コロナ禍で進行する地価下落。オフィス需要の低下は特に深刻な状況に
金融ジャーナリスト・鈴木雅光が読み解くニュースの本質 6

コロナ禍で進行する地価下落。オフィス需要の低下は特に深刻な状況に

  • 公開日:2020.12.01

Editor's Eye

足元では「第3波」も懸念されている新型コロナウイルスの感染拡大の余波が、いよいよ地価にも及びつつあります。すでにJ-REIT価格にも兆候が表れているだけに、今後の投資戦略にも大きな影響を与えることになるのは間違いないでしょう。そこで、金融ジャーナリストの鈴木雅光氏が、直近の地価の推移を細かく検証しながら、その背景にあるものを読み解きます。

新型コロナウイルス(covid-19)の感染拡大による影響が、地価にも及んできました。

国土交通省が調査・公表している「地価LOOKレポート」は、全国100地区の高度利用地区における地価を不動産鑑定士が評価し、それを国土交通省が取りまとめたもので、毎年1月1日、4月1日、7月1日、10月1日の計4回、調査が行われています。対象となる地区は東京圏43地区、大阪圏25地区、名古屋圏9地区、地方中心都市等23地区の合計100地区における定点調査です。

11月19日に公表された同レポートは、10月1日時点の地価動向で、これを前回調査である7月1日時点の地価と比べたところ、100地区のうち45地区で地価が下落したことが判明しました。

ちなみに「高度利用地区」とは、低層の建物がたくさんあり、土地が細分化されている人口密集地帯において土地をひとまとめにして再開発を行い、高層ビルなどを建てられるようにする土地のことです。つまり再開発される可能性が高い地区ということになりますが、その地価動向は他の地価に先行した動きになりやすいため、今後の地価動向を把握するうえで参考になります。

2019年1月1日~4月1日以降、前回調査に対して地価が上昇した地区、横ばいの地区、下落した地区の数は下のグラフに示した通りです。2020年1月1日~4月1日の調査で、それまで97あった上昇の地区数が73に減り、横ばいの地区数が23に急増。さらに下落した地区数が0から4に増え、それまでの地価上昇ペースが明らかに頭打ちしたことが見て取れます。

この時期、まだ日本で緊急事態宣言は発令されていませんでしたが、訪日外国人客数の推移などを見ると、2月あたりから減少が目立つようになってきました。1~3月の訪日外国人客数は、

1月……266万1022人(▲1.1%)
2月……108万5147人(▲58.3%)
3月……19万3658人(▲93.0%)

となっています。この数字からも、緊急事態宣言が発令される前から、インバウンドをはじめとして人の動きが極端なまでに鈍り、それが景気にマイナスの影響を及ぼしたことが推測できます。当然、景気のスローダウンは地価にも影響を及ぼします。

訪日外国人がこれだけ大幅に減れば、特に観光地などでは宿泊施設や飲食店、商業施設を中心に大打撃を被ります。なかには経営を続けることができず、店じまいせざるを得ない状況に追い込まれた人も相当数いるはずです。帝国データバンクによると、11月20日現在の新型コロナウイルス関連倒産(法的整理または事業停止、負債1000万円未満・個人事業者含む)は、全国で723件確認されているということです。

これを発生月別に見ると、2月=1件、3月=15件、4月=73件、5月=70件、6月=114件、7月=107件、8月=95件、9月=111件、10月=106件となっています。

さらに業種別に見ると、飲食店=110件、ホテル・旅館=66件、アパレル小売店=48件、建設・工事業=48件、食品卸=37件、アパレル卸=26件、食品小売=24件、食品製造=23件、アパレル製造=19件となりました。飲食店とホテル・旅館が1、2位になったのは、新型コロナウイルスの感染拡大によって、インバウンド需要が大幅に落ち込むのと同時に、営業自粛ムードが強まったからです。

実際、100ある高度利用地区のうち住宅系の地区は32で、これらの地価動向を前回調査と比べると、上昇は0地区だったものの、横ばいが26地区で前回調査比1地区減、下落が6地区で前回調査比1地区増でした。

ところが商業系地区の数字を見ると、68地区のうち上昇したのは1地区のみで前回調査と変わらず。横ばいが28地区で前回調査よりも6地区減、下落が39地区で6地区増となっています。住宅系地区と商業系地区を比べると、やはり住宅系地区のほうが底堅いと思われます。

また、商業施設の中でも今後、その動向が懸念されるのは、やはりオフィス需要でしょう。都心では2027年前後にかけてさまざまな再開発が進められていますが、コロナの影響でリモートワークを採用する企業が増えており、都心のオフィス需要が現状ではかなり大きく後退しています。

これはJ-REITの価格動向にもはっきり表れています。

掲載したグラフは、コロナショック前からの主だったJ-REITの価格動向です。各ファンドの値動きを比較しやすいように、2020年2月3日時点の価格を100として指数化してみました。ここで取り上げたファンドは、特定の投資用途に集中投資するタイプの中で時価総額が最も大きいものです。具体的には、以下のようになっています。

オフィスビル特化型……日本ビルファンド投資法人
物流特化型……日本プロロジスリート
投資法人レジデンス特化型……アドバンスレジデンス投資法人
商業施設型……日本リテールファンド投資法人
ホテル特化型……ジャパンホテルリート投資法人

3月19日のコロナショックでは、大幅な需要後退を懸念してホテル特化型のジャパンホテルリート投資法人が大きく値を下げましたが、11月20日時点では、オフィスビル特化型の「日本ビルファンド投資法人」が最も下げているのが分かります。

J-REITの価格は実際の不動産価格に先行すると言われているだけに、オフィスビル需要の後退懸念は根強く、今後も不動産価格にネガティブな影響を及ぼすと考えられます。

この記事は役に立ちましたか?
  • よく分かった (6)
  • 難しかった (0)

このページをシェアする

  • Lineにシェア
  • はてなブックマークにシェア

あわせて読みたいRecommend

著者

鈴木 雅光 金融ジャーナリスト
鈴木 雅光
有限会社JOYnt代表。1989年、岡三証券に入社後、公社債新聞社の記者に転じ、投資信託業界を中心に取材。1992年に金融データシステムに入社。投資信託のデータベースを駆使し、マネー雑誌などで執筆活動を展開。2004年に独立。出版プロデュースを中心に、映像コンテンツや音声コンテンツの制作に関わる。

関連コラムRelated

参考サイト
もっと情報をキャッチ!

あなたに最適なIFA(資産アドバイザー)を見つけるならFinasee(フィナシー)× 資産運用の無料相談窓口

あなたに最適なIFA(資産アドバイザー)を見つけるならFinasee(フィナシー)× 資産運用の無料相談窓口