Amazonで投資信託が買える時代に? 新業態「金融サービス仲介業」とは何か

Amazonで投資信託が買える時代に? 新業態「金融サービス仲介業」とは何か

  • 公開日:2020.10.06

Editor's Eye

「金融サービス仲介業」という言葉を聞いたことがある人は、まだ少数派かもしれません。今年6月の法改正によって新設された金融業態を指す言葉で、来年後半に法律が施行されることで、具体的なサービスが提供されるようになる予定です。そこで、そもそも「金融サービス仲介業」とはどのようなもので、投資家にはどんなメリットがあるのか。金融ビジネスに精通する日本資産運用基盤グループの大原啓一氏に解説してもらいました。

今年6月5日、金融商品の販売等に関する法律等を一部改正する「金融サービスの利用者の利便の向上及び保護を図るための金融商品の販売等に関する法律等の一部を改正する法律」が成立し、「金融サービス仲介業」という新しい金融業態が新設された。この新しい業態は、従来の法規制では想定されていないような機能横断的なものであるという点で、画期的なものであると考えられる。

ここに至るまでに、2017年秋から開始された金融庁の金融審議会「金融制度スタディ・グループ」及び「決済法制及び金融サービス仲介法制に関するワーキング・グループ」において、機能別・横断的な金融制度の整備等、足もとの環境変化を踏まえた金融規制のあり方についての議論が活発に進められてきたが、従来の証券・保険・銀行といった業態別の法規制の垣根を超えた新たな業態として結実したことは、金融業界にとって重要な一歩であり、リテール金融業界の新時代を象徴するものであるようにも感じられる。

これまでの「金融商品仲介業」は、証券分野における業態のひとつとして、IFA(独立系金融アドバイザー)のように個人向けに株式や投資信託等の金融商品の提案や販売を担う存在であり、2004年の証券仲介業制度の創設以降、少しずつではあるが、その存在感を大きくしてきている。

金融商品の販売を担うものの、金融商品仲介業者が全ての販売機能やシステム等を自前で具備する必要はなく、所属する証券会社等の金融事業インフラを利用しながら、軽く事業を営むことができるため、特にここ最近は、リテール金融事業の領域において金融商品仲介スキームの活用が改めて見直される機運が高まっている。例えば、昨年夏に発表され、金融業界に衝撃を与えた野村證券と山陰合同銀行グループの包括的業務提携も、金融商品仲介スキームを用いている。

一方、この金融商品仲介スキームは、元々が証券仲介業に端を発していることや、個人顧客の利益保護という視点が重要視されてきたこと等もあり、その使い勝手の悪さが課題として指摘されてきているのも事実である。

例えば、個人向けの金融サービスといえば、証券関連の商品のみならず、住宅ローン等の銀行商品や保険商品等も重要なサービスである。顧客の長期的なマネープランを支援するためにはそれらを総合的に利用することが必要となるが、金融商品仲介業者がそうした銀行・保険商品を取り扱う場合には、銀行代理業や保険募集人のライセンスが別に求められる。

また、小規模な金融商品仲介業者が顧客に事故で損害を与えた場合等に備え、現行の金融商品仲介制度では、所属する証券会社等が金融商品仲介業者のコンプライアンス指導や損害賠償責任等を担うという「所属制」が定められているが、これも顧客の利便性を追求し、複数の証券会社等に所属を増やそうとした場合に、それら全ての所属金融機関からの指導に対応しなければならないという煩雑さが指摘されている。

オンラインでの金融商品・サービスの提供等、金融機関と顧客のあり方が多様化する中、金融商品仲介スキームの使い勝手の悪さが、結果的に顧客の利便性を損なうことにもなりかねないのである。

こうした既存の金融商品仲介スキームの課題を解決し、顧客の利便性を追求した柔軟な仲介スキームの活用を目指すために新しく設けられたのが、金融サービス仲介スキームである。

具体的には、前述の1点目の問題について、銀行・保険商品もワンストップで取り扱いたいという事業者に対しては、金融サービス仲介業者として登録をする際に、複数の業態の仲介業者として業務を営むことを同時に手続きすることが認められるようになった。

また、2点目の問題についても、金融サービス仲介制度においては「所属制」が採用されないこととなり、各仲介業者は、提携する証券会社等の金融機関からコンプライアンス業務に関する指導等を細かに受ける必要がなくなる。顧客のニーズに応じるために多くの証券会社等と提携したとしても、その対応の煩雑さを避けることが可能となったわけだ。

ただし、多様な金融商品・サービスの取り扱いを可能にし、顧客の利便性を高めることを目的にしたとしても、その結果として、顧客の利益を保護する機能が脆弱になってしまっては元も子もない。そのため、金融サービス仲介制度では、仲介行為の範囲として「代理」は認めないと制限を設けたり、取扱い可能な商品は高度な説明を要しないものに限定したり、事故で顧客に損害を与えた場合に備えるための保証金の供託が義務付けられたりといった新しい規定も設けられている。

金融サービス仲介制度の新設によって最も期待されるのが、オンラインでの総合的な金融商品・サービスの提供プラットフォームの登場と充実である。

例えば、Amazonのような総合的なマーケットプレイスでは、どこの金融機関の商品やサービスであっても、そこに行けばワンストップで利用することができるのが望ましいが、これまでの金融商品仲介スキームでは、複数の業態かつ数多くの金融機関の商品等を取り扱おうとすると、複数のライセンスや個々の金融機関それぞれによるコンプライアンス等の指導対応が発生し、そのような事業運営は現実的には困難であった。金融サービス仲介スキームを用いると、こうした問題は解決され、オンライン上の総合的な金融商品・サービスのプラットフォームの登場がぐっと現実的になる。

来年後半に施行されるまでに、どのような商品の取り扱いが金融サービス仲介業に認められるのか等を見定める必要があるが、個人向けの金融サービスがより利便性の高いものになることが期待される。

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著者

大原 啓一 日本資産運用基盤グループ 代表取締役社長
大原 啓一
2003年東京大学法学部卒。2010年ロンドンビジネススクール金融学修士課程修了。野村資本市場研究所を経て、2004年に興銀第一ライフ・アセットマネジメント(現アセットマネジメントOne)に入社。日本・英国で主に事業・商品開発業務に従事。同社退職後、マネックスグループ等から出資を受け、2015年8月にマネックス・セゾン・バンガード投資顧問を創業。2016年1月から2017年9月まで同社代表取締役社長。2018年5月に日本資産運用基盤株式会社を創業し、代表取締役社長に就任。

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