落ち込む景気を横目に上がる株価、その背景にある「金融相場」とは?
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落ち込む景気を横目に上がる株価、その背景にある「金融相場」とは?

  • 公開日:2020.09.15

Editor's Eye

長引く新型コロナウイルスの影響で、コロナ倒産、収入減など“不景気”なニュースを耳にしたと思えば、株式市場はコロナショック後見事なV字を描き、ときには「コロナバブルか?」と言われるような局面を見せながら、続伸している。この不可思議ともいえる状況を理解する鍵の1つは「金融相場」にありそうだ。金融相場とは? また、ややもすると好景気と錯覚しそうな状況下で個人投資家として気を付けるべきことは? ファイナンシャルプランナーの吉田祐基氏に、解説してもらった。

内閣府は2020年9月8日に、直近となる4~6月期の国内総生産(GDP)が前期比で年率28.1%縮小したと発表した。現行基準での集計が開始された1980年以降、最悪の落ち込みだという。

一方で、株価は異様とも思えるほど元気だ。特に緊急事態宣言が解除されて以降、経済活動再開に期待する投資家の心理を表すように、上昇を続けている。

また、経済活動が縮小する中でも、投資を始める人も増えている。例えば、つみたてNISAの口座開設数が順調に伸びていて、2020年3月末時点の口座数は114万口座。前年12月末と比べて約19万口座(約20%増)も増えた。四半期での口座の増加数では、過去最高だ。

このようにコロナ禍において景気や企業業績が悪い状況でも、株式市場へと資金が流れ込み、株価が上がる現象を「金融相場」と呼ぶ。

では、景気の悪化とは裏腹に、株価が上がる理由はそもそも何なのか、改めて考えてみたい。

経済の成長にともなって企業の利益が増え、その結果、株式の価値が高まることで株価上昇につながるという見方が一般的かもしれない。逆に経済が衰退すると、企業の利益が減るとともに株式の価値も低下し、株価の下落につながる。ただ、この見方だと今回のコロナ禍における経済活動の低迷は、企業の業績悪化につながるわけだから、本来であれば株価も下落が続くはずだ。

しかし、株価が上昇する要因はそれ以外にもある。例えば、連載1回目の「ETF買い」の記事でも触れたが、日本政府が財政政策を通じて経済支援の姿勢を示したのはもちろん、日本銀行(日銀)のETF買いによって投資家の投資意欲を高めたことも株価の上昇要因と言われる。

政府の経済支援や日銀のETF買いによる期待感から、株式市場に流れ込むお金の量さえ増えれば、実体経済が停滞していても株式相場は上昇を続けることができる。これが、冒頭でも触れた「金融相場」だといえる。

相場環境を表す言葉には、金融相場以外にも「適温相場」や「流動性相場」もあることは知っておきたい。

適温相場は景気底上げのために実施される金融緩和だけでなく、「緩やかな景気回復」も共存することで相場が過熱し過ぎず、かといって閑散としているわけでもない、ちょうど良い加減にある状態を指す。

適温相場ではさらなる景気回復によって強気相場へ移行すると、金融緩和とは逆に、中央銀行が金融引き締めに舵を切ることになる。とはいえ国内においては現状、日銀は安倍晋三首相の辞任後も、大規模な金融緩和を当面継続する見通しだという。

流動性相場は過度な金融緩和などによって必要以上に世の中に出回ったお金をきっかけとして、生じた相場を指す。「カネ余り相場」とも呼ばれる。コロナショックの際に各国が金融緩和策を取ることで市場に余剰な資金が供給された結果、実体経済とは乖離した株価の上昇が起こった状態もまた、流動性相場と言えるだろう。

ここで、流動性相場と金融相場の違いがわかりづらく感じる方もいるかもしれない。

違いとしては、流動性相場が世の中に出回っている余剰資金に注目するのに対して、金融相場は株価の動きに注目している。つまり現在のコロナショック後の相場は、流動性相場でもあり、なおかつ金融相場でもあると言えそうだ。

金融相場の現在は、株式市場の動きだけを見ると景気が良いような錯覚を覚える。しかし現実には冒頭でも触れた通り、GDPは最悪の落ち込みを記録しており、収入が減少するなどのニュースも耳にする。厚生労働省の毎月勤労統計調査によると、7月の実質賃金は前年同月比で1.6%減と、5カ月連続で低下しているというデータもある。

一方で、1人につき10万円が支給された定額給付金や、持続化給付金などまとまった資金が入ってくる時期でもある。つまり、コロナ禍の株価の乱高下と同様に、収入も大きく変動している家庭が多いのではないか。

本来であれば、収入が不安定だからこそ、まとまったお金が入ったらしっかりと貯蓄を行いたい。しかし働いて得た以外のお金が急に入ってくると、どうしても消費を増やしたくなるものだ。

行動経済学には「メンタル・アカウンティング(心の会計)」といって、お金を考えるときに理論や理性よりも感情のほうが強く出てしまうという理論がある。例えば働いて得た収入は慎重に使うかもしれないが、今回のような給付金などで急に入ってきたお金は「あぶく銭」と考えて一気に使ってしまうような行動を指す。

特に相場の乱高下だけではなく、収入も変動しやすい今だからこそ、お金との向き合い方に感情の影響が色濃く出てくる可能性は高い。

そのため資産形成でも、感情に左右されにくい仕組みを取り入れながら、耐える時期かもしれない。例えば「収入から先に資産形成用の資金を自動天引きした残りで生活を行う」などの方法が挙げられる。

収入が上下しやすい今だからこそ「自動積立」などで投資を仕組み化しながら、将来に向けた備えを整えていきたい。

著者

吉田 祐基 ライター・編集者
吉田 祐基
各種金融系情報誌の編集・執筆業務を行うペロンパワークス所属。AFP/2級FP技能士。大手不動産情報サイト編集記者を経て入社。株・投資信託、保険などの編集・執筆を担当。
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