いつがベスト?役所が絶対教えてくれない「得する定年退職日」とは
「R50」の新常識 余裕の老後は知識で築く! 9

いつがベスト?役所が絶対教えてくれない「得する定年退職日」とは

  • 公開日:2020.10.30

Editor's Eye

人生100年時代において、50歳はまだまだ折り返し地点。特に、これからの時代に必要になってくるのは「働きながら年金をもらい、資産を上手に使う」という発想です。単に貯めるだけでなく、リタイア後のお金の準備も始めておきたい「R50」世代に向けて、長年マネー誌、ビジネス誌の編集に携わり、年金関連の取材・執筆を多数手掛けてきたフリーライターの森田聡子(としこ)氏が解説するシリーズ連載。第9回は、退職年齢の“スタンダード”が60歳から65歳に変わりつつある中で、受け取れる雇用保険の金額を大きく左右する「定年退職のタイミング」について詳しく見ていきます。

60歳で完全リタイアするサラリーマンは、もはや少数派になってしまいました。厚生労働省「令和元年 高年齢者の雇用状況」調査によると、60歳定年の企業で2018年6月1日からの1年間に定年を迎えた36万2232人のうち、84.7%に当たる30万6949人が、継続雇用の制度を使って引き続き働き続ける道を選んでいます。

内閣府が2019年に発表した「老後の生活設計と公的年金に関する世論調査」では、50代の5人に1人が「年金を受け取れる年齢になるまで働きたい」と回答しました。公的年金の受給開始年齢となる65歳まで働くとしたら、注意したいのが「雇用保険制度」です。

一定の要件を満たしたサラリーマンは自動的に雇用保険に加入しており、退職後は被保険者だった期間に応じた失業給付を受け取る資格を有します(退職日までの2年以内に、通算で12カ月以上雇用保険に加入している必要があります)。しかし、退職時の年齢によって雇用保険の制度が異なり、その影響で失業給付を受け取れる期間が大きく変わってしまうのです。

そこで今回は、知らないうちに損をしてしまう可能性がある雇用保険制度についてお話ししたいと思います。

再雇用や継続雇用の場合、ちょうど65歳を迎えた日や、65歳を迎えた月の月末に退職する、という人が多いようです。しかし、雇用保険の失業給付は65歳を境に該当する制度が変わります。結果として、65歳になってから退職するか、64歳11カ月で(誕生日の前々日までに)早めに退職するかによって、失業給付の中身が違ってくるのです。

65歳以降の退職だと、失業給付は「高年齢求職者給付金」となり、被保険者期間が1年未満なら「基本手当日額」の30日分、1年以上なら50日分を一時金として受け取る形です。

これに対し、64歳11カ月までに退職すると通常の失業給付(正式名称は「基本手当」)の対象となり、被保険者期間に応じて最低90日間、最長150日間にわたって基本手当日額分が支給されます。

ちなみにここで言う基本手当日額とは、退職前6カ月間の給与の合計(賞与は含みません)を180(日数)で割った「賃金日額」に50~80%(給付率、60~64歳は45~80%)をかけたものです。給付率は賃金日額の多寡によって決められ、賃金日額が少ない人ほど高い給付率が適用されます。

ざっくり言ってしまうと、退職前の給与の5~8割の失業給付が受け取れる、ということです。

通常の失業給付は最低でも基本手当日額の「90日分」が担保されているのに対し、高年齢求職者給付金は最長で「50日分」しかもらえません。仮に、被保険者期間が44年、基本手当日額が5000円だったとすると、通常の失業給付の総支給額は5000円×150日=75万円ですが、高年齢求職者給付金は5000円×50日=25万円。わずか数日の退職日の違いで、50万円もの差が付いてしまうのです。

つまり、雇用保険からの失業給付を有利に受け取るためには、「64歳11カ月(誕生日の前々日まで)」での退職が望ましいわけです。

ただし、会社によっては就業規則などで満65歳の誕生日が退職日と決められていることもあるかもしれません。その場合、誕生日の前々日での退職は「自己都合退職」扱いとなり、失業給付には給付制限がかかります。結果として、実際に受け取る時期が遅くなってしまうので注意が必要です。

失業給付は本来“求職者のための制度”であって、求職中の生活支援の目的で支給されるものです。よって、給付金を手にするまでの手続きはそれなりに厄介になることを覚悟しておく必要があります。

まずは、住所地を管轄するハローワークで求職申し込みを行い、退職時に会社から発行された「雇用保険被保険者離職票」などの必要書類を提出します。不備がなければ受給資格が決定し、「雇用保険受給者初回説明会」の日時を案内されます。

説明会は7日間の待機期間を経た後に開かれ、そこで指示された「第1回失業認定日」まで各自、求職活動を行うことになっています。そして認定日には「失業認定報告書」を提出し、問題がなければ1週間以内に給付金が指定の口座に振り込まれるというフローです。

認定日は原則として4週間に1度設定され、その都度、ハローワークまで足を運ばなければなりません。さらに、再就職の意思があり、既定の回数の求職活動を行ったことを、認定日のたびに申告する必要があります(求職の意思は、ハローワークの指定する就職支援セミナーを受講したり、会社説明会&面接会などに出席したりすることでも示すことができます)。

“退職金のおまけ”をもらうような軽い気持ちでハローワークに出向くと、手続きの煩雑さにびっくりするかもしれません。しかし、数十万円の収入を得るためですから、腰を据えてしっかり手続きを行いましょう。

さて、65歳で退職した後、小遣い稼ぎにパートやアルバイトで働くという方もいらっしゃるかもしれません。その場合は、また雇用保険に加入できる可能性があります。31日以上雇用される見込みがあり、週20時間以上勤務する労働者は、加入が義務付けられているからです。

2020年4月以降は、65歳以上の労働者も給与天引きの形で雇用保険料を負担することになりました。しかし、保険料率は0.3%(2020年度の「一般の事業」の自己負担分)と低く、退職時に失業給付(高年齢求職者給付金)がもらえる、介護休業時に給付金が支給される、資格取得や外国語習得の際に教育訓練給付制度が利用できるなど、加入のメリットは少なくありません。

2021年4月からは70歳までの就業機会確保が企業の努力義務となるなど、「生涯現役社会」が現実味を帯びてきました。何歳まで働くにせよ、労働者であり続ける間は雇用保険とうまく付き合っていきたいものです。

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著者

森田 聡子 金融ライター/編集者
森田 聡子
日経ホーム出版社、日経BP社にて『日経おとなのOFF』編集長、『日経マネー』副編集長、『日経ビジネス』副編集長などを歴任。2019年に独立後は雑誌やウェブサイトなどで、幅広い年代層のマネー初心者に、投資・税金・保険などの話をやさしく、分かりやすく伝えることをモットーに活動している。

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