お金が戻ってくる、だけじゃない iDeCoの所得控除が持つ「本質的な効果」
セミナー講師が伝えたい マネープランのツボ 2

お金が戻ってくる、だけじゃない iDeCoの所得控除が持つ「本質的な効果」

  • 公開日:2020.10.15

Editor's Eye

「自分がもらえる年金、月にいくらかご存知ですか」。人生100年時代、大多数の人に関係し、「もらえる」というポジティブな情報でありながら、即答できる人はほとんどいません。しかし、おさえるべき知識を身につけておけば、リタイア後に向けたマネープランはもっとスムーズに、自分の思う通りに組めるはず。証券会社に所属し、企業等の従業員にライフプランや資産形成のセミナー講師を務める小出昌平氏が、マネープランのよくある疑問について連載で解説します。第2回は、多くの人にとって、iDeCoを知るきっかけとなったであろう、iDeCoの所得控除の「本質的なメリット」について考えます。

iDeCo(イデコ、個人型確定拠出年金)は税制メリットがとても大きい制度です。でも、iDeCoを始めた人から「お得なのは分かるけど、iDeCoってすぐにはありがたみが感じられないですね」と言われることがあります。

確かに、iDeCoで積み立てた金額は全額が所得控除の対象になりますが、年末調整や確定申告の手続きが必要です。また、iDeCoの運用益は非課税ですが、そのメリットを享受できるのは実際に受け取るとき、つまり将来の話になります。これは、退職所得控除や公的年金等控除のiDeCoを受け取るときの税制メリットも同じですね。

こう考えると、iDeCoを始めたばかりの人がお得感を実感できないのもうなずけます。でも、話をここで終わりにすると、これからiDeCoを始めようとしている人の背中をそっと後押しするのではなく、グイっと後ろに引っ張ってしまいますね(苦笑)。それは私の本意ではありませんので、いつもセミナーでは所得控除の仕組みを説明するだけでなく、iDeCoの所得控除の「本質的なメリット」とは何か、参加者に問いかけるよう努めています。

セミナーで使っているスライドとともにご説明しましょう。

***

講師
iDeCoの所得控除について、もう一度考えてみましょう!まずはその仕組みをおさらいします。
例えば、所得税が10%(復興特別所得税を除く、以下同じ)だと、iDeCoで毎月10000円積み立てると、所得控除のメリットはどれくらいになりますか?

参加者
住民税は一律10%なので、所得税と合わせて20%になりますよね。
毎月10000円積み立てると1年間で12万円になるので、12万円×20%の24000円。これが税制メリットの金額です。

講師
その通りです。よく理解できてますね。
この超低金利時代に20%も戻ってくるなんて、すごいメリットですよね?

参加者
ええ。お得なのは分かるのですが、所得税の還付を受けるためには年末調整や確定申告をしなければいけませんし、住民税は次の年にならないと負担が減りません。
それに給与天引でiDeCoをやっていると、勤め先で源泉徴収が調整されて税制メリットがあまり実感できません。どっちにしても、所得控除のメリットはすぐに見えないんですよね……。

講師
なるほど。もう一歩踏み込んで考えてみるといいかもしれませんね。
というのも、iDeCoの所得控除って、本質的には「国からの奨励金」だと私は思っているからです。

参加者
「国からの奨励金」? どういうことですか?

講師
先ほどの例を使いますね。
所得税と住民税が合わせて20%だと、月額では10000円×20%の2000円が所得控除のメリットになります。この2000円を、後から戻ってきたときに自分の財布に入れる(A)のではなく、最初から積立額が2000円少なくて済んだ(B)、と考えるのです。
つまり、実質的には毎月8000円で10000円分の積み立てをしているのです。

参加者
所得控除のメリットを他に回すのではなく、国からの「iDeCo奨励金」としてiDeCoに積み立てる、ということですか。とは言っても、AもBも結局同じような気がしますが……。

講師
おっしゃる通り、同じです。でも、「実質的には毎月8000円で10000円分の積み立てをしている」と考えた方が、所得控除のメリットをすぐに感じられるような気がしませんか?

参加者
うーん……言われてみればそうかもしれませんが……。

講師
まだ半信半疑のようですね(笑)。
実はiDeCoの所得控除を「国からの奨励金」と考えるメリットはもう一つあります。運用商品を選択するときの幅が広がるのです。
というのも、毎月8000円で10000円分の投資ができるなら、運用商品が20%下落しても実質的な損益は±ゼロ、つまり、「国からの奨励金」が下落リスクに対するバッファーになるのです。そうなれば当然、投資信託等のリスク性商品が選びやすくなりますよね。

参加者
そうか、それは一理ありますね。
でも一方で、iDeCoでは元本確保型商品の預金を選んで、所得控除のメリット分をしっかり確保するっていう考え方もありますよね?

講師
ええ、考え方としてはアリだと思いますが、もしかして「戻ってきたお金を使うと、所得控除のメリットがなくなる」って思ってません?

参加者
えっ、そう思っていたからこそ、所得控除のメリットがすぐに見えなくて困っていたんですが……そうじゃないんですか?

講師
もし、先ほどの例で毎月12000円積み立てようと考えているなら、取っておかないとダメですね。
でもiDeCoで積み立てるのは毎月10000円ですから、毎月8千円で10000円分の積み立てができると考えた方がよくはないですか?
所得控除のメリットは、「国からの奨励金」として先に積み立てていることだと考えると、後で戻ってくるお金を使っても後ろめたさはないですよね!

参加者
あっ、そういうことですか!ようやく分かりました。
その考え方を知って、「所得控除のメリットがなくなる」という呪縛から開放されたような気がします(笑)。

***

最後は「呪縛から解放された」なんて大げさな話になってしまいましたが、iDeCoの所得控除の本質的なメリットとは「国からの奨励金」、つまり、実質的に自分の積立金額が減るという点にあるのです。そんなふうに考えれば、iDeCoを始めたばかりの人でも所得控除のメリットがすぐにピンとくるでしょう。そして、「自分の積立金額が実質的に減るなら、投資信託等のリスク性商品で運用するのもアリだな!」と思っていただけるのではないでしょうか。これからも、そんな気付きを広めていきたいと思います。

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著者

小出 昌平 大和証券 ライフプランビジネス部 担当部長
小出 昌平
1993年4月大和証券入社。投資信託の開発や富裕層ビジネスの企画・運営業務などを経て、2015年より確定拠出年金業務に従事。現在は、iDeCoと呼ばれる個人型確定拠出年金の周知・普及活動に携わりながら、自治体や事業会社の職場における金融・投資教育、ライフプラン教育の支援活動に取り組み中。

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