ミリオネアも資産形成に活用! ターゲット・デイト・ファンドの魅力とは
LA在住FPが綴る、金融大国アメリカのリアル 3

ミリオネアも資産形成に活用!「ターゲット・デート・ファンド」とは

  • 公開日:2020.11.19

Editor's Eye

LA在住ファイナンシャルプランナー・岩崎淳子さんが受ける相談は、ほとんどが老後資産形成に絡むものだそうです。そして、その場合のファンド選びとなると、ターゲット・デート・ファンドが1つのシンプルな解決策だと言います。日本の個人投資家の多くはターゲット・デート・ファンドと聞いても「商品ラインナップで見かけるけれど……?」という程度の印象ではないでしょうか。どんなファンドで、アメリカに住む人々に実際にどんな風に活用されているのかを事例とともに教えていただきました。

自由の国アメリカでは選択の自由が不可欠と言える一方で、必ずしもその選択の自由が理想通りに機能していないという現実があるということを前回(アメリカの401(k)や健康保険に見る、「自助努力」の不都合な真実)書きました。良い選択をすることは、アメリカにいる人々にとってもやはり難しい課題なのです。そんな中、良い選択肢を準備し、選択の負担を少なくする仕組みが提供されていれば、大変心強いものです。今日は、ここアメリカでのそんな前向きな動きをお伝えします。

ファイナンシャルプランナーとして仕事をしていると、クライアントの方々のさまざまなニーズに取り組む機会がありますが、どんなケースでもほぼ間違いなく絡んでくるのがリタイアメント資金の準備と運用です。雇用主の提供する401(k)などの確定拠出制度や、個人リタイアメント口座(IRA)と呼ばれる税優遇のある投資口座(日本のNISAに似ています)を利用しての資産運用についてのアドバイスです。

この種のアドバイスは、ここ5年くらいの間に大変シンプルになりました。というのも、最近ではご相談いただくケースの8割以上で、ターゲット・デート・ファンドと呼ばれるファンドの選択が可能となっており、多くの場合この選択がシンプルかつベストであるからです。

よく「初心者にぴったりの資産運用」とか、「〇〇(という金融商品)は上級者向き」とか、あるいは「富裕層向け投資法」などという表現を目にしますが、投資経験や資産の多寡に関わらず、投資の基本は同じではないかと感じています。

投資の基本は、まず第一にリスク分散。特定の業種、特定の国に集中させず、世界の株式市場にリスク分散します。第二に、手数料を極力下げること。市場インデックスをフォローするインデックスファンドであれば、そもそも手数料が低いのが普通です。第三に、許容できるリスクに応じて株式ファンドに債券ファンドを混ぜてリスクを抑えること。第四に、市場が良くても悪くてもただただコンスタントに積み立て続け、市場が良くても悪くてもただただ持ち続けること。これらが投資の基本であり、また多くのケースでは“投資のすべて”と言ってもよいほどだと思います。

この基本の実現を簡単にしてくれるのがターゲット・デート・ファンドです。アメリカには今50種を超えるターゲット・デート・ファンドがありますが、主要プレーヤーのファンドはどれも、米国株式インデックスファンド、米国以外の外国株式インデックスファンド、米国/外国債券インデックスファンドの基本的インデックスファンドを中心に構成されています。これらを自分で組み合わせるのもよいですが、リタイアメントのターゲット年を選ぶだけで、アロケーションがすでに最適に組まれたパッケージの形で投資することができ、その後もリタイア年が近づくにつれて、されるべきリスクの低下調整が自動的にされるターゲット・デート・ファンドは心強いソリューションです。

さらにアメリカではここ10年くらいでターゲット・デート・ファンドも随分と発展してきました。経年のリスク調整の比率とタイミングも洗練され続け、さらには手数料も低下し続けました。良質なインデックスファンドで組んだ低手数料のターゲット・デート・ファンドほど便利なものはないように思います。

私のクライアントでも多くの方が資産運用に活用をしています。背景も資産状況も異なる方々がどのように取り入れたのかご紹介しますね。

スチューデントローンの返済をしながら働いている30代の方がいらっしゃいました。「月々の支出がなかなか下げられず、401(k)になかなか貯められません」とのこと。「若いうちから、たとえ少なくてもいいので続けて貯めることが力を発揮します。月に50ドルでも100ドルでもいいので、コンスタントにターゲット・デート・ファンドに積み立て続けてみてください」と励まします。30代なら、多くのターゲット・デート・ファンドにおいて株式比率は90%レベルで組まれています。これから先10年ほどの40代までは、アグレッシブに全世界分散の株式投資で力強く増やしていき、その後だんだんとリスクを下げながらも、全世界分散をキープしたまま投資をし続けます。ただただ、この同じファンドに積み立て続ければよいという、大変シンプルな解ですが、大変力強い運用です。

一方で、年収100万ドルの50代のお医者様にもターゲット・デート・ファンドをお勧めしたことがあります。大学病院で、401(k)に似た確定拠出制度がいくつか併用できるように用意されていました。そのどれにも良質なターゲット・デート・ファンドが提供されていました。「個別のインデックスファンドを組み合わせて最適なポートフォリオを作ることもできます。その方が、パッケージとして提供されているターゲット・デート・ファンドより若干トータル手数料が低くなりますが、ただリタイアが近づくにつれてのリスク調整が必要です」とご説明すると、「いや、それはきっと忘れてしまうので、自動でやってくれるターゲット・デート・ファンドにします」と選択されました。

またこんな方もいらっしゃいました。大手IT企業にお勤めで、ストックオプションと持ち株制度の自社株だけで数百万ミリオンをお持ちの50代の方です。「自社株が大変好調できっとこれからも伸び続けると期待する一方で、でも、もしも株価が落ちたらリタイアメントはどうなるのだろうとも思う」とおっしゃいました。

どんな素晴らしい企業であっても、予想外あるいは不可抗力の事象で株価が暴落する可能性は排除できません。一社集中は大変な高リスク・高リターンであること、高リターンの裏側には高損失の可能性も隠れていることをご説明し、一定レベルでは自社株をキープしながらも、残りは順次計画的に売却し、少しずつインデックスファンドに乗り換え全世界分散をしていくことになりました。リタイアメントのみならず中期的資金ニーズもあったので、あえてターゲット・デート・ファンドにはしませんでしたが、投資するインデックスファンドは、ターゲット・デート・ファンドの構成要素として用いられている、基本的かつ低手数料のインデックスファンドです。

なお、この方も、自社株制度以外に会社の401(k)プランも参加されており、そちらはターゲット・デート・ファンドでの投資を選択されました。かなり十分なリタイアメント資産がおありなので、一般ケースに比してリスク許容度が高いことから、実際のリタイアメント予定は2030年でしたが敢えて2045年ファンドを選び、株式比率の高い期間を長く確保しました。ターゲット・デート・ファンドは、必ずリタイアメント年を選ばねばならないことはなく、少しリスクを高めにしたいとのであれば年号(=ターゲットイヤー)を上げることでの対応も可能です。

あらためて、こうして考えてみると、投資ファンドというのはたくさんある必要は全くないのだと思います。

自分で組むなら、国内、海外の株式インデックスファンドと、国内、海外の債券インデックスファンドの数ファンドがあれば十分ですし、それをまとめたターゲット・デート・ファンドがあるならそれでOK。たくさんから何でも選べる自由は不必要で、低手数料の基本的インデックスファンドがあればそれで事足りるのです。ファンド会社は新しいファンドを作り、お金をかけて宣伝もしますが、本当に良いものは時を超えてシンプルだと思います。

日本でも低手数料のインデックスファンドはたくさん見かけるようになりました。今度はターゲット・デート・ファンドがどんどん洗練され、低手数料化が進み、広く一般に“選択肢”の1つになるといいですね。

この記事は役に立ちましたか?
  • よく分かった (5)
  • 難しかった (0)

このページをシェアする

  • Lineにシェア
  • はてなブックマークにシェア

あわせて読みたいRecommend

著者

岩崎 淳子 ファイナンシャルプランナー
岩崎 淳子
「Smart & Responsible」代表。 マーケティング戦略やアナリスト業務を経験した後、2000年に夫の転職を機に米バージニア州へ移住。子育てをしながら米国公認会計士、パーソナル・ファイナンシャル・スぺシャリトに合格。日本と全く異なるアメリカのシステムに戸惑った経験をベースに、個人向けファイナンシャルプラニングの情報提供サイトを立ち上げる。大金持ちでないからこそのプラニング・バランスのとれた家計システム・人任せにせず自分で考える姿勢をモットーにプラニングサービスを提供中。聖書をこよなく愛するクリスチャン。現在は米カリフォルニア州在住。著書に『お金が勝手に貯まってしまう 最高の家計』(ダイヤモンド社)。

関連コラムRelated

参考サイト
もっと情報をキャッチ!