「普通の家庭」こそ要注意!相続で兄弟姉妹ともめる人の特徴とは?
「R50」の新常識 余裕の老後は知識で築く! 12

「普通の家庭」こそ要注意!相続で兄弟姉妹ともめる人の特徴とは?

  • 公開日:2020.11.20

Editor's Eye

人生100年時代において、50歳はまだまだ折り返し地点。特に、これからの時代に必要になってくるのは「働きながら年金をもらい、資産を上手に使う」という発想です。単に貯めるだけでなく、リタイア後のお金の準備も始めておきたい「R50」世代に向けて、長年マネー誌、ビジネス誌の編集に携わり、年金関連の取材・執筆を多数手掛けてきたフリーライターの森田聡子(としこ)氏が解説するシリーズ連載。第12回は相続について。「親が元気なのに、死んだときの話をするなんて……」とためらいがちな話題ですが、考え始めるのに早過ぎることはないと森田氏は言います。

2015年施行の改正相続法により、相続税の基礎控除が「5000万円+(1000万円×相続人数))」から「3000万円+(600万円×相続人数)」へと大きく引き下げられたとき、メディアでは「あなたの家も相続税がかかるかも!?」といったトーンの報道が相次ぎました。かくいう筆者も、そうした報道に関わった一人です。

しかし、改正前後のデータを比較すると、亡くなった人の中で相続税の課税対象になった人の割合は、全国平均で4.4%から8.0%に増えたにすぎませんでした。大多数の相続では、依然として相続税を払うに至っていないのです。

「なんだ、それなら心配することないじゃないか」と思うかもしれません。しかし、「相続税対策」と「相続対策」は別物で、むしろ怖いのは後者のほうなのです。

相続税は受け継いだ財産から払って終了となりますが、「争続」は感情的な問題をはらむだけに長期化します。親の相続を機に兄弟姉妹が関係断絶に至るケースも決して珍しくないのです。

こういう話をすると、相続を経験したことのない人は口をそろえて「うちはそんなに財産があるわけじゃないから大丈夫」と言います。

恐らくは、ドラマに登場するような資産家一家の“骨肉の争い”を想像しているのでしょう。しかし現実世界に目を移すと、そうした一族の長ほど、生前から専門家の手を借りて相続対策や相続税対策をしっかり行っているもので、むしろ争続リスクが高いのは「うちは資産家じゃないから」「兄弟姉妹の仲がいいから」と高を括っている人たちのほうなのです。

全国の家庭裁判所に持ち込まれた遺産分割事件を遺産額別に見ると、遺産額が1000万円以下の事件が全体の約33%に上り、5000万円以下の事件が全体の8割弱を占めています(平成30年「司法統計」)。

争続は決して他人事ではなく、いつ、どこの家庭に起きても不思議はないのです。

では、具体的にどんな状況だと争続が発生するリスクが高いのでしょうか? 争続の原因は多々ありますが、まず一つ言えるのが「分割しにくい資産の割合が高い」ことです。

現預金なら相続人の頭数で割って分配することができますが、不動産だとそうはいきません。法定相続分(民法で定められた相続人の相続割合)で分割するとしたら、不動産を相続した人はその分、金融資産の取り分が減ってしまうことになります。不動産の評価額のほうが金融資産よりも高い場合は、金融資産が受け取れないどころか、不足分をほかの相続人に現金で払えということにもなりかねません(専門用語でこれを「代償分割」と言います)。

例えば、都会暮らしの相続人が、長男だからという理由で住む予定もない田舎の実家を相続したとします。以降は実家の固定資産税を払わなければならず定期的なメンテナンスも必要で正直頭が痛いのに、金融資産を独占した弟や妹から「代償金を早く払って」とせっつかれたら、「勝手なことばかり言うな!」と怒鳴りたくもなるのではないでしょうか。
日本の相続は、相続財産に占める不動産の割合が高いのが特徴です。言い換えるなら、争続のタネがあちこちに転がっているわけです。

上記のようなケースに該当しそうな場合は、親が存命のうちに親に相談して、あらかじめ実家を相続する長男を受取人にした生命保険に加入してもらい、その保険金を代償分割や相続税の支払いに充てるといった対策を立てておく必要があります。

現在50代の皆さんの親は“年金逃げ切り世代”ですから、比較的優雅なリタイアライフを送っている方が多いのではないかと推察します。相続税対策として生前贈与を受けた読者もいることでしょう。

生前贈与が相続税対策に有効なのは確かですが、やり方を間違えると、子ども同士の争続の引き金になることがあります。

一番の禁じ手は、子どもの間で大きく差を付けることです。

仮に2人兄弟の長男の息子が成績優秀で有名進学校から医学部へと進んだとします。裕福な親は“自慢の孫”への援助を惜しまないでしょう。次男のほうには子どもがいないとしても、親が甥にばかりお金をつぎ込むことを次男は面白く思わないはずです。

こうした日常的な不満や疑念が表出するのが相続の場です。この兄弟の取り分がイーブンだとしたら、次男が「甥への生前贈与を全く考慮しないのは不公平だ」と主張してくる可能性は大いにあります。

相続人同士であれば、一方への生前贈与は「特別受益(複数の相続人がいるケースで、ある相続人が亡くなった人から生前贈与や遺贈によって受けた利益のこと)」と見なされ、利益を受けた相続人はその分だけ相続できる財産が減らされます。

しかし、上のケースだと長男の息子は親の相続人ではないため、特別受益には当たりません。学費の援助は“もらい得”となるわけで、次男は気持ちのやり場を失います。

このようなケースでは、次男は親が元気なうちに自分の思いを伝え、何かしらの穴埋めをしてもらっておく必要がありました。相続のスタートボタンが押された後では、もう遅いのです。

税理士や信託銀行などの相続のプロに話を伺うと、「仲の良かった家族が親の相続でバラバラになったというケースもあるけれど、普段からコミュニケーションが少ない家族のほうが争続のリスクはずっと高い」そうです。皆が相手の置かれている状況をよく知らずに自分に都合のいい主張ばかりするわけですから、それは険悪にもなるでしょう。

認知症の有病率は70代後半で10%程度と言われています。親がこれくらいの年齢に差し掛かったら、年末年始やお盆など家族で集まった際に、相続についてそれぞれの思いを話し合う時間を持つことをお勧めします。

子どもからは切り出しにくい話題ではありますが、兄弟姉妹が一致団結すればハードルはぐんと下がります。むしろ、親のほうもそうした機会をうかがっている可能性が大です。

相続を経験した方ならお分かりいただけると思いますが、有効な争続対策ができるのは、親の存命中、さらに言うなら親の認知機能が正常な間だけです。気の重い話ではありますが、貴重なチャンスを逃さないよう、早めに手を打っておきましょう。

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著者

森田 聡子 金融ライター/編集者
森田 聡子
日経ホーム出版社、日経BP社にて『日経おとなのOFF』編集長、『日経マネー』副編集長、『日経ビジネス』副編集長などを歴任。2019年に独立後は雑誌やウェブサイトなどで、幅広い年代層のマネー初心者に、投資・税金・保険などの話をやさしく、分かりやすく伝えることをモットーに活動している。

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