40代共働き、繰上返済の盲点!資産運用と保険見直しで老後資金を確保
“お金のかかりつけ医” IFAのアドバイス事例

40代共働き、繰上返済の盲点!資産運用と保険見直しで老後資金を確保

  • 公開日:2020.11.30

Editor's Eye

銀行や証券会社等の金融機関と比べ、長期的な目線でさまざまな資産の相談に応じると言われているIFA(独立系ファイナンシャルアドバイザー)ですが、彼らは相談者に対し実際にどんなアドバイスをしているのでしょうか。印象深かった相談内容をIFAに振り返ってもらうシリーズ連載第11回は、「そろそろ老後資金を準備したい」と大手IFA法人ファイナンシャルスタンダードでアドバイザーを務める上田歩さんの元を訪れた共働き家庭のケース。保険が好きで借金が嫌いという人は少なくないと思いますが、そんな“堅実派”が陥りやすい盲点が浮き彫りになってきました。

今回は、中高生の2人の娘さんを育てるワーキングマザーの萩原久美子さん(49)の例をご紹介します。

相談者:
萩原 久美子さん(仮名、49) 会社員

ご家族:
夫  亮介さん(仮名、49)
長女 香織さん(仮名、16)
次女 沙織さん(仮名、13)

ご家族4人で都内に住む萩原さんは、共働きのメリットを生かして8000万円の自宅を購入し、年160万円のローンを返済中です。暮らしぶりは比較的質素で、貯蓄に励んでは住宅ローンの繰り上げ返済に回していました。

これまでは住宅ローンと教育費に追われるばかりで、資産運用に関しては経験も知識もないということでした。「そろそろ老後資産の形成に着手したいが、何をすればよいのか分からない」と言います。iDeCoやNISAといった有利な制度があると聞いてインターネット検索したところ当社のセミナーにたどり着いたそうで、そこから個人面談を希望されました。

まずは、家計の内訳や貯蓄についてヒアリングしました。年間の収入は夫婦合わせて手取りで1000万円、支出は年間700万円。内訳は生活費250万円、残りの支出はローン返済と私立の中高一貫校に通う2人の娘さんの学費、保険料です。堅実な生活をしているのにもかかわらず貯蓄は500万円と少ないように見えました。

娘さんたちが大学に進学するようになれば本格的に教育費がかかってきますし、老後の準備も視野に入れるとなると、これだけの収入がある家庭ならもう少し現金や金融資産を用意しておくのが理想です。

そこで、100歳までの年間収支と貯蓄額を試算するキャッシュフロー表を作成したところ、なんとリタイアして間もない65歳で貯蓄が底を突くという結果が出ました。2人分の進学費用を払い終えると、あっという間に貯蓄がなくなってしまうのです。

高収入で暮らしぶりも質素なのに、なぜか余裕がない萩原さんの家計。話を聞くうちに、ふたつの原因が分かってきました。

ひとつは貯蓄型の終身保険に入り過ぎていることです。

終身保険と学資保険など、貯蓄型の保険に6本も加入しており、保険料支出は年100万円に達していました。これでは貯蓄ができなくても無理はありません。

保険は本来、万一の事態に備えることが目的ですが、貯蓄や運用の機能を併せ持つ商品も多くあります。例えば終身保険は貯蓄をしながら不測の事態に備えられるので一見お得に見えるのですが、貯蓄としてはコストが高く、備えとしては不十分であるケースがよく見られます。しかも、萩原さんが加入していた保険の中には低解約型といって、満期前に解約すると損失が出てしまう商品もありました。支払い保険料が割安になるメリットがある一方、損失なしに解約できない点が低解約型終身保険のデメリットです。

万が一の保障は保険料の安い掛け捨ての定期保険で備え、貯蓄は預金に置いておくのが最もコストが安く、合理的です。終身保険については、死亡の際に払い込んだ額を上回る保険金を受け取るメリットがありますが、長生きした場合に必要な準備ができていないのでは、本末転倒です。

また、ご夫婦は共働きである上、万一の際は住宅ローンの返済が免除される団体信用生命保険(団信)にも加入しているので、死亡保障をそれほど手厚くする必要はなさそうです。

もう1点、貯蓄が少ない原因として、住宅ローンの繰り上げ返済を急ぎ過ぎていることも判明しました。「借金はなるべく減らした方がいいと思って……」とおっしゃるのですが、荻原さんの場合、低い水準の固定金利で借りられているので、あまり返済を急ぐ必要はありません。

本格的に教育費がかかる時期を控えている上、もし娘さんが留学などを希望した場合は叶えてやりたいというご希望もお持ちでした。それならなおさら、住宅資金を借りられる「権利」を満額行使して、手元の資金もう少し厚くしておく必要があります。

こうしたことをお伝えすると、萩原さんは「あんなに節約してがんばったのに……」とショックを受けた様子でした。まじめな性格で、保険加入で万一に備えたり、繰り上げ返済で借金を減らしたりするのが良いことだと疑わなかったのです。

これまで信じてきたものが逆効果を生んでいた事実を前にして、価値観を変えるまで時間がかかったようですが、しばらく経ったころ「できるだけ保険を解約し、老後まで資金を持たせられる健全な家計をつくりたい」と連絡が来ました。

そこで、払済(保障を減額する代わりに、それ以降の保険料支払いをストップすること)にできる商品と、満期が近く解約の際の損失を比較的小さくできる商品を解約することにしました。600万円あった保険のうち、300万円分を解約し、それを預金に回しました。住宅ローンの繰り上げ返済も当面はしないことに決め、まずは足元のまとまった資金づくりを進めていきました。

当初の目的だった老後の資産づくりに関しては、毎月の収入から積立投資をスタートすることにしました。利益が非課税になるつみたてNISAを、ご夫婦それぞれの名義で上限の40万円まで買付設定し、それとは別に特定口座でもそれぞれが年50万円積み立てることにしました。これらを合わせて、一人当たり月額7万5000円の積立投資を設定したことになります。

積み立てる商品は、シンプルな世界株式インデックス投信と、世界の優良株に投資するアクティブ投信の半分ずつに設定しました。インデックス投信でシンプルに経済成長の波に乗り、アクティブ投信で相場の下落時にも下落幅をなるべく小さくできる優良企業に投資する戦略です。

iDeCoはつみたてNISA以上に有利な制度ではありますが、萩原さんは当面住宅ローン控除を受けられるため、節税の恩恵を受けられません。ならば、60歳まで取り崩しのできないiDeCoではなく、必要な時に現金化できるつみたてNISAに絞る方が有利と判断し、加入は見送りました。

IFAは一般的に高所得層の顧客が多く、一括での金融商品購入を勧められるというイメージをお持ちの方もいるようですが、一律でこうした勧誘を行うわけではありません。萩原さんのように、今ある資産を投資に回すのはベストではないケースもあります。こうした場合はたとえ時間はかかっても、月々の収入の一部を積立投資に回すことで資産形成は可能です。

積立投資は一括投資とは異なり、途中で価格が大幅に下落しても最終的には利益を出せるケースが多く、失敗しにくいのがメリットの一つです。弊社ではこうしたメリットをゲームやクイズを使って紹介しているのですが、萩原さんはこれに大変驚いた様子で、「ぜひ娘たちにも知ってもらいたい」と、次の面談で娘さんたちを同伴されました。その後は娘さんたちの証券口座を開設し、自分名義の積立投資をスタートさせていました。

特に長女の香織さんは投資にとても興味を持たれたようで、その後も当社の投資信託セミナーにお母様と一緒に参加されるなど熱心に知識を得ようとする姿が印象的でした。

荻原さんがこれまで取り組んでこられた「節約」や「保険加入」、「ローンの繰り上げ返済」などは、それ自体は無駄な出費を抑え、万一の事態に備えるために有効なアプローチです。しかし、若いうちから資産運用の有用性を知っていれば、無理なく、効率的に資産形成ができた可能性もあります。積立投資は長く続けるほど有利なので、わずかな金額であっても10代からこうした習慣付けができれば、より豊かな人生を歩むことができるでしょう。IFAは転勤や異動がないので、このようにご家族で活用いただけるメリットもご評価をいただいています。長期目線で、商品ありきではないご提案で、今後もより多くのお客さまのお金の不安を解消するお手伝いをしていきたいと思います。

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著者

上田 歩 ファイナンシャルスタンダード ファイナンシャルアドバイザー
上田 歩
2002年、大和証券に入社。以来、法人・個人への資産運用コンサルティングを行う。証券のみならず資産に関して総合的なコンサルティングを行いたいと考え、2017年にファイナンシャルスタンダードへ入社。転職当初の目的であるお客さま資産の総合的なコンサルティング業務を行う環境に身を置き、満足度の高い毎日を過ごしている。

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