退職の翌年に備えよ!税金、国保料……定年後のマネー 3つの落とし穴
「R50」の新常識 余裕の老後は知識で築く! 11

退職の翌年に備えよ!税金、国保料……定年後のマネー 3つの落とし穴

  • 公開日:2020.11.13

Editor's Eye

人生100年時代において、50歳はまだまだ折り返し地点。特に、これからの時代に必要になってくるのは「働きながら年金をもらい、資産を上手に使う」という発想です。単に貯めるだけでなく、リタイア後のお金の準備も始めておきたい「R50」世代に向けて、長年マネー誌、ビジネス誌の編集に携わり、年金関連の取材・執筆を多数手掛けてきたフリーライターの森田聡子(としこ)氏が解説するシリーズ連載。第11回では、定年退職した次の年の税金や社会保険料にフォーカス。定年の翌年は、ただでさえ収入が減っているところに、支出も大幅増となってしまうようで……。

サラリーマンの場合、税金や社会保険料は給与や賞与から天引きされる仕組みです(より正確に言うなら、所得税に関しては“みなし額”を差し引いておいて年末調整を行っています)。こうした事情もあって、サラリーマンにはご自身の納めている税金や社会保険料の額に比較的無頓着な方が多いようです。

そういう方が陥りやすいのが、今回ご紹介する「定年後のマネー 3つの落とし穴」です。要は定年後に発生する税金や社会保険料の支払いの話なのですが、中には現役時代の収入をベースに算出されるものもあって、これがなかなか厄介です。退職前に高い給与を受け取っていた人だと、支払い額が3つ合わせて7ケタに及ぶケースもあるのです。

最初の落とし穴が「住民税」です。退職した先輩から、「会社を辞めると、次の年の住民税が大変だよ」といった愚痴を聞かされたことがないでしょうか? 所得税がその年の所得に対して課税されるのに対し、住民税は前年の所得をベースに計算して、6月頃に税額決定・納付書が届くことになっています。会社を辞めて無収入であっても、前年分の住民税を払わざるを得ないのです。

住民税の金額はお住まいの自治体や家族構成によっても変わりますが、年収1000万円のサラリーマンで60万円程度と言われます。4回に分けて支払うこともできますが、このケースだと1回当たりの金額が15万円に上ります。60歳でリタイアし、年金も受け取っていない人にとっては手痛い出費となりそうです。

さらにこの“住民税攻撃”、1年で終わるとは限りません。年度末の3月に退職したケースでは、退職した年の6月に前年分の、さらに次の年の6月には辞める直前の1~3月分の納付通知書が送られてきます。その度に大事な老後資金をすり減らしていくことになりかねないわけです。

住民税同様、リタイア翌年の家計を圧迫するのが「国民健康保険料」です。

日本は“国民皆保険”の国ですから、退職して会社の健康保険組合を脱退した後も何らかの保険に加入する必要があります。その場合、多くの人が選択するのが国民健康保険(国保)です。

国保の保険料は前年の世帯収入と世帯の中の加入者数を基に計算されるので、上限はあるものの、基本的には前年の収入や加入者数が多いほど保険料負担が重くなる格好です。国保の保険料は特にお住まいの自治体による格差が大きく(一般に、高齢化が進み医療費が高止まりしている地方のほうが高い傾向があります)、前述の年収1000万円のケースだと年間の保険料は80万円程度になります。

もっとも、健康保険は「退職『前』にチェック!リタイア後、意外にもらえる補助金&給付金」の回でお話ししたように、退職後2年間に限り会社の健康保険に「任意継続」の形で加入し続けることができます。現役サラリーマンは保険料を会社と折半していますが、任意継続の場合は全額自己負担となるため、一概に国保とどちらがお得とは言えません。

会社によっては退職前に両方の保険料の比較をしてくれるので、そこで検討する手もあります。

住民税や国民健康保険料ほど家計へのインパクトは強くないにしても、妻が専業主婦のサラリーマンにとって新たな負担となるのが妻の国民年金保険料です。

サラリーマンの配偶者である専業主婦は、国の年金制度で言うところの「第3号被保険者」となり、直接保険料を負担しなくても、65歳以降は自営業者やフリーランスと同じ老齢基礎年金が受給できます。しかし、自身が60歳(国民年金の保険料払い込みが終了する年齢)に達する前に夫がサラリーマンを辞めてしまうと、自分で国民年金に加入して、保険料を負担する必要が出てきます。

ちなみに、2020年度の保険料は月額1万6540円です。この程度なら、毎月コツコツ払っていくことも可能かもしれません。とはいえ、これまでゼロだった妻の年金保険料がいきなり発生するわけですから、負担感は大きいのではないでしょうか。しかも、納付は妻が満60歳になるまで続くのです。

手元不如意だからといって、民間の個人年金保険のように払い済み保険(以降の保険料の支払いを中止し、その時点での解約返戻金を基に金額を減らした年金に変更すること)にするわけにはいかないのが残念なところです。

「住民税」に「国民健康保険料」、そして「専業主婦の妻の国民年金保険料」。サラリーマン時代にはあまり意識していなかったことが、退職後は切実な問題となって我が身に降りかかってきます。

前述した年収1000万円の人だと、総負担額は約200万円にも及びます。第二の人生がスタートした矢先にいきなりこれだけの出費を強いられたら、今後の家計運営にも響きかねません。実際、虎の子の退職金を切り崩して支払いに充てたという人も少なくないようです。

50代のうちにこうした事態を把握しておけば、自営業者のような“納税資金”を用意することで3つの落とし穴のリスクを回避することができます。ご自身の給与明細をよく見れば、おおよそどれくらいの金額が必要か、見当はつくはずです。老後資金とは別枠で、ボーナスなどから少しずつ貯めておくのがいいかと思います。

この記事は役に立ちましたか?
  • よく分かった (9)
  • 難しかった (7)

このページをシェアする

  • Lineにシェア
  • はてなブックマークにシェア

あわせて読みたいRecommend

著者

森田 聡子 金融ライター/編集者
森田 聡子
日経ホーム出版社、日経BP社にて『日経おとなのOFF』編集長、『日経マネー』副編集長、『日経ビジネス』副編集長などを歴任。2019年に独立後は雑誌やウェブサイトなどで、幅広い年代層のマネー初心者に、投資・税金・保険などの話をやさしく、分かりやすく伝えることをモットーに活動している。

関連コラムRelated

参考サイト
もっと情報をキャッチ!