お金を貯められる脳に! 脱・無駄遣いのための脳科学的アプローチ
科学的に正しい、お金との付き合い方 前編

お金を貯められる脳に! 脱・無駄遣いのための脳科学的アプローチ

  • 公開日:2020.11.05

Editor's Eye

貯蓄から投資へ――。頭では投資が重要だと分かっていても、なかなか行動を起こせないという方も多いでしょう。その二大要因は、①お金を無駄遣いしてしまって、投資に回すお金がないという資金面と、②投資はなんだか怖いという不安にあるのではないでしょうか。そこで、この資産運用の壁となる二大要因を脳科学の見地から紐解いていただきたく、医学博士で「脳の学校」代表の加藤俊徳先生にお話を伺いました。前編では①の無駄遣いについて解説いただきます。

この人に聞きました

かとうとしのり

加藤 俊徳先生

脳内科医・医学博士  「脳の学校」代表

昭和大学客員教授。MRI脳画像診断、発達障害・ADHD、認知症の専門家。MRI脳画像診断を用いて、小児から超高齢者まで1万人以上を診断・治療。2006年「脳の学校」を創業。脳番地トレーニングメソッドを開発・普及。2013年、加藤プラチナクリニックを開設。独自開発した加藤式MRI脳画像法を用いて、脳の成長段階、得意な脳番地、不得意な脳番地を診断し、薬だけに頼らない脳番地トレの処方を行う。近著に『ぐうたらな自分を変える教科書 やる気が出る脳』(すばる舎)、『脳とココロのしくみ入門』(朝日新聞社)。

投資の基本は「長期・積立」。収入から生活費や保険料などを払ったうえで、例えば毎月1万円なら1万円と、決めた額をプールし、投資に回す習慣が欠かせません。あるいは、投資を始める前にまず生活防衛費として貯金をしておきたいという人も同様に、月々決めた金額を別の口座にプールする必要があるでしょう。いずれにしても、入ってくるお金を計画もなしに無駄遣いし、使い果たしていたら、投資はいつまでたっても始められないということです。

そこで前編では、人が無駄遣いをしてしまうメカニズムと回避策にフォーカスして、お話を伺いました。

まず、この先の解説に欠かせない加藤先生の考案した「脳番地」について説明します。脳には、1000億を超える神経細胞があり、同じような役割を持つ細胞は集団となって働いています。そこで加藤先生は、脳を1つの町に見立て、それぞれの集団に番地をふって、「脳番地」と命名。以下、主要な8つの番地の特徴をまとめました。

図版

①思考系脳番地物事について考えたり、判断する脳番地。脳全体の司令塔として、他の脳番地に指令を出して情報を集める役割も。
②理解系脳番地聴覚や視覚などを通して集まってきた情報を理解したり、解釈する。自分自身に対しての理解、ものごとや他人に対する理解もここで行う。
③記憶系脳番地脳に新しい情報を蓄えたり、蓄積されている記憶を呼び出し、思考系や感情系など他の7つの脳番地に提供する。
④感情系脳番地感情を生み出す脳番地。他人の感情を読みとったり、自分の気持ちのコントロールをする。
⑤伝達系脳番地言葉や表情、身振り手振りなどを使ってコミュニケーションする脳番地。自分の考えや思いを伝えるのに不可欠。
⑥視覚系脳番地目からインプットした情報を他の脳番地に渡す。ここが発達していると、審美眼が優れているということにもなる。
⑦聴覚系脳番地耳からインプットした情報を他の脳番地に渡す。コミュニケーション能力とも深い関係がある。
⑧運動系脳番地思考系からの命令に従って、実際に体を動かすための脳番地。手先、目、口、足などあらゆる体のパーツの動きに関わる。

さて、脳番地の特徴が分かったところで本題に入りましょう。

「無駄遣いはよくない」と分かっていても、うっかり必要のないものまで買ってしてしまう……性格のせい? と考えがちですが、加藤先生は脳の使い方に原因があると言います。

「私たちは日頃、8つの脳番地をまんべんなく使っています。買い物も同様です。まず運動系脳番地によって売り場まで行きます。そして、商品を見るときは視覚系脳番地を使い、伝達系脳番地を使って店員さんとコミュニケーションを取り、聴覚系脳番地を使って話を聞きます。『これ、いいな』とわくわくさせるのは感情系脳番地。じっくり観察して自分に似合うか?などと吟味できるのは理解系脳番地が働いているからです。さらに過去の経験や手持ちに似たものはなかったか?など記憶を探るのは記憶系脳番地の役目。最終的に思考系脳番地を活動させて、買うかどうか判断を下すのです。このように8つの脳番地がフルに活動し、相互に作用しあっています。ところが、それぞれの脳番地がうまく活動していないと、不必要な買い物、衝動買いといった“後悔する”買い物をしてしまうのです」(加藤先生)

では、どうしてうまく活動しない脳番地があるのでしょうか。
「それは、脳のコンディション不良と各個人の脳の使い方のクセという2つの原因があります。脳のコンディション不良は、多くの人の場合、睡眠不足と昼間の運動不足が原因で、いうなれば“ボーッと”した、働いていない状態なのです」(加藤先生)。
つまり、まず脳の状態を活性化しておくことが、誰にとっても重要なわけです。7時間以上の睡眠と、日中のウォーキング(目標は7000歩)が効果的だとか。

そして、脳のクセというのは、もともとの遺伝による差も一部存在しますが、その人の行動パターンや欲求によって、「よく使う脳番地」と「使わない脳番地」が出てくることが大きな要因です。よく使う脳番地は発達がよく、使わない脳番地は未発達ということ。この脳のクセは日頃の行動、習慣によるところが大きい分、千差万別です。そこで、代表的なケーススタディで見ていくことにしましょう。

ここからは、具体的に多くの人が陥りがちな無駄遣いの4つの例を取り上げ、脳のクセとは?とその場でできる無駄遣い回避策を解説。さらに各ケースが思い当たった場合、あなたはどの脳番地を意識的に鍛えるのがおすすめかも併せて示します。

「今なら50%オフ」「ポイント10倍」etc.魅力的な文句が売り場にあふれています。半額だからついでにあれも、ポイントを貯めたいからこれも買っておこう。でも結局その時買ったものはもう何カ月もどこかにしまったまま……こんな経験に心当たりはありませんか?

「人は自分が『得をした』と思えると、興奮状態になります。脳はこの快感を求めて、思考力を鈍らせてしまうのです。回避するにはいったんその場から離れ、頭をクールダウンさせ、麻痺した思考系番地を回復させましょう。そして落ち着いてから売り場に戻り、本当にお得か? たとえお得でなくても欲しいモノなのか? を自問自答しましょう」(加藤先生)。

鍛えるべき脳番地は……
思考系脳番地、視覚系脳番地、感情系脳番地
※ページの最後に脳番地ごとのおすすめ脳トレ習慣をご紹介します(以下同)。

仕事や勉強。頑張っているけれど、誰が褒めてくれるわけでもない……自分で自分を褒めなくてはやってられない、となかば衝動的に買い物。こんな経験に心当たりはありませんか?

「欲求不満を解消したい、成果、報酬がないと頑張れないというのは自然なことです。ただその衝動のままに行動するのがよくないわけで、予め計画することが大事です。例えば、この作業とこの作業の間にご褒美スイーツを食べる、洋服など値の張る買い物なら、スケジュール帳を開いて、この日に買いに行く、というふうに。また欲求不満を解消するのはご褒美を買う以外にも、自分で自分を褒める『ほめ日記』をつける、あるいは趣味に没頭するのも効果的です」(加藤先生)。

鍛えるべき脳番地は……
感情系脳番地、思考系脳番地、運動系脳番地

軽い気持ちで試着してみたのに、店員さんは褒め上手。その言葉に背中を押されて、気づけば購入。家で、再び着てみたら「そこまで素敵なアイテムだろうか?」と、後悔した経験を持つ方も多いのではないでしょうか。

「聴覚系脳番地が弱い人は、周囲の言葉から影響を受けやすくなっています。また一般的に男性のほうが、脳の聞く力が弱い傾向もあります。試着のシーンでは見て、触って、記憶を呼び起こしてというトータルでの情報処理が必要なのですが、聴覚系脳番地が弱いと耳に入った言葉に引きずられてしまうのです。鏡で自分の姿を見て、視覚系脳番地を発動させたり、いったん『他の店も見てきます』とその場を離れたりすることが有効です」(加藤先生)

鍛えるべき脳番地は……
聴覚系脳番地、視覚系脳番地、記憶系脳番地

目まぐるしく現れては消えるトレンド。取り入れてお洒落な人と思われたい、ダサいと思われたくない……と「ひとまず」手に入れたものの、満足度が高い買い物だったとは言えないこと、心当たりはありませんか?

「『この流行は自分に合っているのか?』という自己分析力が弱い人は流行りものを追いかける可能性が高いです。何度もそのモノを眺めて、本当にほしいか考えたり、過去に同じく流行りものを手に入れて失敗したことがないか記憶を探ったりするのもいいでしょう」(加藤先生)。

鍛えるべき脳番地は……
理解系脳番地、記憶系脳番地、思考系脳番地

ちなみに、4つのケースでは登場しませんでしたが、伝達系脳番地が弱い場合は自分の意図や希望を相手に上手に伝えることができないために満足いくモノが買えないという失敗が考えられます。

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Finasee編集部
金融事情・現場に精通するスタッフ陣が、目に見えない「金融」を見える化し、わかりやすく伝える記事を発信します。

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