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利益をあげている顧客が多いのはどこ? 注目の金融機関ランキング

  • 公開日:2020.09.17

Editor's Eye

資産運用を始めるに当たり、取り引きする金融機関を選ぶ基準は人によって異なるはず。それでも、利益をあげている顧客の比率が多い金融機関がどこなのか、もし分かれば知りたいという人はきっと多いのではないでしょうか。実はその比率が分かる指標があり、しかもその公表を促したのが金融庁だと言えば、さらに興味は増すかもしれません。そこで、その指標を基に金融機関をランキングし、何を意味しているのかも解説します。

1位がスルガ銀行、2位は丸三証券、3位が第一生命保険……。この順位を見て、いったい何のランキングなのか、ピンとくる人はほとんどいないかもしれません。下記のランキングは、「共通KPI」の1つの「運用損益別顧客比率」で、含み益を抱えている顧客の比率が多かった金融機関を上から並べたもの。と、ここまで説明しても、何のことやら分からないという人が大半だと思いますので、どうぞご安心ください。

そもそもKPIとは、“Key Performance Indicator”の頭文字で、「重要業績評価指標」などと訳されます。つまりは、何らかの成果を示す数値と考えればいいでしょう。

そして「共通KPI」は、正式には「投資信託の販売会社における比較可能な共通KPI」のこと。これは2018年6月に金融庁が銀行や証券会社などの投資信託の販売会社に公表を促した指標で、「1.運用損益別顧客比率」「2.投資信託預り残高上位20銘柄のコスト・リターン」「3.投資信託預り残高上位20銘柄のリスク・リターン」という3つに分かれています。上記のランキングは、1の「運用損益別顧客比率」を用いて金融機関を順位付けしたものなのです。

この「運用損益別顧客比率」をもう少し分かりやすく説明すると、金融機関で金融商品を購入した顧客のうち、利益を得ている人と損失を被っている人がそれぞれどれくらいの割合でいるかということです。共通KPIで公表が求められている金融商品は投資信託とファンドラップですが、ファンドラップを取り扱っている金融機関はそれほど多くないため、今回は投資信託のランキングです。上位の金融機関ほど、投資信託で利益を得ている顧客の比率が多いことになります。

ただし、利益を得ている人と言っても、正確には保有中の投資信託に利益が出ている、つまりは含み益を抱えている人の比率で、売却などによって利益を確定した人は含まれない点に注意が必要です。金融庁は原則として毎年3月末時点の数値の公表を求めていますが、今回のランキングは2020年3月末時点のものです。

改めてランキングを見てみると、1位は静岡県に本店がある地方銀行のスルガ銀行で、64.6%の顧客が投資信託で含み益を抱えていることになります。2位は中堅証券の1つである丸三証券で64.2%、3位は第一生命保険で63.0%でした。一方で、メガバンクや大手証券、ネット証券などは1社もランク入りしていません。

ここで思い返していただきたいのは、2020年3月末というと、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で世界的に株式市場が大きく下落したタイミングだったこと。事実、上位にランキングされた金融機関も2019年3月末には全て70~80%台だったのが、軒並み低下しているのが分かります。ある一時点の数値だけではなく、その推移を継続的に見ていくことも大切になるわけです。こうした厳しい環境の中でも、スルガ銀行、丸三証券、第一生命保険は60%台に踏みとどまったわけですから、この3社が顧客にしっかり利益を提供できていたのは間違いありません。

ただし、今回ランク入りしなかった金融機関が駄目なのかと言えば、必ずしもそうではありません。金融機関の販売手法や顧客層によっても、この数値は異なってくる可能性があるからです。

例えば、すでに述べたようにネット証券は1社もベスト10に入らず、実際の数値も10~20%台と他の金融機関と比べてかなり低くなっています。とはいえ、これはネット証券の顧客に短期売買を好む層が多く、こちらも先述の通り、投資信託をすでに売却してしまった顧客は含まれないため、少なからぬ顧客が利益確定をしてしまった後の数字だとも考えられます。また、投資に積極的で、相対的に高いリスクを取っていた顧客が多いため、今回のような下落局面では損失を多く抱えてしまうといった側面もあるかもしれません。

だからこそ、この共通KPIの数字だけで金融機関を評価するわけにはいきませんが、上位に入った金融機関に利益を抱えている顧客が多いのは紛れもない事実。各金融機関のホームページには、この共通KPIの数値がより詳細に掲載されていたり、独自のKPIを公表したりしているケースもありますから、これから投資を始め、どこの金融機関を選択しようか迷っている人がいたら、参考材料の1つにしてください。

ところで金融庁はなぜ、共通KPIの公表を金融機関に求めたのでしょうか。実はここ数年、金融業界ではさまざまな改革が進んでいて、その大きなきっかけとなったのが、2017年3月に金融庁が策定・公表した「顧客本位の業務運営に関する原則」でした。「顧客本位の業務運営」というと何だか難しい印象もありますが、要はもっとお客さまの目線に立った業務を行うべきだということです。

金融庁は各金融機関に原則の採択と、採択する場合にはそれを実現するための明確な方針の策定・公表を求めました。さらに取組状況を定期的に公表し、定着度合いを客観的に評価できるよう、何らかのKPIを設けることも働きかけたのです。

その結果、多くの金融機関が独自のKPIを設け、公表するようになったものの、今度はKPIが金融機関ごとに異なっていると、横比較がしにくいという声があがってきます。そこで、同じ基準で金融機関の比較ができるよう、金融庁が設定したのが共通KPIだったというわけです。

繰り返しとなりますが、この共通KPIの数字が全てではありません。それでも、金融機関を選択するための判断材料が増えることは、投資家にとってメリットが大きいのも間違いありません。さまざまな不祥事があったことから、最近は金融機関に向けられる目がますます厳しくなっていますが、一方で、この共通KPIに象徴されるように業界全体が変わろうと努力しているのも確かなのです。特に資産運用は長期で向き合う姿勢が大切ですから、そのパートナーとなる金融機関の選択は非常に重要です。今回の共通KPIの結果も参考にしつつ、長期にわたって付き合えるような金融機関をぜひ探してみてください。

著者

Finasee編集部
金融事情・現場に精通するスタッフ陣が、目に見えない「金融」を見える化し、わかりやすく伝える記事を発信します。
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