“老後貧乏”にご用心! 50歳からの「収入の崖」に備えよう
「R50」の新常識 余裕の老後は知識で築く! 7

“老後貧乏”にご用心! 50歳からの「収入の崖」に備えよう

  • 公開日:2020.10.16

Editor's Eye

人生100年時代において、50歳はまだまだ折り返し地点。特に、これからの時代に必要になってくるのは「働きながら年金をもらい、資産を上手に使う」という発想です。単に貯めるだけでなく、リタイア後のお金の準備も始めておきたい「R50」世代に向けて、長年マネー誌、ビジネス誌の編集に携わり、年金関連の取材・執筆を多数手掛けてきたフリーライターの森田聡子(としこ)氏が解説するシリーズ連載。第7回で取り上げるのは、老後不安とは無縁の高年収の人にこそ注目してほしい「収入の崖」です。

「年功序列型」の賃金体系は崩壊したと言われて久しいのですが、今の50代は、年齢に応じて比較的順調に収入を増やしてきた世代ではないでしょうか。多くは、50代前半にサラリーマン人生を通じての給与のピークを迎えています。

だからといって、油断は禁物です。50歳からの10年間は、サラリーマン人生で最も収入の変化が大きい時期でもあるからです。50代後半に待ち構えているのが、2つの大きな「収入ダウンの崖」です。

最初の「崖」は部課長職の人などを対象にした「役職定年」で、55歳や57歳に設定している企業が多いようです。基本給・役職手当・賞与などが見直され、年収が一気に3割程度減ってしまう人もいます。「崖」と呼ばれる理由は、この落差の大きさにあるようです。

そして、役職定年から数年後にやって来る「定年」がもう一つの「崖」となります。完全リタイアなら60歳以降は無収入になりますし、雇用延長や再雇用を選んだ場合も、現行の在職老齢年金の制度(「働いたら損」ではなくなる!制度改正で変わる在職老齢年金の基準額を参照)に配慮して年収を200万~400万円程度に抑えている企業が多いようです。

近年は「老後貧乏」「定年後破綻」などリタイア後ばかりが不安視される傾向にありますが、ファイナンシャルプランナーの方に伺うと、実は、この“50代クライシス”で行き詰まってしまう家計が少なくないのです。しかも、高収入で暮らし向きのいい家庭ほどリスクが高いといいます。

なぜ、高収入世帯が「定年前破綻」してしまうのでしょうか。

一番の要因は、いったん広げた家計の風呂敷を、そう簡単にはたためないことにあります。趣味の外国車やゴルフやお酒、ママ友とのホテルランチやエステ……。頭の隅では「浪費」だと認識していても、それが習慣化してしまうと、なかなかやめられません。結果として、収入は「サラリーマン人生で最高」にもかかわらず、毎月の家計収支は良くてトントン、悪ければ月々の赤字をボーナスで穴埋めする生活が常態化することになります。

“自転車操業”が回っているうちはいいのですが、役職定年や定年による収支の悪化がトリガーとなり、一気に家計が崩壊してしまうのです。

このタイミングで資産家の親から多額の遺産を相続するようなことがあれば、50代クライシスを乗り切ることができるかもしれません。しかし、誰もがそうした幸運に預かれるわけではありませんし、また、それでは本質的な問題の解決にはなりません。

家計健全化に有効な唯一のソリューションはコストカット、つまり家計の見直しです。ポイントは、役職定年を迎える前に収入減を想定して、あらかじめ支出を3割程度減らしておくことです。

支出3割カットと聞くと「絶対無理!」と思うかもしれません。しかし、一般的な50代の家庭には、30~40代のファミリーと比較して圧倒的に大きなアドバンテージがあります。まず、子どもが独立して子育て費の負担から解放されます。扶養家族が減るわけですから、その分、生命保険の死亡保障も減らせます。住宅ローンを返済中の方なら、そろそろゴールが見えてきたのではないでしょうか。

もちろん、“自助努力”も大切です。いきなり趣味やエステ通いを止めてしまうのは精神衛生上よろしくないと思いますから、まずは「減らす」ことを実践してはいかがでしょうか。お金がかかる趣味が複数あったら1つに絞る、エステやホテルランチは月1回までにする、といった具合です。

“ウィズコロナ”の下、家族で手料理の食卓を囲む回数を増やせば、節約だけでなく健康の維持にもつながります。筆者の知人は外食がしにくくなったことから生協の宅配を使った自炊に切り替え、毎月10万円を超えていた食費が半減、コレステロールや中性脂肪も正常値に戻ったと話してくれました。

家計健全化には子育て費からの脱却効果が大きいだけに、気を付けたいのが40歳前後で子どもを授かった家庭です。

子どもが生まれた時点で親はそれなりに裕福、かつ人生経験を積んでいますから、子どもに惜しみなくお金を注ぎ、より良い教育環境を整えようとします。もちろん、この努力を否定するものではありません。

とはいえ、親が50代になっても子どもはまだ小中学生、60歳ギリギリまで子どもにお金を注ぎ続けると、ご自分の老後の家計に支障を来しかねません。

学校教育については無償化が進んでいます。しかし、習い事や塾の費用は自己負担です。さらに、携帯電話代や小遣いなどを加えると、子ども1人に毎月10万円近くを厳しい家計の中から支払っている親御さんもいると聞きました。

将来、尾羽打ち枯らして子どもに頼るような事態を招きたくなければ、早めに子どもの経済的自立を促すことが大切です。ねだられれば何でも買い与えるのではなく、本当に必要な塾や習い事に絞る、携帯電話も安いプランに変えたうえで、料金は自分の小遣いから負担させるなど、方法はいろいろあるでしょう。

家計の見直しで第一目標の「支出3割カット」が達成できれば、大きな自信につながると思います。この実績をベースに、60歳に向けてさらなる家計のダウンサイジングを進めたいところです。特に前述の自助努力の部分は一朝一夕で変えられるものではありませんから、時間をかけて結果を出していくことが大切です。

総務省「令和元年 家計調査報告(家計収支編)」によると、世帯主が60~64歳の無職世帯(2人以上)の平均消費支出は月額27万2927円でした。今は高収入の自転車操業家計でも、10年後の定年までに支出をこの水準以下に落としておくことができれば、収入が大幅ダウンした後の家計管理もだいぶやりやすくなるはずです。

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著者

森田 聡子 金融ライター/編集者
森田 聡子
日経ホーム出版社、日経BP社にて『日経おとなのOFF』編集長、『日経マネー』副編集長、『日経ビジネス』副編集長などを歴任。2019年に独立後は雑誌やウェブサイトなどで、幅広い年代層のマネー初心者に、投資・税金・保険などの話をやさしく、分かりやすく伝えることをモットーに活動している。

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