所得税、国保料……年金を受け取る時の「額面」と「手取り」の差
「R50」の新常識 余裕の老後は知識で築く! 3

年金にも所得税がかかる!?受取時の「額面」と「手取り」の差に注意

  • 公開日:2020.09.18

Editor's Eye

人生100年時代において、50歳はまだまだ折り返し地点。特に、これからの時代に必要になってくるのは「働きながら年金をもらい、資産を上手に使う」という発想です。単に貯めるだけでなく、リタイア後のお金の準備も始めておきたい「R50」世代に向けて、長年マネー誌、ビジネス誌の編集に携わり、年金関連の取材・執筆を多数手掛けてきたフリーライターの森田聡子(としこ)氏が解説するシリーズ連載。第3回では、働いているとき同様にかかる、年金の税金や社会保険料について見ていきます。

老後の準備は50歳から!定年までにやっておきたい、マネー10のこと」の中で、50代になったら、毎年の誕生月に届く日本年金機構の「ねんきん定期便」などで将来受け取れる年金額を把握しておこうという話をしました。

しかし、ここで1つ気を付けたいことがあります。ねんきん定期便に記載されている年金額はあくまで支給額、つまり“額面”であり、給与や賞与と同じように、そこから税金や社会保険料を納めなければなりません。雇用保険の失業給付などとは違って、年金はしっかり収入にカウントされ、その金額に見合った税金や社会保険料を負担する必要が生じます。

税金や社会保険料の負担額は所得や年齢、家族構成などによっても変わるので一概には言えません。ただ、一応の目安としては、トータルで「年金収入の10~15%前後」とされ、65歳から受け取る年金の“手取り”は“額面”の85~90%までダウンすると考えておくといいかもしれません。

年金にかかる税金は、所得税(2037年までは復興特別所得税も徴収される)と住民税です。

年金には、割と手厚い「公的年金等控除」があり、65歳未満の受給者は年間で60万円、65歳以上の受給者は同じく110万円を超えた分だけが課税対象となります。

では、厚生年金に加入するサラリーマンで、ねんきん定期便に記載された65歳以降の受給予想額が年240万円(月額20万円)だとしたら、どれくらい税金がかかるのでしょうか。所得税を例に取って計算してみましょう。

年金は税法上の雑所得扱いとなり、サラリーマンの給与所得とは別枠になります。

年金収入が240万円の人なら、まず、110万円の公的年金等控除が適用されます。これに加えて、基礎控除、配偶者控除、社会保険料控除などの各種控除も差し引くことができます。このケースでは、該当するのは本人の基礎控除48万円、専業主婦の妻の配偶者控除38万円、社会保険料控除15万円と仮定しましょう。

240万円-(110万円+48万円+38万円+15万円)=29万円

控除後の金額29万円に税率をかけたのが所得税額です。

29万円×5%(所得税率)×102.1%(復興特別所得税率)≒1万4800円

この1万4800円が、240万円の厚生年金を受給する人(専業主婦の妻あり)にかかる所得税ということになります。

所得税と比べると、「住民税」の計算は少々複雑です。お住まいの市区町村によっては、ウェブサイト上の「住民税額シミュレーション」に年金の支払金額などを入力するだけで簡単に住民税額を試算することができるので、ご利用いただくといいと思います。

社会保険料で年金から支払う必要があるのは、国民健康保険料(75歳以降は「後期高齢者医療保険料」)と介護保険料になります。こちらはお住まいの地域によって金額が異なり、なおかつ、住民税同様に算出方法が厄介です。

国民健康保険料については、多くの市区町村でウェブサイトから試算ができるようになってきました。介護保険料も調べておきたい方は、市区町村の担当部署に尋ねるのが手っ取り早いかもしれません。

年金の少ない人、例えば65歳以上で年金収入が年158万円(公的年金等控除+基礎控除)以下だと、所得税は課税されません。自営業者やフリーランス、専業主婦など国民年金のみの加入者なら、そもそも65歳から受け取れる老齢基礎年金は満額支給でも年78万1700円(2020年度)ですから、上乗せ年金や他の所得がなければ税金はかからないことになります。

夫婦だけの世帯で妻がずっと専業主婦だった場合、夫の年金収入が211万円(東京23区の場合。地方の場合はこれよりも低くなります)であれば「住民税非課税世帯」となり、税金だけでなく、さまざまな優遇が受けられます。社会保険料だと、介護保険料の負担がここを境に一気に下がります。また、自治体によっては、国民健康保険料の減免制度も用意されています。

それだけではありません。健康保険が適用される医療費の自己負担限度額(医療費が月ごとに一定の上限を超えた場合は、超えた分が戻る)も低く設定されますし、自治体によっては健診(検診)や予防接種が安く受けられたり、入院時の食事代が軽減されたりします。

東京都の場合、在住者が70歳になると都営交通が無料になるシルバーパスが使えますが、これも、住民税非課税者なら1000円の負担で発行されます(課税者は2万510円)。

ねんきん定期便の支給予想額が210万円前後の人にとっては、この“211万円の壁”は意識しておきたい数字です。

さて、ほとんどのサラリーマンは勤務先の年末調整で課税関係が終了してしまうため、医療費や住宅ローンなどの還付申告くらいしかやったことがないという方が多いのではないでしょうか。「年金を受給するようになると、毎年自分で確定申告をしないといけないの?」と漠然と不安を感じている方もいらっしゃるかもしれません。

ご安心ください。公的年金も原則、サラリーマンの給与や賞与と同様に税金や社会保険料が天引きで徴収(源泉徴収)されることになっていて、①公的年金等の収入金額の合計が400万円以下、かつ②公的年金等以外の所得金額(給与や個人年金保険など)が20万円以下であれば、確定申告は不要です。

源泉徴収額の計算式は下記の通りです。

(年金支給額-社会保険料-各種控除額)×5.105%

源泉徴収額は「扶養親族等申告書」に基づいて算出されています。扶養親族等申告書は毎年9月頃から所得税の課税対象者に送付され、配偶者や扶養親族の有無に関わらず、必ず提出することが求められています(サラリーマンの年末調整書類と同じ、とお考えください)。

これを提出しないと該当する控除が受けられず、その分多くの所得税が源泉徴収されてしまうことがあるので、注意が必要です。

 

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著者

森田 聡子 金融ライター/編集者
森田 聡子
日経ホーム出版社、日経BP社にて『日経おとなのOFF』編集長、『日経マネー』副編集長、『日経ビジネス』副編集長などを歴任。2019年に独立後は雑誌やウェブサイトなどで、幅広い年代層のマネー初心者に、投資・税金・保険などの話をやさしく、分かりやすく伝えることをモットーに活動している。

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