コストの負担は投資信託の「中の人」ファンドマネジャーを雇うため?
篠田尚子のファンド愛 9

コストの負担は投資信託の「中の人」ファンドマネジャーを雇うため?

  • 公開日:2020.11.10

Editor's Eye

投資信託の運用を担うファンドマネジャーは、特にアクティブファンドにおいてリターンの良し悪しのカギを握る存在。ファンドマネジャーがメディアなどに露出ケースも増えてきているものの、一方で、どんな人たちなのか、そもそもどんな仕事なのか、よく分からないという人がいまだに多いのも確かだろう。そこで、ファンドアナリストの篠田尚子氏に、ファンドマネジャーの役割、その重要性などを解説してもらった。

投資信託という金融商品の魅力の1つは、ファンドマネジャーに運用を任せられるという点にある。ファンドマネジャーとは、投資信託の組成・運用を行う運用会社に在籍する、いわばプロの運用者である。多くの運用会社では、日本株式、外国株式、オルタナティブ資産(リートなどの代替資産)などその会社が手掛ける運用商品に応じてチームが分かれており、各分野に精通したファンドマネジャーが投資家から集めた資金の運用を担っている。

世界に目を向けてみると、例えば米国では、「投資の神様」ウォーレン・バフェットや「テンバガー(株価が10倍以上になりそうな銘柄)」の名付け親ピーター・リンチなど、「スター」ファンドマネジャーが歴史に名を残してきた。かたや日本はというと、文化的な背景もあり、欧米のようにファンドマネジャー個人にスポットライトを当てることが少なく、今もなお「中の人」の印象が強い。しかし近年は、月次レポートにファンドマネジャーのコメントを写真付きで掲載する運用会社が増えたほか、Finaseeを含め、ファンドマネジャーに焦点を当てたコンテンツも目立つようになった。

個人的には、足元のこうした傾向を歓迎している。なぜなら、アクティブファンドで相対的に高い報酬を負担するということは、つまりそのフィーで「ファンドマネジャーを雇う」ことと同義であるからだ。

そこで、ここからは投資信託の影の立役者ファンドマネジャーについて、個人投資家の誤解が多いポイントも含め解説をしていきたい。

「ファンドマネジャー」と聞いて多くの方が思い浮かべるのは、相場全体を見通しながら決算資料を読み込んだり、企業の経営者に話を聞いたりして有望な銘柄を発掘する姿であろう。これはジャッジメンタルと呼ばれる、アクティブファンドの代表的な運用手法である。ジャッジメンタルのマネジャーに求められるのは、相場環境を読み解き、有望な銘柄を発掘する目利き力である。

もう1つ、高度な数量分析に基づいて作られた運用モデルで、機械的に投資判断を行うクオンツと呼ばれる運用手法もある。クオンツは近年、「投資のソムリエ」(アセットマネジメントOne)や「ダブル・ブレイン」(野村アセットマネジメント)など可変配分型のバランスファンドで活用されるケースが増えているため、耳にしたことがあるという方もいるかもしれない。

クオンツのファンドマネジャーに求められるのは、先のジャッジメンタル運用のような目利き力ではなく、モデルの正確性だ。クオンツマネジャーは、運用モデルがきちんと機能しているかを常時モニターし、適宜モデルを改良している。

よく投資信託の運用は、1人のファンドマネジャーが企業訪問から実際の運用まで行うものと思っている方がいるが、基本的に投資信託の運用はチーム単位で行われる。これは、ジャッジメンタル運用でもクオンツ運用でも同様である。

「ファンドマネジャー」と一口に言っても、運用者としての経験値や経歴はもちろん、運用スタイルや得意とする分野も異なる。経験値の異なる複数名のファンドマネジャーでチームを作ることにより、若手マネジャーの育成が可能になるだけでなく、各人の個性が良い方向に発揮されることが期待できるのである。

また、規模の大きい運用会社にはロンドン、ニューヨーク、香港など地域別に拠点があり、各拠点でファンドマネジャーが運用を行っている。例えば、同じ日本株を担当しているファンドマネジャーでも、日本国内で日本株市場を見ているマネジャーと、海外から日本株市場を見ているマネジャーでは着目するポイントが異なることがある。そこで、運用会社によっては、国を超えてチームを組成し、グローバルな視点を取り入れながら、世界中の投資家に運用商品を提供している。

さらに、ファンドマネジャーは特定のファンドを1本だけ運用していると思われがちだが、実際には複数のファンドを同時に運用していることが少なくない。規模によって差はあるが、運用会社は個人向けの商品だけでなく、年金基金など機関投資家向けの商品も展開しているためだ。より厳密に言えば、ファンドマネジャーは個々のファンド単位というより、自身が担当する運用戦略単位で担当ファンドを抱えているケースが多い。例えば、Aという運用戦略を担当しているファンドマネジャーは、同じ戦略を用いた個人向けと機関投資家向けの双方の運用を担う、といったイメージである。

一般的に、年金基金などの機関投資家は個人投資家よりも長期の投資ホライズン(投資期間の長さ)を持つ。したがって、同じ戦略であっても、機関投資家向けの商品と個人投資家向けの商品では商品性に多少の違いがある。ファンドマネジャーは、こうした点も考慮に入れながら自身が担当する商品を運用しているのである。

筆者は、世界中の個性豊かなファンドマネジャーにお会いし、運用の舞台裏についてあれこれ聞けることこそが、ファンドアナリストという仕事の特権であり、醍醐味であると思っている。アクティブファンドの場合は特に、ファンドマネジャーのプロの運用者としての理念がポートフォリオに色濃く反映され、最終的に運用成績という結果として表れる。

だからこそ、ファンドを選ぶ際は「この会社なら、この人なら、任せられる」という安心感を得られるかどうかも重要になる。相応のコストを負担してアクティブファンドを保有するということはつまり、「ファンドマネジャーを雇う」ことと同じなのだ。

冒頭でも述べた通り、最近はファンドマネジャーが直接個人投資家に向けて情報を発信する機会も増えたほか、月次報告書や臨時レポートにファンドマネジャーのコメントを掲載する運用会社も増えている。すべての運用会社、すべてのファンドで対応しているわけではないが、多くはインターネット上で公開されているため、ぜひファンド選びの参考にしてほしい。

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著者

篠田 尚子 楽天証券経済研究所 ファンドアナリスト
篠田 尚子
慶應義塾大学卒業後、国内銀行を経て2006年ロイター・ジャパン入社。傘下の投資信託評価機関リッパーにて、投信業界の分析レポート執筆、評価分析などの業務に従事。2013年、楽天証券経済研究所入所。日本には数少ないファンドアナリストとして、評価分析業務の他、資産形成セミナーの講師も務めるなど投資教育にも積極的に取り組む。近著に『【最新版】本当にお金が増える投資信託は、この10本です。』(SBクリエイティブ)。

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