“退職金デビュー”はNG! 50代から始めたい「投資の筋トレ」とは?
「R50」の新常識 余裕の老後は知識で築く! 2

“退職金デビュー”はNG! 50代から始めたい「投資の筋トレ」とは?

  • 公開日:2020.09.11

Editor's Eye

人生100年時代において、50歳はまだまだ折り返し地点。特に、これからの時代に必要になってくるのは「働きながら年金をもらい、資産を上手に使う」という発想です。単に貯めるだけでなく、リタイア後のお金の準備も始めておきたい「R50」世代に向けて、長年マネー誌、ビジネス誌の編集に携わり、年金関連の取材・執筆を多数手掛けてきたフリーライターの森田聡子(としこ)氏が解説するシリーズ連載。第2回では、何ごとも準備が大事……ということで、「投資の筋トレ」とは何か、なぜ50代から始めるべきかを説明します。

昨年、「公的年金だけでは老後資金が2000万円足りない」問題がメディアなどで大きく取り上げられた際、自分の老後に強い危機感を抱いたのは主として20~30代の若い世代でした。実際、NISAやつみたてNISAも、大きく口座数を伸ばしているのは若年層です。

これに対し、50代には比較的リタイア後の家計を楽観視されている方が多いように感じます。背景には、ご自分の親世代が年金で悠々自適の暮らしを送っていることがあるのではないでしょうか。

しかし、「親が安泰だから、自分も大丈夫」とたかをくくっていると、定年後に足をすくわれることにもなりかねません。なぜなら、親世代と今の50代では、2つの大きな違いがあるからです。

1つは、親世代は高水準の年金を受け取っていること。そしてもう1つは、親世代はバブル時代に高金利の恩恵を享受できたことです。

前者については、「所得代替率」を使ってご説明したいと思います。

所得代替率とは、年金の支給額が現役世代の収入のどれくらいの水準かを示すもの。「厚生年金に40年間加入してきたサラリーマンの夫と専業主婦の妻」という厚生労働省が設定した“モデル世帯”の年金額を、現役世代の男性サラリーマンの平均収入と比べると、1989年は約69%でしたが、2019年には61.7%まで低下しました。さらに昨年の財政検証(5年に1度行われる年金財政の点検)では、二十数年後には50%を切る可能性が指摘されています。

この水準を今のご自分の家計に当てはめたとき、「現役時代の収入の約7割の年金がもらえるなら、夫婦2人、余裕を持って暮らしていける」と考える方が多いのではないでしょうか。確かにその頃には、子どもの教育費や住宅ローンからも解放されているはずです。

一方で、所得代替率が一気に50%近くまで低下すると、少々不安になりませんか? 現状の61.7%ですら、前述のように「年金だけでは老後資金が2000万円足りない」わけですから、よほど企業年金制度が充実した会社にお勤めでもない限りは、相応の自助努力が必要になります。

また、後者についても明確な差があります。親世代が50代だったバブル後期、定期預金の利率は6%を超えていました。ノーリスクの預金が、預けて10年後には1.5倍になって戻ってきたのです。期間の長い養老保険などで蓄財していたら、バブルが弾けた後の“失われた10年”においても高利回りで運用することができました。

しかし、現在は日本銀行のマイナス金利政策により、預金にほとんど利息が付かないどころか、逆に口座に手数料をかける動きが広がっています。今どき「6%の確定利付き商品」と聞いたら、むしろ怪しいと感じてしまうのではないでしょうか。

 親世代のような悠々自適の老後をエンジョイするためには、この2つのマイナスポイントを克服する必要があります。

そもそも、子どもが独立する50代は、人生で一番の“老後資金の貯めどき”です。教育費の負担がなくなったことで生まれた自由になるお金は、極力、老後のために蓄えておきたいところです。

さらに、ゼロ金利の預貯金一辺倒でなく、老後資金の一部を投資に回し、“お金に稼いでもらう”ことも検討しましょう。投資という言葉からは、デイトレーダーのように値上がり益を求めて積極的に短期売買を行う姿を想像しがちですが、ここでいう投資とは腰を据えた“長期投資”の意味です。

今年はコロナショックという大きなリセッション(景気後退)に見舞われましたが、そもそも経済は、拡大と後退を繰り返しながらも長い目で見れば成長していくものです。こうした経済成長の恩恵を受けるためには、成長する経済の主体、つまりは企業や国家に投資をする必要があります。具体的には、株式を購入したり、債券を購入したりする形です。

といっても、投資の未経験者がいきなり株式や債券を購入しようとすると、膨大な銘柄の中からどれを選んだらいいかという最初の一歩でつまずいてしまうかもしれません。そこで、初心者の方にお勧めしたいのが投資信託(投信)です。

投信は、投資家から集めたお金を1つのファンドにして運用する金融商品で、投資対象の選択や売買判断などはプロが行います(投資信託協会による詳細説明)。少額から購入でき、投信を利用することで個人ではアクセスしにくい新興国の株式やコモディティなどに間接投資することも可能になります。

投資を行う場合、大切なのは50代のうちから始めておくことです。

「今は忙しいし、退職して時間に余裕ができてからでもいいんじゃないの? 退職金が入れば、まとまった投資資金も用意できるし……」と思われるかもしれませんが、残念ながら、退職金を元手にした投資デビューで成功したという話を聞いたことがありません。大金を持った素人は、“ネギを背負った鴨”にされてしまうリスクが高いのです。

そうでなくても、退職後投資デビューした途端に現在のようなボラタイル(相場の値動きが激しいこと)な市場環境が続いたら、虎の子の老後資金が減るのが不安でたまらず「投資なんてやめよう」となってしまうのではないでしょうか。

そこで、50代のあなたにお勧めしたいのが、積み立て方式で毎月少額ずつ投信を購入していく方法、つまりは“投資の筋トレ”です。積み立てならば短期の相場動向に大きく影響されませんし、定期的に給与やボーナスが入ってくる今なら、投信の評価額が多少下がっても「我慢の時期」と静観する心の余裕が持てそうです。

こうして現役時代から“投資の筋力”を鍛えることによって、退職後にはもう一段ハードルを上げ、より高い利益を視野に入れた投資に取り組む土台を培うことができるのです。

著者

森田 聡子 金融ライター/編集者
森田 聡子
日経ホーム出版社、日経BP社にて『日経おとなのOFF』編集長、『日経マネー』副編集長、『日経ビジネス』副編集長などを歴任。2019年に独立後は雑誌やウェブサイトなどで、幅広い年代層のマネー初心者に、投資・税金・保険などの話をやさしく、分かりやすく伝えることをモットーに活動している。
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