
投資の神様・バフェット氏の名言に学ぶ、資産形成の5大原則
- 公開日:2020.10.28
Editor's Eye
去る8月、ウォーレン・バフェット氏率いる米投資会社バークシャー・ハサウェイが、伊藤忠商事・丸紅・三菱商事・三井物産・住友商事それぞれの発行済み株式数の5%超まで買ったと発表して、大きな話題になりました。同氏は「投資の神様」として著名な存在ですが、今後の動向にいっそうの関心が寄せられています。そんなバフェット氏の投資哲学は、投資信託を中心とした“コツコツ資産形成派”にも役立つヒントがたくさん。FPであり、セリフを扱う脚本家でもある岡田禎子氏にバフェット氏の名言から個人投資家が学ぶべきエッセンスを解説していただきました。
ウォーレン・バフェット氏は11歳から株式投資を始めて、現在の資産額は714億ドル(約7.5兆円)とも言われる世界トップクラスの大富豪。「投資の神様」として知られ、書店にはバフェット本が並び、同氏の話を聴こうと米国・ネブラスカ州オマハにあるバークシャー・ハサウェイの株主総会には世界中の人が足を運びます。
そんな「オマハの賢人」バフェット氏の言葉には投資の知恵がたくさん。今回は、投資信託を中心としたコツコツ資産形成派の皆さんにも活かせる同氏の名言をご紹介します。
1「ゆっくり金持ちになりたい人はいないよ」
AmazonのSEOであるジェフ・ベゾス氏が「何でみんなあなたの投資戦略を真似ないのですか?」と尋ねた時に、バフェット氏が答えた言葉です。
株式市場では、短期間に巨額の利益を叩き出すスター・トレーダーや個人投資家が現れては消えていきます。また人間には長期の利益よりも目先の利益を優先する傾向にあり、「早く金持ちになりたい」という人間の欲がギャンブル的な投機に走らせ、失敗を招きます。
一方バフェット氏の投資戦略は、徹底的に調べて選んだ優良銘柄に長期投資するというシンプルなもの。同氏は、とくに”複利”を重要視しており、長期投資することで、その複利効果はとてつもないものになります。たとえば100万円の元本を年5%で運用すると1年目は105万円にしかなりませんが、10年で約163万円、20年で約265万円、30年で約432万円と運用期間が長いほど雪だるま式にお金は増えていくのです。
資産形成の王道は、長期投資して複利効果を狙うこと、つまり「ゆっくり金持ちになることですよ」と世界屈指の大富豪が身を持って証明しています。
2「自分に理解できないビジネスに投資しない」
バフェット氏は、サークル・オブ・コンピテンス(自分の得意分野の範囲内)を超えては投資を行いませんでした。たとえば、ハイテク株への投資は自分には深い理解がない、と長年投資してこなかったことでも有名です※。「私がコカ・コーラやジレットを理解するように、(マイクロソフトの創業者の)ビル・ゲイツ氏はハイテク株を理解する。私たちの(投資の)原則は、ハイテク株にも通用するものの、むやみに輪を広げることはしない」と述べています。
投資信託の中には、旬のテーマを扱ったものやオプションなどを使った複雑な仕組みのものがあります。投資対象がよく分からないのに「なんとなく儲かりそう」と購入してしまうと、大失敗することも。
自分が理解できないものに投資することは最大のリスクにつながります。裏を返せば、自分のお金で投資をする以上、投資先の内容は理解し、納得の上での購入が欠かせないと言えるでしょう。
※編集部注……アップル株を購入するなど、近年はハイテク株への投資も行っている。
3「有能な騎手も名馬に乗れば勝てるが、骨折した駄馬に乗っては勝てない」
長期投資が基本でも、残念な投資信託を掴んでしまったらその投資は失敗に終わります。
かつてバフェット氏は銀行が大反対する中、老舗百貨店を買収しました。そこにはとびきり優秀な経営者がいて彼の経営手腕を高く評価していたからです。ところが、すでに斜陽産業となっていた百貨店の経営は好転せずに、投資は失敗で終わってしまいました。
そこで呟いたのが、このセリフ。いくら有能な経営者がいても成長の可能性が低い事業に投資しては勝てません。投資信託も同様に、品質を見極めることが重要です。
過去のパフォーマンスをチェックする、投資手法・投資哲学を確認する、どんな運用会社でどんな人材が働いているのか調べる、など「投資信託」という事業全体のクオリティにこだわることで、自分だけの“名馬”を見つけられます。
4「価格はあなたが払うもの。価値はあなたが得るもの」
バフェット氏のいう「価格」とは株価(投資信託では基準価額)のことで、「価値」とは企業の本来持っている価値のことです。
株式市場では、投資家の目は「価格」に向くため、「価値」は見失われがちです。
本来の価値は一本100円のコーラ飲料であっても、その時のマーケットの状況によって30円や1000円の価格になったりします。
長期でコツコツ投資していたとしても、投資信託の価格(基準価額)が上がったり下がったりすると不安に襲われ、狼狽えてしまうこともあるでしょう。
しかしそのような時こそ、市場の価値の上下に振り回されることなく、その企業(投資信託)のオーナーになったつもりで、企業の妥当な本来の「価値」を冷静に見極めることが大事だ、とバフェット氏は説いています。
5「他人が貪欲になっているときは恐る恐る、周りが怖がっている時は貪欲に」
2008年に起きたリーマンショックでは、世界中の金融市場が恐怖に支配されていました。
そのような中、バフェット氏はニューヨーク・タイムズに「Buy American. I am (アメリカ株を買おう、私は実行中)」というタイトルの記事を投稿し、「株式市場の過去100年を振り返ると、株式投資で損をする方が難しい。それなのに損をする人は多い。不遇な投資家は、環境が良い時だけ投資し、記事の見出しが恐怖感をもたらすときに売却するからだ」と述べました。
つみたてNISA(少額投資非課税制度)などを活用して投資信託でコツコツ投資をしている人でも、株式市場が暴落した際には、パニックに陥り慌てて解約しようとする動きが見られます。しかしながら感情に支配されたら株式市場では負け。実際にバフェット氏は多くの株を“バーゲン価格”で買い、その後米国市場の回復とともに莫大な利益を手にしたのです。
「投資の神様」は、90歳になってもパワフルに行動し続ける
本年8月、バフェット氏は日本の5大商社株へ約6700億円規模の投資を行い「日本と5社の未来に参画できるのを嬉しく思う」との声明を出しました。過去に日本の上場株を保有しなかったことでも知られるバフェット氏の行動はまさにサプライズ!
「本来の企業価値と比べて、株価がバカバカしいほど安い水準で売られた時に買うことで利益が得られる」の名言もあるバフェット氏。日本の商社株への投資は、自らの投資の大原則に従って実行したと考えられます。90歳になってもパワフルに行動し続けるバフェット氏の名言を、ぜひあなたの投資のヒントにしてみてください。