20代前半の新婚カップルにあえて伝えた「iDeCo以外」のベストな資産運用
“お金のかかりつけ医” IFAのアドバイス事例

NISA、iDeCoはマスト?20代の資産運用の始め方をプロが指南

  • 公開日:2020.10.08

Editor's Eye

銀行や証券会社等の金融機関と比べ、長期的な目線でさまざまな資産の相談に応じると言われているIFA(独立系ファイナンシャルアドバイザー)ですが、彼らは相談者に対し実際にどんなアドバイスをしているのでしょうか。印象深かった相談内容をIFAに振り返ってもらうシリーズ連載第6回では、若い世代でも気軽に立ち寄れる相談カウンターを主要都市に構えるIFA法人、Fanの名古屋支店でアドバイザーを務める谷山泰彦さんが受けた相談を紹介します。「投資をするならiDeCoやつみたてNISAから、が常識なんですよね?」と相談に訪れたのは、20代の新婚カップルでした。

今回は、当社のウェブサイトから直接相談の申し込みをされた新婚カップルの例をご紹介しましょう。

相談者:
前田 康介さん(24歳、仮名) 会社員
前田 由佳さん(20歳、仮名) 会社員
愛知県在住

入籍したばかりという前田さんご夫妻は、24歳と20歳という若い共働きカップルです。結婚を機に、ふたりで将来に向けた資産形成を始めようと夫の康介さんが情報収集し、つみたてNISAやiDeCo(個人型確定拠出年金)に興味を持ったとのことでした。

ただ、資産運用に関してはさまざまな情報が飛び交っていることから「自分の考えが本当に最も有利な選択肢なのか、専門家の意見を聞きたい」とインターネット検索で当社を見つけて相談に来られました。

ここ数年は、つみたてNISAやiDeCoが有利な資産形成手段としてメディアで取り上げられることも多く、投資経験が全くないという方も「つみたてNISAやiDeCoを始めたほうがよいか?」と相談に来られるケースが増えています。

つみたてNISAは20年にわたって非課税で積み立て投資ができる制度です。一方、iDeCoは使途が老後資金に限られるものの、投資の利益が非課税な上、投じた資金が所得控除の対象となるので、現役時代から節税しながら老後の準備ができます。いずれもとても有利な制度で、投資を始める場合は優先して使っていきたい仕組みではあります。

ただ、前田さん夫妻は結婚したばかりで、「生活防衛資金」の準備がありません。生活防衛資金とは、突然の失業や病気など、何らかの原因でまとまったお金が必要になるときに備えて預貯金で持っておきたいお金のことで、生活費の半年分程度を用意しておくのが目安です。

つみたてNISAもiDeCoでも、多くはリスク資産に投資することになるので、長期的には資産増を期待できる反面、短期的には元本を大きく割り込むこともあります。生活防衛資金がないと、たまたまマイナスが出ているときにお金が必要になり、損失を確定して換金しなければならないといった不運も起こり得ます。こうした事態を防ぐとともに、市場の変動に一喜一憂せずに投資を続けていくためにも、生活防衛資金は不可欠なのです。

夫妻には400万円の預貯金がありましたが、これはコロナ禍で延期になっている挙式と披露宴、新婚旅行の資金で、使ってはいけないお金でした。そこで、まずは生活費の半年分程度を目標に、預貯金の積み立てを始めることをご提案しました。

毎月いくらぐらいを貯蓄に回せるかをお尋ねすると、2人合わせて10万円程度は出せるといいます。夫婦合わせて600万円(額面)の収入でまだお子さんもいない時期であれば、手取り額の25%程度を貯蓄や投資に回すのが理想なので、まさにベストな額と言えます。それぞれが一人暮らしをしていたらこれだけの額を貯蓄するのはとても無理ですが、結婚して共同生活をすることでそれが可能になるのです。

これだけ出せれば、生活防衛資金もすぐに貯められるでしょうし、せっかく投資に興味を持っているのですから、つみたてNISAと並行してスタートしてもよさそうだと考えました。

つみたてNISAは年40万円が上限なので、康介さんの名義で証券口座を開き、月3万3000円を全世界株式を対象にしたインデックスファンドに積み立てることにしました。株式のインデックスは市場の動きをダイレクトに反映するため、リーマンショックやコロナショックのような危機が起こった際には、最悪の場合、3分の2程度まで資産が減ることを覚悟しておく必要がありますが、それさえクリアできるなら最も低コストで効率的な投資ができる対象です。そして、残りの6万7000円程度は生活防衛資金として貯蓄に回すことにしました。

つみたてNISAと合わせて興味を持っていたiDeCoについては、加入は見合わせました。もちろん、余裕があれば加入してもよいのですが、20代はまだまだ自分への投資も必要な時期。また、これからまとまったお金が必要になる場面も考えられるので、60歳まで換金できない制度を急いで使う必要はないと判断しました。

また、おふたりは今後、マイホームを購入も考えているそうなので、その場合は住宅ローン控除を活用することになります。住宅ローン控除をフルに受けると高い節税効果があり、iDeCoの節税余地が残らないのが一般的です。節税効果がないとなると、メリットはつみたてNISAとさほど変わりません。当初は康介さん名義のみでつみたてNISAを利用し、生活防衛資金が貯まったら由佳さん名義でも口座を開いて、ふたりでつみたてNISAを並行させてもいいでしょう。

いずれにしろ、当面は換金の自由度が高いつみたてNISAで積み立て投資を継続し、iDeCoの加入はマイホームやこれから生まれるかもしれないお子さんにかかる費用など、人生の大きな出費を決める要素が定まってからでも遅くはないと思います。

iDeCoも積み立て投資のひとつなので、「できるだけ早くスタートし、長く続けた方が有利」というのは一般論としては正しい情報です。しかし、それが全ての人にベストな選択肢かといえば、そうとは限りません。康介さんも事前に情報収集する中で「早く加入すべきだ」と思い込んでいたようですが、「実行する前に相談に来てよかった」と喜んでいました。

若い世代ほど情報収集が上手なので、つみたてNISAやiDeCoについても自分で調べて加入する人は多く、とても頼もしいと感じます。ただ、その前に一度専門家の意見を聞いてみることで、より自分に適した資産運用の方法が見つかる場合もあるということも覚えておいていただきたいと思います。ちなみに、つみたてNISAは楽天証券で口座を開設し、楽天カードというクレジットカードで引き落とすことにしました。楽天カードなら、積み立て投資でも5万円までなら1%のポイントが貯まるので、いわゆる「ポイ活」を楽しみながら積み立てできます。積み立て投資といえど全ての期間で利益を出せるわけではありません。ただ、1%とはいえ、ポイントは投資した金額だけ受け取り続けることができます。こうした要素も、投資を楽しく続けるサポートのひとつになるでしょう。

このご夫婦の場合、ご主人が事前に熱心な情報収集をしていましたが、相談には奥様と一緒においでになりました。当社に相談に来られるお客さまの中には、家計管理や資産運用はどちらか一方が担い、「パートナーは無関心だから」と一人で来店する方も多いです。

こうしたご家庭は、相場が好調なときは問題ないのですが、含み損が出るような局面になるとパートナーの猛反対に遭って運用をやめてしまうようなケースも残念ながら見られます。

マネープランというのは人生設計そのものです。目標や長期的な計画を夫婦で共有するほうが継続しやすく、成果もあがりやすいものです。金融商品の仕組みやリスクも理解し、お互いが納得してスタートすればずっと続けやすいですし、途中で意見が対立することもなく、家計の管理もスムーズになります。

若いカップルはもちろんですが、どちらか一方だけが管理している中高年のご夫婦も、改めてパートナーとお金やライフプランについて話し合ってほしいですね。私たちのようなアドバイザーとの相談の場に同伴するのも、興味を持ってもらうよい機会になると思います。

前田さんのケースでも、奥様の由佳さんは資産運用については全く分からないとのことでしたが、つみたてNISAや投資信託の仕組みについてご説明し、夫婦で資産形成していく大切さをお話ししました。すると「この話をきょうだいや友達にも聞かせたいから、紹介してもいいですか」といううれしい反応がありました。

若いうちから家計管理を学び、少しずつでも資産形成を始めれば、子育てや住宅購入などで出費が増える時期もラクに乗り越えられます。ぜひ同世代の方々にこうしたメリットを広めていただきたいですし、当社でも若年層へのアピールに一層力を入れていきたいと考えています。

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著者

谷山 泰彦 Fan IFA
谷山 泰彦
外資系生命保険会社に約10年間在籍。保険という1種類の金融商品だけではなく、総合的なコンサルティングを行いたいという思いと共にIFAに転身。現在は金融全般の知識を活かし、資産形成・教育資金・生命保険・相続対策など、幅広い提案を行う。名古屋を拠点に全国で活動中。

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