景気拡大期に上昇? 消費や景気の先行指数「消費者態度指数」とは
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景気拡大期に上昇? 消費や景気の先行指数「消費者態度指数」とは

  • 公開日:2020.10.13

Editor's Eye

毎月、内閣府より発表される「消費者態度指数」。前月より〇ポイント上昇、などと推移を報じるニュースとともに多くの人が耳にしたことがあるだろう。景気動向の把握のため実施されている重要な調査――ではその算出方法は? 景気との関連は? さらにアメリカにおける同様の指数「消費者信頼感指数」と比較するとどんな特徴があるのか? ファイナンシャルプランナーで編集者の吉田 祐基氏にさまざまな観点から解説してもらった。

コロナ禍が深刻化した2020年4月30日に内閣府が発表した4月の消費動向調査では、消費者心理を示す「消費者態度指数(消費者マインド)」が、現在の調査方法となった2013年4月以降では最低の水準を記録した。新型コロナウイルスの感染拡大が消費者心理を急激に冷え込ませており、前月比の下げ幅も過去最大となったという。

その後、5月からは回復の兆しを見せ始め、7月31日に発表された7月の消費動向調査によると、消費者態度指数は前月比で1.1%上昇し、3カ月連続の上昇となった。内閣府は消費者心理に対する考えを「依然として厳しいものの、持ち直しの動きが続いている」とし、これから消費者の購買意欲なども回復していくかのように思えた。

しかし、翌月の8月31日に発表された8月の消費動向調査では消費者態度指数は前月比で0.2%減少と、4カ月ぶりに低下。内閣府は消費者心理への見解を「持ち直しのテンポが緩やかになっている」と7月よりも下方修正する結果となった。暮らし向きなどが改善するとの見方があったものの、東京都内を中心に7月下旬から8月上旬にかけて新型コロナウイルスの感染が再び拡大したことを背景に、やや後退したわけだ。

このように、経済ニュースなどでよく取り上げられる「消費者態度指数」の推移を見ると、購買意欲など消費者心理の動きが分かると言われている。

そもそも消費者態度指数は、消費者の「暮らし向き」「収入の増え方」「雇用環境」「耐久消費財の買い時判断」の4項目について今後半年間の見通しを5段階評価で聞き、数値化した指標だ。調査対象となる世帯全員が「良くなる」と回答すれば100%、「変わらない」と回答すれば50%、「悪くなる」と回答すれば0%になる。調査は全国の8000世帯以上が対象。毎月1回、郵送もしくはオンラインで一般消費者に調査が行われる。

消費者態度指数の動きを見ると、消費者の購買意欲や収入、経済状況などに対する感覚が分かると言われている。消費者態度指数の数値が良くなれば景気が浮上、逆に悪くなれば景気が後退する可能性がある。

消費者態度指数は基本的に、景気拡大期に上昇し、景気後退期には低下するという循環的な動きとなる。これまでの推移をみると、阪神・淡路大震災(1995年1月)や地下鉄サリン事件(1995年3月)、山一證券の破綻(1997年11月)、米国同時多発テロ(2001年9月)といった出来事と同時期、もしくはその直後に消費者態度指数は落ち込んでいるようだ。

ただ傾向としては、バブル期(1988~89年)を除けば景気拡大期においても常に50%を下回る水準で推移。50%より大きい場合は消費者心理が良くなっていると判断されるが、ここ20年は、暮らし向きや収入の増え方について「悪くなる」という悲観的な見方の消費者が多いと言える。

一方で、景気の動向を把握する指標としては「景気動向指数」がある。消費者態度指数と同じく内閣府が発表しており、景気全体の現状を知ったり、将来の動向を予測したりするときに用いる経済指標だ。
もっとも、一口に景気動向指数と言っても数カ月先の景気の動きを示す「先行指数」、景気の現状を示す「一致指数」、そして半年から1年遅れで反応する「遅行指数」の3つに区分される。ちなみに消費者態度指数も景気動向指数の1つで、3つのうちの「先行指数」に該当する。
例えば景気浮上の兆しが見えると、暮らし向きが良くなり始めたと実感する家庭が増えて、消費者態度指数が上昇する。そして実際に景気が上向き、消費量が増えれば「家計消費支出」が上昇する。家計消費支出は景気よりも遅れて動くため、遅行指数に区分される。さまざまな動きをする景気動向指数全体を見ることで、景気の将来予想や現状を判断することができるわけだ。
2020年6月の消費動向調査によると、消費者態度指数の前月からの改善幅は4.4%と、比較可能な2004年以来最大の上昇を記録した。背景には10万円の定額給付金が入り、家計に一時的なゆとりが生まれたとの予想がある。これはあくまでも一時的なものだが、景気が回復し、収入が増加すると消費者態度指数も上昇すると言われる。

アメリカ版の消費者態度指数である「消費者信頼感指数」は、株価と連動して動く傾向にあることが知られている。これは、家計の金融資産に占める株式の割合が背景にあると考えられている。2020年3月末時点で、金融資産のうち株式などが占める割合はアメリカが32.5%と、欧州(17.2%)や日本(9.6%)と比べると突出して高い。

株価が上昇して家計の保有する株式の含み益が増えれば、それにともなって購買意欲などが改善し、消費も増えるわけだ。こうした消費者心理と株価の連動は、日本や欧州にはないアメリカ経済の特徴とも言える。

前回の記事(落ち込む景気を横目に上がる株価、その背景にある「金融相場」とは?)などこの連載ではたびたび株価と実体経済とのかい離に触れてきたが、株価の上昇に連動して景気が上向くかどうかは、なかなか予想しにくい。

しかしアメリカのように日本も「貯蓄から資産形成へ」が浸透し、金融資産に占める株式の割合が増えていくと、消費者態度指数が株価に連動する傾向を見せる可能性もある。つまり、株価の上昇が消費者の購買意欲をかき立て、消費や投資が増えることも期待できるのかもしれない。

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著者

吉田 祐基 ライター・編集者
吉田 祐基
各種金融系情報誌の編集・執筆業務を行うペロンパワークス所属。AFP/2級FP技能士。大手不動産情報サイト編集記者を経て入社。株・投資信託、保険などの編集・執筆を担当。

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