秋の夜長におすすめの映画を5つご紹介します。
『ウォーレン・バフェット氏になる』(2017年)
投資の神様、ウォーレン・バフェット氏の2017年のドキュメンタリー映画『ウォーレン・バフェット氏になる』からご紹介しましょう。
毎朝妻から3ドルほどのお小遣いをもらい、マクドナルドのドライブスルーへ自ら運転して向かう――生まれ故郷のネブラスカ州オマハで暮らすバフェット氏の生活ぶりは、世界的にリッチな人物の一人であるにもかかわらず、質素で慎ましく、実に庶民的。
しかしながら、家族や同僚などへのインタビューで、その人物像がだんだん浮き彫りになると、やはりただ者ではないオーラが漂ってきます。
ベンジャミン・グレアムとの出会い、バークシャー・ハサウェイの経営、ソロモン・ブラザーズ事件など「オマハの賢人」と米国で称されるキャリアの積み上げと同時に、一人の人間として、父であり夫であることの苦悩も描かれており、本で知る彼とはまた違うバフェット氏に触れることができます。
儲け第一主義のウォール街とは大きく異なる投資の価値観、自分の信条に従って行動する大切さ、また同氏の投資理論の基盤である「複利」の考え方や、得意な分野のみに投資する「サークル・オブ・コンピタンス」など、投資の天才からそのエッセンスを教わることができるのも魅力です。
『マネー・ショート 華麗なる大逆転』(2015年)
一方、こちらは儲け第一主義のウォール街が舞台の映画。
2008年に起きたリーマン・ショックを題材にした、コメディ映画の巨匠・アダム・マッケイ監督による『マネー・ショート 華麗なる大逆転』は、実話でありながら、ハリウッドらしいポップでゴージャスな作品となっています。
元医師でヘッジファンドのファンドマネジャーのマイケルは、膨大な量の住宅ローンを組み合わせたMBS(モーゲージ債)やCDO(債務担保証券)の実態を調べるうちに、返済不能に陥る可能性の高い「サブプライムローン」を多く含んだデタラメな商品だと気がつき、大勝負に挑みます。住宅市場の崩壊に賭けた(ショートした)のです。
ウォール街でバカにされながらも、マイケルは「最終的には論理が市場を律する」とその時を待ち続けます。そして金融危機は起こり、彼のファンドは驚異的なパフォーマンスに――!
なぜ金融危機は起きたのか? モラルが欠如した当時の金融界や、複雑な金融商品の仕組みをストーリーを追いながら理解できます。コロナバブル発生といわれる今、再び大クラッシュを引き起こさないか考えるきっかけにもなりそうです。
『ビューティフル・マインド』(2001年)
バフェット氏の「バフェット戦略」は「ゲーム理論」を応用したものです。その「ゲーム理論」の基礎中の基礎である「ナッシュ均衡」の生みの親である天才数学者ジョン・ナッシュ博士をモデルにした2001年のアカデミー賞受賞の映画『ビューティフル・マインド』をご紹介しましょう。
「この世のすべてを支配する真理を見つけ出したい」とプリンストン大学の数学科で研究に没頭するジョン・ナッシュは、変人として有名でしたが、ついに「均衡理論」を発見します。
愛する妻と平和に暮らしていたナッシュでしたが、米ソ冷戦下で、暗号解読という極秘の任務に利用され、そのプレッシャーから精神に異常をきたします。そんな夫を献身的に支える妻。ナッシュ博士が最後に見つけた人生の方程式とは?
ブロンドの美女をどうやって口説くか酒場で議論するうちに、ナッシュは「均衡理論」を閃きます。同理論誕生のエピソードを通して、投資の基礎知識である「ゲーム理論」も理解することが出来ます。革新的な彼の理論は、1994年にノーベル経済学賞を受賞し、様々な分野に応用されています。
『ビットコイン 夢と未来』(2014年)
仮想通貨「ビットコイン」の誕生から、暗号資産取引所「マウントゴックス」の破綻までを記録した『ビットコイン 夢と未来』は2014年のドキュメンタリー映画です。
米国・ピッツバーグに住むプログラマーのダニエルは、2011年に誕生したビットコインに魅せられ人生を賭けて活動を開始。同市場の起業家達に会いに行き、インタビューします。
映画の中でビットコインの価格はどんどん上昇していき、それに伴い起業家達の会社はみるみる大きくなっていきます。金が集まるところに人は群がる、新市場の急拡大とはこういうものか、と目の当たりにすることが出来ます。後にイーサリアムの創設者となる19歳の天才少年ヴィタリック・ブテリン氏のインタビューや、同コインとサブカルチャーとの関わり、預かり金が大量流出した「マウントゴックス事件」の経緯なども見どころです。
新しいお金であるビットコインついて、その誕生から歴史、その仕組みまで、観ているだけで包括的に学ぶことが出来ます。また、ビットコインの“非中央集権型通貨”という特徴が米国のスマートな人々に支持されているという事実は、同時に既存の金融システムの枠組みの限界などの問題点を私たちに突き付けます。
『引越し大名!』(2019年)
「お金がない」という状況になると、人は知恵を絞り、革新的なアイディアが生まれるもの。
2019年の日本映画『引越し大名!』は、まさに「お金がない」物語です。時は江戸前期。姫路藩主の松平直矩は豊後国日田藩へ国替えを命じられます。国替えは莫大な金のかかる一大プロジェクト。しかしながら度重なる国替えにより財政事情は苦しい上に、担当の引越し奉行が亡くなるなど藩は大ピンチ。藩の存亡をかけて、後任の奉行に「かたつむり」と呼ばれるほどの本好きで引きこもりの若者・片桐春之介が大抜擢されます。
超“ヘタレ”でありながら、この理不尽なプロジェクトを、知識や知恵で成功させようと奮闘する春之介。彼の情熱に、藩の仲間も心打たれて協力するようになり、藩全体が一丸となって目標に向かっていきます。
財政立て直しのために、収支の見直しや断捨離、リストラ策など春之介の苦渋の決断に涙無しでは見られません。企業の存続を賭けた現在のコロナ禍の状況とも重なり、お金とは? 企業とは? など深く考えさせられます。
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「1日が楽しみで毎朝ベッドを飛び出るよ。60年以上、私はそうだ」と90歳のバフェット氏は言います。巨万の富を築いたお金の達人は人生の達人でもあるようです。ご紹介した映画を通じて、お金とは何か? を考えるヒントになれば幸いです。