30代で初投資に臨むサラリーマンに伝えた「効率より大切なこと」
“お金のかかりつけ医” IFAのアドバイス事例

30代で初投資に臨むサラリーマンに伝えた「効率」より大切なこと

  • 公開日:2020.10.19

Editor's Eye

銀行や証券会社等の金融機関と比べ、長期的な目線でさまざまな資産の相談に応じると言われているIFA(独立系ファイナンシャルアドバイザー)ですが、彼らは相談者に対し実際にどんなアドバイスをしているのでしょうか。印象深かった相談内容をIFAに振り返って語ってもらうシリーズ連載第7回では、IFA法人Fanの名古屋支店でアドバイザーを務める谷山泰彦さんが相続によって「突然手に入った大金」についてアドバイスしたケースを振り返ります。

今回は、当社のウェブサイトのから相談申し込みをされた坂本祐二さん(35)の例をご紹介します。

相談者:
坂本 祐二さん(35、仮名)会社員
坂本 理恵さん(30、仮名)専業主婦
東海地方在住

アパレル関連企業にお勤めの坂本さんは、お母様を亡くされたことで1000万円を超える資産を相続しました。これまで資産運用はもちろん、積極的な貯蓄もしてこなかったそうですが、「利息がほとんどつかない預貯金に入れておくのはもったいない。よい運用方法はないか」と、お金の相談ができる窓口を探して当社を見つけたといいます。

 

さっそく詳しく話を聞くと、坂本さんはすでに生命保険代理店のファイナンシャルプランナーに相談していて、変額保険を使った資産運用の提案を受けているということでした。

保険には、いざというときの備えとしての機能と、貯蓄や運用としての機能があります。前者は保険にしかない機能であり、必要に応じて加入することで万一の際に大きな保障を受けられます。

一方、貯蓄や運用に保険商品を活用するのがベストかというと、活用シーンによっては疑問が残ります。変額保険は株式や債券へ間接的に投資する商品ですが、シンプルな投資商品に比べると仕組みが複雑でコストが高いため、結果的に運用が成功しても、加入者の取り分が減ってしまうからです。

絶対に減らしたくないお金であれば、終身保険や学資保険といった貯蓄代わりに活用できる保険にもメリットがあります。ただ、コスト水準や仕組みの複雑さに鑑みると、リスクを取って増やしていきたいお金を投じる先として、保険以外の商品を検討する余地はあります。

低コストで効率的に資産形成をするなら、株式市場で直接、個別銘柄やETF(上場投資信託)を買うか、投資信託を活用するのが合理的な選択です。さらに、節税しながら老後準備ができるiDeCo(個人型確定拠出年金)や、非課税で積み立て投資ができるつみたてNISAといった公的制度を活用すれば、さらに有利に資産形成ができます。

こうしたことを坂本さんに説明したところ、変額保険はやめて投資信託を活用したいということだったので、投資信託をご紹介することにしました。

預貯金は相続した資産を含めて2000万円ありましたが、近い将来に住宅と自家用車の購入予定があるといいます。そこで、住宅ローンの頭金と自動車購入費用、そして病気や失業など万一の事態に備える「生活防衛資金」として、半分の1000万円は手を付けずに残しておくことにしました。

資産運用には残りの1000万円を充てることになりますが、こうした場合、必ずしもその全額で投資信託を買わなければいけないわけではありません。

資産運用にはリスクが伴います。資産が減るリスクを受け入れてこそ、資産が増えるリターンを享受できるわけです。かつてのリーマンショックやコロナショックといった金融危機や一時的な資産価格の暴落は今後も起こり得るので、私はいつもお客さまに対し、「一時的に資産が3分の2程度にまで減る可能性があることを覚悟してください」とお伝えしています。

これはつまり、1000万円を投じるとして「一時的とはいえ、あなたの1000万円が600万円程度に減るかもしれませんが、受け入れられますか?」ということです。坂本さんは考えた上で、それは無理だと答えました。しかし、その半分ぐらいの損失だったら許容できるというので、投資信託に投じる額は500万円としました。商品としては、長期的に好成績を収めており、長期投資の運用方針を掲げる歴史の長い米国株投信を選びました。

長期的な成長を期待できる分、株式資産はリスクが高めです。リスクを抑えるには、投資金額を調整するほか、債券などに分散投資する方法もあります。ただ、たとえリスクが低くても、期待リターンが低い投資対象にコストをかけて投資することにメリットをあまり感じません。資産分散でなく投資金額でのリスク抑制というご提案は、最もシンプルで効率的だと考えた結果でした。

坂本さんは、万一に備えて医療保険にも加入したいという希望もお持ちでした。実は私自身も、死亡保険や自動車保険といった自力で備えるのが難しい保険には加入していますが、医療費程度なら貯蓄と公的な健康保険で対応できるので、医療保険には加入していません。基本的に掛け捨ての保険は期待リターンがマイナスなので、保険料を支払うより投資に回した方が効率的だと考えるからです。

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著者

谷山 泰彦 Fan IFA
谷山 泰彦
外資系生命保険会社に約10年間在籍。保険という1種類の金融商品だけではなく、総合的なコンサルティングを行いたいという思いと共にIFAに転身。現在は金融全般の知識を活かし、資産形成・教育資金・生命保険・相続対策など、幅広い提案を行う。名古屋を拠点に全国で活動中。

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