仕事一筋の開業医が築いた1億円を“溶かさない”資産運用アドバイス
“お金のかかりつけ医” IFAのアドバイス事例

仕事一筋の開業医が築いた1億円を“溶かさない”資産運用アドバイス

  • 公開日:2020.11.04

Editor's Eye

銀行や証券会社等の金融機関と比べ、長期的な目線で資産相談に応じると言われるIFA(独立系ファイナンシャルアドバイザー)。実際に、彼らは相談者に対してどんなアドバイスをしているのでしょうか。IFAが印象深かった相談内容を振り返るシリーズ連載第9回では、東京・新宿のIFA法人バリューアドバイザーズの小林裕(ゆたか)さんに、第二の人生を歩み始めた開業医へのアドバイスについて語ってもらいます。

今回は愛知県在住の医師、宮本雄二さんの例をご紹介します。

相談者:
宮本 雄二さん(66) 医師

ご家族:
妻  優子さん(63)
長女 恵美さん(30)
長男 隼人さん(28)

(いずれも仮名)

開業医の宮本さんは、経営するクリニックの税務顧問を務める会計事務所が当社の提携先だった縁で相談を受けるようになりました。会計事務所というと、お金の相談を一手に引き受けるイメージもありますが、個人の資産運用に関するアドバイスは一般的に会計士の範囲外となるため、当社を紹介いただきました。

宮本さんのご家庭は2人のお子さんも医師であり、相談時にはちょうど跡継ぎとなる息子さんにクリニックを事業承継する手続きをされていました。それまでは毎日多くの患者さんに接する忙しい日々を送っていましたが、息子さんにバトンタッチしたことで診療が週2日程度に減り、肩の荷が下りたご様子です。

それまでは仕事一筋で、1億円にも達する資産があってもそれを使う暇はなかったという宮本さんですが、これからは余暇を楽しみたいとおっしゃっていました。実際、奥様と旅行に出かけるようになり、証券会社の口座も開いて、これまでは預貯金一辺倒だった資産の運用も始めていました。当時は営業マンに勧められた上場株式の公募案件を保有しているだけでしたが、「今後は自分で銘柄を選んで投資をしたい」と意欲的でした。

世の中には株取引が趣味という方は大勢いますし、選んだ銘柄がうまく値上がりすれば大きな利益も狙えるわけですから、知的なゲームのような感覚で楽しめるのはよく分かります。ただ、このようにハラハラドキドキする運用は、資産運用の柱に据えるべきではないというのが当社の考えです。

長期で世界経済の成長の恩恵を受けながらじっくり増やしていくコア運用を柱とし、個別株のような、ある程度短期的な利益を狙う投資先資産・運用方法はサテライト運用として比較的小さな金額で投資をする。さらに、不測の事態に備えて現金を残していくのが基本です。

「投資」というと、多くの人はギャンブル的なものを想像すると思いますが、これはサテライト運用の典型です。投資対象を特定の企業に絞ってしまえば、比較的大きな利益が狙える反面、倒産や業績悪化で資金を減らすリスクも大きくなるからです。宮本さんの希望されている個別株への投資は、あくまでも資産のごく一部でトライするべき投資と言えます。

一方で、世界経済そのものが破綻することは考えられません。もちろん、価格の変動は起きますが、コアとなる世界分散投資では長期的な成長を目指し、相場を予測したり、目先のマーケットの動きに一喜一憂する必要はありません。じっくり保有しているだけでいいのです。ハイリスクなサテライト運用は、「コア運用だけではつまらない」と感じる人にだけ、趣味的な位置付けで少額でのチャレンジをお勧めしています。

宮本さんにこの方針を説明すると共感してくださり、1億1000万円の資金でコア・サテライト投資をスタートすることになりました。

内訳は柱となるコア運用に9000万円。1000万円は預貯金に置いておき、残りの1000万円をサテライト運用に充てることにしました。コア運用の9000万円は、6000万円を安定したリターンが期待できる債券に、残る3000万円は投資信託を活用した国際分散投資に振り向けました。

債券については、ソフトバンク、カナダの銀行、第一生命、三井住友海上の劣後債(倒産などの際の弁済を受ける優先順位は低いが、利回りは高い債券)を組み合わせ、年250万円(税引き前)の利息を得られるポートフォリオをつくりました。奥様と年2回ほど楽しまれている海外旅行の予算は1回当たり100万円ということなので、ちょうど税引き後でその費用を賄える計算です。

債券は値動きも安定しており、定期的な利金を受けられるメリットがある反面、複利効果はなく資産が成長する余地も大きくありません。そこで残りの3000万円では、高い成長が期待できる米国株を中心とした、外国株式に投資する3本の投資信託に分散投資しました。

そして、もともと希望されていた個別株投資は、サテライト運用として1000万円で国内株に挑戦することに。同じ日本株でも、投資信託で幅広く分散投資するならコア運用に入りますが、あくまで個別の企業の成長にベットするので、これはサテライト運用になります。

社会や経済に対する関心も高い宮本さんは、まさに「趣味としての投資」を楽しんでいらっしゃるようで、新聞やニュースを毎日チェックしては、気になる銘柄や成長が期待できそうな業界について時折意見を求めてこられます。そのたびに、投資に役立ちそうなデータや情報をお知らせしています。

私たちIFAは、基本的に転勤や異動がないため、配偶者の方はもちろん、お子様やお孫さんなど、何世代にもわたって相談いただけるのが強みです。宮本さんのケースでも、奥様と息子さんに資産運用のアドバイスをさせていただきました。

奥様に関しては、運用利益が非課税となる一般NISAの制度を活用し、毎年非課税枠の上限である120万円で外国株投信を購入していくサポートをしています。これに加え、こうした資金から海外旅行の際のお小遣いが出るとうれしいとのご希望があったため、毎年利金が出る劣後債も紹介しました。

一方息子さんは、会計事務所のアドバイスもあり、以前から相続対策となる生前贈与を受けていました。そこでこのお金の運用先として、投資信託を使った国際分散投資をご紹介しました。さらに、iDeCoとつみたてNISAを上限まで活用し、月々の収入からも投資をする提案をしています。特にiDeCoは、高収入の方ほど節税効果が大きくなるので真っ先に利用しておきたい制度です。

息子さんへのアドバイスは、宮本さんから預かっていた「息子には早くから有効なお金の使い方を身に付けてほしい」というご希望に基づいて、確認や売買の手間をかけずに時間を味方につける資産運用の手段をご案内しました。

私は現在、主に宮本さんのような経営者の方や、士業のお客さまを担当しています。こうしたお客さまの関心事や悩みごとは、ご自身の資産運用にとどまらず、事業承継・本業の経営やマネジメントといった分野に及ぶことも少なくありません。意外かもしれませんが、高い専門性を持つ医師や士業の方々は、金融という別の分野におけるプロフェッショナルとの接点をお持ちでないケースが多いようです。当社は会計事務所の他、税理士や弁護士等、他ジャンルのプロとも提携しているので、お客さまの幅広いご相談に応えられるよう、月に3回マネジメントの研修に通い、あわせて証券アナリストの資格取得を目指して勉強中です。

自分の知識が増えることで、お客さまのニーズに応えられる場面も増えてきたことに、大きなやりがいを感じています。来年からは、私以外の当社のアドバイザーも全員、同様の研修を受けることになりました。大きな意味での「資産」について、幅広い分野で頼もしい相談相手になれるよう、今後も研鑽を続けていきたいと思っています。

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著者

小林 裕 バリューアドバイザーズ 執行役員
小林 裕
1986年三重県津市生まれ。大学卒業後、岡三証券に入社。新人賞の他、中級職全国1位など毎年多数のタイトルを獲得。 転勤がなく全国対応ができるIFA業務に関心を持ち、2017年、IFAに転身。 2018年、2019年2年連続で「株主手帳が選ぶ投資プロ」に選出。 2019年、資産運用から相続まで一貫したサポートをするために証券相続の窓口ホームページを開設。2019年、バリューアドバイザーズの執行役員に就任。日本証券アナリスト協会認定のプライマリープライベートバンカーと相続診断協会認定の上級相続診断士としても活動中。

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