「生活レベルは保ちたい」48歳・医師“おひとり様の老後”の迎え方は?
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「生活レベルは保ちたい」48歳・医師“おひとり様の老後”の迎え方は?

  • 公開日:2020.12.02

Editor's Eye

資産運用にまつわるお悩みにプロが回答するシリーズ。今回の相談者は、年収1000万円の独身女性医師。「今の生活レベルをできるだけ保ちたい」という願望がある一方で、自分の老後――とりわけお金の準備とおひとり様としての“終活”に不安を抱えています。法律にも明るいファイナンシャルプランナー竹内美土璃さんにおひとり様の老後に備えていくにあたって、今彼女にできることをアドバイスしていただきました。

【鈴木明子(仮名)さんのプロフィールとお金データ】
48歳、愛知県在住。大学病院に勤める医師。両親が建てた一軒家の実家で母と2人暮らし。明子さん自身に婚姻歴や子供はなく、今後も「おひとり様」を想定している。昨年に父親が急逝し、株式を相続している。

【寄せられたお悩み】
「今は母も元気で一軒家でいっしょに暮らしていますが、今後、母が他界したら、マンションに移り住もうと思っています。お金の貯め方は今のままでいいのか……特に老後のお金は足りるのかが不安です。また、老後と言えば自分自身が認知症になった場合の財産管理などにも不安を感じます。そうした老後の備えを始めたいと思うものの、具体的に何から手をつけたらいいか分かりません」

【お悩みの論点】
①今の生活レベルはできれば崩したくないが、今後、お金は足りるのか?
②母が他界したら、マンションに移り住もうと思っている。いくら必要か?
③自身の老後のことが心配。例えば、自分が認知症になった場合は?

【資産状況】
金融資産額:約9500万円
内訳
預貯金: 8000万円
株式:1500万円ほど(父から相続した株式、自分で購入した株式を合わせて)

【収支】
<収入>
・毎月の手取り収入:80万円
・手取りの年収:約1000万円  
<支出>

・毎月の支出:約48万円(詳細以下)

※母親が払っているため、住居費・水道光熱費はなし。

※1……「コロナで減りつつありますが、外食が多く、かかるときはこれくらいかかります」

※2……「母の分のケータイ代も払っています」

※3……「iDeCoの手続きを始める予定なので、計上します。私は1万2000円が上限額なので、正直なところ、これではあまり貯まらないと思っています」

※4……「支出から、余った分を貯金しています」

***

現在、お母様と2人でご両親が建てた一軒家にお住いの鈴木明子さん。明子さんはお医者様(勤務医)でいらっしゃって、お給料がすべてご自身のお小遣いのようなもの。お金の心配が全くなかったところに、昨年末にお父様が急逝され、やっと今置かれている環境と、ご家族やご自身の将来について現実的にとらえられた、ということですね。

お母様の今後のお金については心配がないとのことでしたので、明子さんの「お金の作り方」と「今後考えられることへの対策」を一緒に考えていきましょう。

「将来のお金のことが心配だから備えたい! でも今の生活レベルをできるだけ保ちたい」これは永遠のテーマですよね。今の生活レベルを下げるのは大変です。特に、明子さんのように年収が多い方ほど、収入に応じて使うお金も多いはず。リタイア後のことを考えると、今から「将来の生活資金とお金の使い方」を計画的に考えていかれた方がいいでしょう。まずは、明子さんの収入から見ていくことにしますね。

今の病院の雇用条件で収入が継続するとしたら、65歳定年まで手取りの年収が1000万円、65歳定年後、再雇用で70歳まで働いたとしたらその5年間は手取り年収が650万円となると想定されます。その後、70歳から年金生活をするとしたら、年金額が年額280万円と予想されます。これに退職金2000万円が加わります。

では、その収入から、今度はどれくらい将来のために貯蓄していくか考えていきましょう。まず、最初にしてほしいことは、貯蓄方法の変更です。今までの、「余ったら貯蓄」方法ではなく「はじめからなかったものとして貯蓄」方法に変更しましょう。いわゆる先取り貯蓄というものです。貯蓄額としては、年収の3割です。つまり、明子さんは年収が現在1000万円あるので、65歳の現役時代までは毎年300万円を最初から貯蓄に回します。そして年収が700万円だったとして生活をするということです。
なぜ3割か? 明子さんが70歳以降、年金生活が始まると、年収280万円となり今の1/3以下になります。しかも、お母様が亡くなられたら今までお母様が負担されていた住居費、水道光熱費等を負担することになります。よって、この現役世代に貯めていく3割は、70歳以降の将来の明子さんのために使っていきます。

このように考え方を変えたら、今の生活レベルを少し落とせそうではありませんか? リタイア後の生活資金が準備できてさえいれば、余った700万円で、将来のお金のことは心配しなくて思いっきり楽しんで生活することができます。では、今度は具体的にいくら貯められるか見ていきましょう。

明子さんは現在、48歳。65歳まで手取り年収が1000万円なので1年で300万円貯蓄、300万円×17年=5100万円貯蓄できます。また、65歳から70歳まで再雇用された時の年収650万円なので1年で貯蓄額195万円、195万円×5年=975万円となり、合計①5100万円+②975万円=6075万円貯蓄できます。これに現在すでに所有している8000万円の預金、1500万円の株式と退職金2000万円で、70歳の時点で約1億7575万円の貯蓄額となりますね。これだけあれば、お悩みであるマンションへの住み替えも、有料老人ホームにも入ることも、万が一お母様のお世話をすることになった場合の介護資金も確保できます。これで将来のお金の心配から解放されるのではないでしょうか? 住み替えはまだ先になりそうなので、その時の明子さんの条件や法令も変わっていると思われます。まずは、お金を貯める習慣を身につけ、購入時に備えましょう。

次のステップは、その“先取り”でプールできたお金をどうするかです。現在、明子さんは8000万円の預金をお持ちであるため、これから作っていくお給料から振り分けられたお金は、「リタイア後の生活費に充てるためのお金」として投資に回し、お金を殖やすことも考えていきましょう。明子さんは投資はほぼ初心者ということでしたから、まずはハードルの低い、税制優遇されている制度のものから順に使っていくことをお勧めします。

1つ目は、iDeCo(個人型確定拠出年金)です。iDeCoは、①拠出時(お金をiDeCo口座で積立をするとき)②運用時(iDeCo口座で積立をしたお金を運用しているとき)③取り崩し時(60歳になってiDeCo口座から引き出しをするとき)の3つの税制優遇があります。

現在、明子さんは大学病院勤務でいらっしゃるので、iDeCoを月額1万2000円の拠出しかできません。ただし、2022年10月、月額2万円まで拠出可能となります。加えて、現在の加入期間は60歳までですが、2022年5月より65歳まで延長されますので、有効に使っていけます。

次に、おすすめするのがつみたてNISAです。こちらは年間40万円20年間積立ができるというもので、つみたてNISA口座内で積立をした商品の運用益が非課税になります。こちらはすでに始まっている制度で、さらに法改正によって2042年まで積立期間が延長しました。この枠をまずは使い切り、残りを通常の特定口座を使って運用をしていきましょう。

お金の心配がなくなったら、今度は今後の管理についてです。リタイア後心配なのは、「認知症や体が動か亡くなった時」の財産管理です。お子さんがいらっしゃれば、ある程度はお子さんにお願いできる場合もありますが、明子さんは独身でお子さんがいらっしゃらないとのこと。

事前に「任意後見契約」をしておくことをおすすめします。「任意後見契約」とは、ご自身の頭や体がしっかり働くうちは自分で管理をして、いよいよ判断能力が失われてしまった時に、明子さんが信用できる任意後見人に、明子さんの代わりに財産を管理したり、契約をしたりしてくれるようにあらかじめ決めておく契約書のことです。

この契約をしていれば、明子さんの判断力が失われても、明子さんが選んだ任意後見人が財産の管理や身上監護をしてくれますから、あらかじめ明子さんの希望を任意後見人候補者に伝えておけば、明子さんの希望に沿った人生を送ることが可能です。

また、これと併せて作成した方が良いのは、「財産管理委任契約」です。明子さんが認知症などで判断力が無くなって任意後見手続で対応する前の段階、判断力が無くなった訳ではないが気力や体力が衰えて、財産の管理を第三者に任せたいというときに備えて結ぶ契約です。また、明子さんはお子さんがいませんので、自分が死んだ後の葬儀を執り行ったり、サービス付き高齢者住宅や老人ホームなどにある遺品の処分をしたりしてくれる人がいなくて心配ということでしたら、「死後事務委任契約」を締結するのが良いでしょう。

さらに、自分の遺産を誰かに遺贈したり、団体に寄付したりしたいという希望があるのでしたら遺言も作成しておくのが良いでしょう。任意後見契約は公証役場で公正証書として作る必要があるため、財産管理委任契約や死後事務委任契約、遺言も併せて公正証書で作成すると良いでしょう。安心してご自身の希望に沿った人生を送ることができます。

***

ポイントは、高額所得者だからこそ今一度「お金の作り方と使い方を見直しすること」と「任意後見契約等を締結」して、事前に将来のご自身の“身の振り方”を考えておくこと。こうした事前準備をして、不安のない楽しい人生を送っていただけたらうれしいです。

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著者

竹内 美土璃 ファイナンシャルプランナー
竹内 美土璃
さくら総合オフィス代表。ファイナンシャルプランナー(CFP)・1級FP技能士・DCアドバイザー。法律事務所内FP事務所で、個人のマネープラン相談から、法人向けに確定拠出年金の導入の提案から継続投資教育などのサポートまで行っている。また、「相続アドバイザー」「夫婦再生カウンセラー」として、相続、夫婦関係のカウンセリングも行っている。モットーは「お客様が上質な人生を送れるよう全力で支援」。

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