お金、やりがい、もあるけど……Z世代が就職先に求める「ESGな要素」

お金、やりがい、もあるけど……Z世代が就職先に求める「ESGな要素」

  • 公開日:2020.11.11

Editor's Eye

普段ことさら社会貢献に意識を向けていない人でも、ESG、SDGsといった言葉は聞いたことがあるのではないでしょうか。環境・社会・企業統治の頭文字を取ったESGや、国連で採択された世界共通の「持続可能な開発目標」SDGsは、経済に直接関係しないようにも見えますが、実は企業経営や、ひいては投資・資産運用の世界にも大きな影響を与えています。日本総合研究所でESG研究のスペシャリストとして活躍する小島明子氏が、若者を対象に実施した調査結果を通じて、ESG・SDGsの存在感の大きさを3回シリーズで解説します。

 

ユニセフ(国連児童基金)・イノチェンティ研究所が2020年9月に発表した「レポートカード16-子どもたちに影響する世界:先進国の子どもの幸福度を形作るものは何か」によれば、日本の子どもの幸福度の総合順位は先進国38カ国中20位であったことが明らかになっています。中でも「精神的幸福度」は37位と非常に低い順位です。

今の日本の若者たちは、一体どのような社会や企業の在り方を望み、働き方含め個人としてどのような行動を取りたいと考えているのでしょうか。日本総合研究所は、若者の声を集めるために、2020年5月に、全国の中学生、高校生、大学生に焦点を当て「若者の意識調査(報告)― ESGおよびSDGs、キャリア等に対する意識 ―」(以下、本調査)を実施しました。この調査に基づき、働き方、ESG、SDGsとそれぞれテーマを分けて、1996年から2015年に生まれたいわゆる「Z世代」を多く含む若者たちの望む企業の在り方について考えていきます。

本調査によれば、就職したい企業や団体の条件として、大学生、高校生、中学生の男女が最も多く挙げているのが「給料が高い」ことです。特に、男子においては約4割に上り、働く上で給料は非常に重要視されていることが明らかになっています。続いて、(属性によってやや順位は異なりますが)「働く時間や場所を柔軟に選べる(例:テレワーク)」ことや「働く日数が柔軟に選べる(例:週休3日制)」などに一定の関心が集まったものの、それぞれ2割以下にとどまっているのが現状です。自由記述の中でも、給料に対する意見が多く寄せられています。

「なぜ若者の給料を上げないのか理由を知りたい。不景気であることは知っているが、税金は上がっているのに給料だけ上がらないのでは生活が苦しいと感じる。労働量に見合う給料を出さない企業には貢献したくない」(大学生・女)

「第一に、雇用を守ってほしい。第二に、利益を従業員へ還元してほしい」(中学生・男)

「金に余裕のある企業にはもう少し給料を上げていただきたいですね」(大学生・男)

このほか、「仕事は楽しくない」というイメージを持っている意見もありました。

「大人は楽しくなさそうな人が多い気がする。そんなに頑張らないと生きていけないのかなと思うと将来が不安になる」(中学生・男)

「親が仕事から帰ってくると『疲れた』とばかり言っているので、仕事は楽しくないものだと思っている」(中学生・男)

また、いわゆる「ブラック企業」への批判などが多く含まれていたことも特徴的でした。

以前は、仕事を選択する際に「安定した雇用と高い給料がもらえる仕事をするか」、あるいは「給料は安くてもやりがいのある仕事をするか」という、主にこのいずれかに悩む人が多かったイメージがありました。一方で、本調査の若者の意見を踏まえれば、現在の企業はそのいずれをも提供できておらず、夢を持って働く気持ちが非常に持ちづらいのかもしれません。

しかし、少子高齢化で労働人口が減少していくことが予想される中、企業が魅力的な職場環境を提供できなければ、優秀な人材の獲得や、採用した若者の定着も難しくなることが予想されます。企業が成長し続ける上では、若者たちが意欲を高めていける職場環境の在り方について、私たち大人が真剣に考え、取り組んでいく必要があるでしょう。

若者の中でも、特に女性はどのようなキャリア意識を持っているのでしょうか。

将来、結婚をして子どもを持ったときの理想の働き方を聞く設問では「共働き(自分・結婚相手共に働く)」(44.1%)を選んだ若者が最も多く、「自分が働いて、結婚相手が主に家事を担う」(14.2%)、「自分が主に家事を担い結婚相手が働く」(6.8%)はいずれも約1割程度です。「共働き(自分・結婚相手共に働く)」を選んだ若者は、男子(36.2%)よりも、女子(52.0%)が多いことも特徴的です。いまや専業主婦志向の女性は少なくなっていると言えます。

自由記述の中でも、働く現場における男女の格差に対する意見が寄せられていたことが特徴的です。

「男女年齢差別がなるべくない会社が増えるといいと考えています」(高校生・女)

「もっと下の世代に誇れる企業であってほしいです。終身雇用の時代はもう終わり! 男女関係なくスキルのある人材が評価されてほしいです」(大学生・女)

「女子が働きやすい環境作りをしているように感じるが、すべての企業がそのようなことをしているとは思えない」(大学生・女)

現実問題としても、女性活躍推進法が2016年に施行されて数年が経ちますが、未だに女性が働く上でさまざまな課題が残されています。

現在は、多くの企業が仕事と家庭の両立支援制度を整備し、女性の育児休業比率は9割を超えるなど、結婚・出産後も離職をせずに仕事と家庭の両立しながら働き続けることへの社会からの理解は高まっていると言えます。しかし一方で、諸外国と比べて、国内の女性の役員や管理職比率は著しく低く、その結果、男女の賃金格差も解消されていないという根深い問題も存在しています。

今回の自由記述に男女格差の問題を指摘する声が多かったのは、そのような現状を若い女性が正確に認識しているからだと感じます。企業が今後若い女性の活躍を推進していくのであれば、両立支援にとどまらず、性別問わず能力や成果を発揮し、それらがきちんと評価をされる職場環境づくりが必要であることは言うまでもありません。

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著者

小島 明子 日本総合研究所 スペシャリスト
小島 明子
CFP®認定者、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、国家資格キャリアコンサルタント。金融機関を経て日本総合研究所に入社。IESS客員主任研究員兼務。環境・社会・ガバナンス(ESG)の観点からの企業評価業務に従事。その一環として、女性を含む多様な人材の活躍推進に関する調査研究、企業向けに女性活躍や働き方改革推進状況の診断を行っている。主な著書に「女性発の働き方改革で男性も変わる、企業も変わる」(経営書院)、「わたしのための金融リテラシー」(共著・金融財政事情研究会)。

参考サイト
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